第106話 インチキ予報士、再登場!
「なるほど。そういうことですな」
今、僕達予報屋チームはエミリーさんと一緒に情報屋に来ている。
エミリーさんが遺産相続の金貨5000枚の投資先の情報を得るために。
「当店では、情報を買ってもらう形になっていましてな」
見た目は情報屋というより、執事ぽいおじさんだ。
真面目なロマンスグレーというところか。
「ただし、今回のような投資の情報の場合は、情報を持つエージェントを指名する形になりまして」
投資情報というのは、ただ情報を伝えておしまい、ではないらしい。
投資を受ける側と、投資をする側のセッティングまで行うのが業務。
そのため、情報をもっているエージェントを指名して、そのエージェントと共に投資を実現するところまで手伝う。
「それで。投資情報にどれだけの費用を見込んでいますか?」
「金貨で200枚よ」
エミリーは言う。
金貨5000枚の投資で金貨200枚。
それが多いのか少ないのか、投資なんて無関係の僕にはわからない。
「ほう。なかなか肝が据わったお嬢様ですね」
「そのくらいかなと思ってね」
「それならば、最高級の投資エージェントを3人紹介しましょう」
「その中で選べばいいのね」
ドアが開いて、3人の男が入ってくる。
40代のエージェントが2人。
20代のエージェントが1人。
「かわいいお嬢さんの依頼だと聞いてやる気出してきました」
20代のエージェントは、いきなり軽いことを言う。
そいつの顔には見覚えがあるぞ。
「なんであんたがここにいるのよ」
20代のエージェントは予報試合をしたときのイケメン予報士だ。
インチキ予報屋でトップ予報士だったから、クレアさんとも顔見知りだ。
「おや、予報屋の皆さん。今日はなんでここにいるのかな」
「予報の依頼よ」
クレアさんとしては元同僚で、インチキ予報をしていたこいつが気に入らないんだろう。
「これはこれは。顔見知りでしたか。このエージェントはまだ経験は少ないですが、情報の質は良好ですよ」
「そうかもしれないけど、性格は最低よ」
「そんなこと言わないでよ、クレアちゃん。昔の同僚じゃない」
「だから、むかついているのよ」
インチキ予報士をしていた過去は、きっとクレアさんにとって黒歴史なのだろう。
その部分をえぐってくるこの男に我慢ならないらしい。
「どうせ、こいつは、投資に関わらせるとろくなことにならないわ。私の予感が間違いないと言っているわ」
「そんなぁ~」
まぁ、僕も同感だけど。
最終的に決定するのはエミリーさんだ。
僕らは予報屋。
だから、予報を出すだけだ。
「エミリーさん。この3人の中で一番、投資エージェントとして役に立つ人を選べばいいんですよね」
「ええ。ただ、どんな投資をしたいのか、まず、それを聞いて欲しいわ」
「もちろんです」
それから、エージェント3人に投資の方針をエミリーさんが語った。
「だから、おじいさんの遺志を継いで、街のためになる投資をしたいの」
「これはきゃわゆいなーと思っていたお嬢さんだけど、しっかりとした考えをもっているんだねぇー。ボク感心してしまいました」
「私も感服しました。できれば私を指名していただいて、お手伝いができればと」
あいつと、もうひとりのエージェントは自分を売り込みにきたな。
もうひとつは無言だ。
きっと無口な男なのだろう。
情報エージェントは言葉ではなく実績で語るというタイプなのか。
この男が僕的には一押しだ。
「それでは、エミリーさん。ジュートの予報を聞いてみますね」
「はい。よろしくね」
「ジュート。予報して。エミリーさんの投資エージェントとして。一番適任なのは誰?」
《キン・コン・カン・コーン♪》
「ジェイミーが最適でしょう」
「おーーーっ、やった!」
あいつが喜んだ。ジェイミーって名前だったのか?
しかし、なんで、あいつなんだ?
自分で予報しておきながら、納得ができない僕だった。




