表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

#初夏のラジオリズム 3

4㍉ラジオ


#初夏のラジオリズム 3



「えーと、まずー、野菜切って!」

「「はーい!」」

この4人で料理ができるのは織夏だけだ。

織夏は普段は寮生活なのだけれど、時々私たち3人の家に泊まりにくることがある。

その時は織夏が「泊めてもらうのに何もしないのはわるいからー」と家事をしてくれる。

特に料理の腕はすごく、お母さんも外食に行くなら織夏に作ってもらおうと言ったほどだ。


それに対して、私たち3人は経験値がほぼ皆無。

私はまぁ、流弥がせわしなく手を動かしているのを横から眺めてたくらいで、私自身できる気がしなかった。

けど、海里も料理初めてっていうのは初耳だったので、ここで一丁私の上達の早さを持って、度肝抜かしてやろうと思い、立ち上がった訳だ。

「おい流衣。お前から選べよ」「ありがとっ。んじゃ・・・ニンジンっ!!」

「じゃあ俺はネギ」

「僕は玉ねぎだね」


それぞれが野菜をとり、まな板に置く。

「3人とも、気をつけてね。しっかり左手は丸めるんだよ?」

鉄板の準備をしていた織夏が心配そうな顔で注意を呼びかける。

「分かってるって!」

「私に任せといてっ!」

「よし。やろうっ!」


トントントントン

「んー。」

トントントントン

「むぅー・・・。」

トントントントン

「・・・・・。」

トントントントン

「ってなんでよっ!!」

「えっ!?」

「ん?何だよ。」

海里と守也のまな板には綺麗に切られた野菜がある。

対して、私は包丁を手に固まっていた。

「お前ら絶対経験者だろっ!」

私は赤面し涙目で抗議した。

守也と海里の手捌きは初心者では考えもつかないほどの早さで次々と野菜を切っていく。

「いや、、初だけど、、、」

「僕も。」

「うそだっ!!」

ポロリと涙がこぼれてしまう。

すると、鉄板の準備をしていた織夏が戻ってきた。

「あれ?おねーちゃん泣いてる。」

「うぅ。」

「もぅ!二人とも泣かせちゃダメでしょ!」

「悪い、、」

「ごめんねおねーちゃん、、」

「・・ごめん、ね。二人は・・・悪ぐ、ない。から・・。私が、、不器用だから。」

すっと、私の背中が暖かいものに包まれる。背後から織夏が抱きついてきていた。

「おねーちゃん。私と一緒にやろ?」

「・・・・うん。。ありがと織夏。」

織夏は優しく微笑みながら私の涙を拭ってくれた。

「ぐへへ、、可愛いよ流衣ちゃん。食べちゃいたいよ。」

ハムっと耳を織夏の柔らかい唇に挟まれた。暖かい吐息が耳に伝わる。

「ひゃんっっ!!!??」

「あはははっっ!!冗談冗談!可愛いのは本当だけど!」

「むぅ・・・。」

織夏の変態性はたまに現れる。

本当に突然なのですごく困る。

「さ。やろっか」

「・・・うん。」

織夏は私のとなりでもう一本の包丁を手にレクチャーしてくれた。

「まず、包丁は切るとき必ず垂直だよ。それでその時まっすぐ包丁を見下ろす。」

「わかった。」

私は織夏を真似してみる。

「うんうん。オッケーだよ!」

「おお!なんかぽい!!」

「じゃあ次!切る時は押すんじゃなくて切るって感覚。」

「んー?」

「そのままニンジンに包丁を下ろすんじゃなくて、包丁をスライドさせながら下ろすんだよ」

私は織夏の手の動きを見ながらニンジンに包丁をおろしてみた。


ストンっ


この手に伝わる感覚、小気味のいい軽快な音。

「っっっ!!!」

「ねっ?できたでしょ?」

「うんっ!!」

「おめでとう流衣」

「良かったねおねーちゃん!」

「うん!!」

次々と私はニンジンを切った。

トンっ・・・トンっ・・・トン・・・トンっ

一つ一つ。慎重に。

守也や海里のようにはできないけれど、一歩一歩、遅くてぎこちない動きで、でも確実に前に進んでるのを感じていた。

「・・・・はふぅ。」

ニンジンを一本切り終えた私は達成感に涙が溢れていた。

「また泣いてるよおねーちゃんっ!!」

「まったく、大げさなんだよ」

そういって守也と海里は私の涙を拭ってくれた。

「ありがと・・・。」

「よくできましたおねーちゃん!

でもまだ泣くのは早いよっ?次いこーっ!!」

「わかった!!私に任せてっ!」



☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡



「出来上がりーっ!!!」

「おおーーーーっ!!」

約一時間半かけて完成した私たちの料理。

目の前の鉄板には屋台によくありそうな、でも屋台には負けないほどの愛情が入った焼きそばができた。

「みんな本当に初めてとは思えないくらいの腕だったよっ!!」

「流衣もやればできるじゃんか。」

「最後の方は新婚の奥さんに見えたよ。」

「や、やめろよっ!」

私は顔が赤くなる。

海里ったら・・・お、奥さん、なんて。

「さぁさ!冷めないうちにたべよっ!」

「「いただきまーーーすっ!」」


「ん?なに?」

みんながこっちを見ていた。

「最初は流衣が食べなよ」

「・・・・うんっ」


鉄板にそのまま箸を伸ばし、すくい上げる。

私が作った初めての料理。

「私が切ったニンジン・・」

食べてみる。

「・・・美味しい・・・。」

単純に感じた感想だった。

いつも食べてる筈なのに。

「おねーちゃん、また泣いてる」

「わ、悪いかよっ!」

「可愛いからオッケー!」

「さぁ、俺らも食べようぜ」

「美味い!!」

「流衣やるじゃんっ!」

「わ、私は大したことしていないっ!」

焦って織夏の方を見る。

「みんなの愛情たっぷりで私はとても幸せだよっ」

そういって織夏はニカッと笑った。


4人で食べるのにはちょうどいい量だった。

大食いな織夏は少し満足していなかったようだけど・・・。


「さ!片付けまでが料理だよっ!」

「はーい!」

4人はそれぞれ食器を持ち台所へ。

皿洗いは私と海里が、食器を片付けるのが織夏と守也が担当することにした。


「私、、料理・・・してみるよ。」

「いいじゃん!」

「それで・・・。部活から帰ってきた流弥に、たべさせてあげたい。」

「絶対喜ぶよ!」

「喜ぶの限度超えて失神するかもね」

「じゃあ、私がお料理教えてあげるよ!」

「ありがとう織夏。」

私は決意した。

待ってなさい流弥!私がすぐにお料理が上手になって、いっぱい日頃の感謝してやるんだから!!


ガシャンっ!


「「あ」」

足元には割れたお皿が。

「わっ!わああああっ!!」

「流衣!動かないでっ!」

「落ち着けっ!」

何が何だかわからなくなりその場を飛びのいてしまった。


突然、足に刺痛が。

「・・・・いっっっっっっっったーーーーーーーーいいっっ!!!」

流弥、おねーちゃんの料理を振舞ってあげられるのは、結構未来になりそうです。



#初夏のラジオリズム 3 終




*あとがき*


レッツクッキングです。

僕はあまり料理できないので織夏欲しいです。でもゴロゴロしてる姿を見て癒されたいので流衣も欲しいです。

こんな感じで楽しく書かせていただいております。


*キャラクター紹介

椎名流衣(しいな るい)



挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ