表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第七話




「──嘘ですよ」




 彼女は突然俺にそう告げる。


「嘘ですよ。全部嘘なんです。私はただ……祐太くん、あなたと一緒にいたかった。ただ、それだけの理由でここにやって来たんです」



 先ほど、ボソッと呟いた俺の名前。寝言だったのか、何なのかは分からない。

 しかし、"祐太さん"ではなく、"祐太くん"と、彼女が何故そのように俺のことを呼んだのか。



 それは、彼女が昔の俺のことを知っているからだ。


「タイムリミットが2週間なんてこと……嘘です。2週間で、私の正体が分からなくたって……祐太くんは死んだりなんかしません」


「……どういうこと?」


 彼女の声が震えているので、なるべく優しくそう尋ねた。彼女は、俺の目を見ようとはしない。近づこうと、足を一歩踏み出した瞬間、彼女は焦って話を始めた。


「たっ、ただっ……消え去る前に、もう一度だけ祐太くんに会いたかったんですっ……!最後に一目でいいから、あなたの姿が見たかった。それだけで満足する筈だったんだけど」


「俺がミユの姿が見えてしまったから、それだけで終われなくなった」


「……そう」


 ミユは更に俯いてしまう。


「祐太くんの記憶に少しでも私が残るように、少しでも長く一緒にいられるように……あんな嘘をついてしまったの……。ごめんなさい」



「別に謝って欲しいと思っていないよ。


 ……でも、今までの話を聞いて分かった。"ミユ"っていう名前にも、ずっと引っ掛かってたんだよ。あと、祐太くんって呼ぶのにも何か理由があると思ってた。ミユ、お前は……







──人形なんだよな?」




 俺のその言葉に、ミユはようやく顔を上げた。驚いているような、でもそう言われることを分かっていたような、何とも言えない表情。


「……そうだよ。私は人形。祐太くんの部屋で、ずっと大切にされ続けてきた……ううん。あなたがおばあちゃんの形見として、どうしても手放せなかった人形なの」



 先ほどまで見ていた夢を思い出す。

 俺は誰もいない部屋で誰かに話しかけていた。でも、俺の目の前には存在していた。ミユという名前の可愛らしい女の子の人形が。


 ボロボロになったランドセルも、机の上に積み上げられた教科書も、俺がいじめにあっていた証拠だ。

 小学校高学年になってまで、そんな可愛らしい女の子の人形を大切にしていたから、馬鹿にされ、気持ち悪がられた。


 祖母の形見なのに。

 大切な物なのに……。




「祐太くんは、いつも私に対して色んな相談をしてくれた。そして、話が終わると『ミユは僕のお話を聞く名人だね』って言って毎回笑ってた」


 そういえば、ミユが前に言ってた。

 私は、人の話を聞くのが上手だって。それを、俺に認められているって。そういうことだったのか。









「そして、中学生になった時……私は祐太くんの部屋からいなくなった──」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ