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第105話 お金持ちのおかっぱ娘

「ふぅ、間に合った」

「ぎりぎりね」


ミリーちゃんが予報屋のお店で迎えてくれる。


「今日の最初のお客さんはどんな人?」

「それが今日はひとりなの」


あれ。

お客さん、そんなに少ないの?

珍しいな。


「一人の方が今日の分の予報買い占めしちゃったの」

「ええー」


買い占め。

どうも、金貨5枚出すと、開店から閉店まで買い占めができる。

だけど、いままで利用した人はいなかった。


「どんなお客さんなんです?」

「それが私と一緒で15歳の女性なの」


えっ、少女!?って言いそうになったけど、やめた。

15歳から大人なのって、よくミリーちゃんが言っているから。


特に金貨5枚出したお客さんだから、大人の女扱いしないとまずいかも。


そのお客さんは、予報屋の奥の席にちょこんと座っていた。

クレアさんが話を聞いている。


「こんにちは。予報屋のジュートです」

「はじめまして、ジュートさん。私はエミリーよ」

「それで、金貨5枚も使って、どんな相談でしょう?」

「金貨5000枚の使い方、教えて欲しいの」

「なんだって!?」


金貨5000枚って何?


レンガ屋だと、一生かかっても稼げない金額だ。

なんで15歳のエミリーがそんな大金もっているのか。


「大商人をしていたおじいちゃんの遺産なの」

「あー、そうなんですか。もしかしてご両親はいないとか」

「うちの親はぴんぴんしているわ」

「じゃあ、どうして?」


普通の遺産は自分の子供に相続される。

子供が亡くなっていて、孫が相続することは時々ある。


だけど、子供が生きていて、孫に相続させるって特殊なケースだ。


「うちの親は商才ないっておじいさんがずっと言ってたの」


まぁ、2代目って商才ない人多いイメージがあるな。

成功した親の財産を食いつぶしてしまう。

せっかく大きくした商会を倒産させてしまう。


「だから、パパじゃなくて私に遺産を残したの」


それはまた大胆な。


「でも、私、そんな大金どうやって使っていいのかわからないの」

「ほう」

「だから、今、話題の予報屋さんに相談してみようって」

「うーん、しかし、そういう予報は……」


僕が悩んでいると、クレアさんが助け船を出してくれた。


「もしかして、寄付をしたいってこと?」

「そうじゃなくて、この街のためになることに投資したいの」


投資か。

それも金貨5000枚。


「あの。投資なら、情報を集めないと、と思うの」

「情報?」

「そう、情報。良い情報を持っていないと投資先を選べない気がする」


えっ、ミリーちゃん。

ずいぶんと、投資に詳しそうだね。


「情報かぁ。どうやって得たらいいのかしら」

「わたし、いいとこ知ってる」


ミリーちゃんとエミリーちゃん。


ふたりとも15歳の女性で、名前も似ている。

なんか、気が合いそうだ。


「それはどこ?」

「街の情報屋さんなの」


おいおい、ちょっと待てよ。

あのインチキ情報屋じゃないのか。


「ちょっと、それは…」

「大公さんの執事さんが言ってたの。お金をちゃんと出す人にはしっかりとした情報を用意してくれるって」

「だけど、もしかしたら騙そうとするかもしれないし」

「だから、私達がいるの。予報なら投資の結果をチェックができるじゃない」


それはそうか。

どんな投資先があるのかは僕達じゃ知らない。

知っている範囲で予報で選ぶより、情報屋を活用して予報した方が可能性が上がる。


「それはいいかも。まずは情報屋で投資情報をもらいましょう」

「そうしましょう。じゃ、これから情報屋、いく?」

「うん。早い方がいいわ。皆さん、一緒に来てくれます?」


 ☆   ☆   ☆


「おい。どういうことだ!」


予報屋を出た瞬間に、おっさんに絡まれた。

もっとも、大して強そうじゃない。


こっちは、僕と女性、あと少女ふたり、おっと少女ではなく15歳の少女か。


「お父さん!」

「お父さんじゃないだろう。そんな訳のわからないやつらとつるんでないで帰るぞ」

「いやよ!」


あ、この人が遺産を残したおじいさんの息子のダメ親父だな。


「おまえはまだ世間を知らない、お前みたいに若い女が大金をもっていると、騙そうと寄ってくるやつらがたくさんいるんだ」


そういうあんたが、そうじゃないのかい。


「お父さん、失礼よ。この方達は有名な予報屋さん達よ」

「予報屋か予想屋か知らんが、だいたいそういう連中は、勝手なこと言ってたまたまうまくいくとたかる連中だ。一番関わっちゃダメな連中だぞ」


頭くるな、こいつ。


「お父さん。わたし決めたの。おじいちゃんのお金は街のためになる事業に投資するって」

「一番なのはお父さんの商会に投資することだっていっているじゃないか」

「もう、お父さんのとこは、ずっと赤字でしょ。おじいちゃんが絶対、金は出さんって言ってたわ」


うーん、相続問題なのか。

じぃちゃんが死んだら自分のものだと思っていたんだろうなぁ。


「いいから来なさい」

「いやっ」

「やめてください」


依頼主を守るのは僕の役割でもあるしな。


「お前には関係ないだろ」

「あります。今日1日を金貨5枚で依頼を受けているので、僕のクライアントです」

「なっ、金貨5枚! やっぱり騙されているぞ、お前」

「わたしがお願いしたのよ。口を出さないで」


そんなことですったもんだしていたら、衛兵さんがやってきた。

衛兵さんは顔みしりなので、事情を説明するとおっさんを連れて行ってくれた。


めんどうな親を持つと苦労するな。


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