告白
「ずっと君が好きでした」
ノエルの瞳が困ったように揺れた。
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
そんなためにこんな言葉を言ったわけじゃない。
「……ごめん。私……あなたとは関わりたくないの」
心臓がナイフで貫かれたように痛かった。
痛くてたまらなかった。
「そっか」
本当はもっと言いたい言葉があった。
けれどもショックのあまり何の言葉を出てこなかった。
「さよなら」
そんな一言でも声が震えないように努力するので精一杯だった。
「……」
そんな僕の最後の挨拶にもノエルは何の言葉も言わなかった。
もっと君にふさわしくなるように努力するから、僕を選んでよ。
もっと話したいことがたくさんあった。
もっと君の笑顔がみたかった。
その鈴の音のような笑い声を聞きたかった。
だけど……。
これでおしまいだな。
頭で描いていたストーリーは、温かくて、綺麗な色で色づいていた。
けれども手に入れたのは灰色の結末。
こんな風に終わりにさせたかったわけじゃない。
恋に恋していた気だってする。飾りに恋をしていた気もする。
だけど……僕が君を好きだったということは本当でそれを否定することなんてもうできない。
自分に言い訳をしてしまえば楽なのに、それが自分の思いを否定することにつながることが嫌なんだ。
薄青の瞳と目があった。
一瞬が永遠になる。
何だかそんな気がした。
すぐに僕は背を向けて歩き出した。
彼女の姿が見えなくなったとき、押し込めた感情が洪水みたいにあふれ出てくる気がした。
頬を涙が流れていく。
涙はとても熱かった。
唇にたどり着いた涙はしょっぱかった。
顔が歪んでいく。
頭の中でリピートされる数々の思い出。
君はとても綺麗だ。
ピーター・ノルマンティーの告白を受けたノエルは途方にくれていた。
私……あなたの愛したノエルじゃない。
全然別人なのよ。
そんな私にあなたに向かって言う言葉なんて何もない。
受け止める資格なんてない。
行かないで、死なないで。
そんな風に延ばしかけた手は夜の空気を切り裂くだけ。
これが彼との最後の別れになった。
ピーター・ノルマンティーは戦争へと行ってしまった。
3か月後、彼が戦死したと知った。