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第二十八話「他の患者の迷惑となりますので、病室では静かにしましょう」

 翌日。

 ジャケット強奪犯の正体はすぐに判明した。


「あの例の男……ミヤコ島でスキウラーを操っていた者が首謀者だと?」


 昨日作られたまま片付けられること無く存在していた会議室の中、ジンジャーはミヤコ島にてスキウラーから引きずり下ろされたその男の顔を脳裏に思い出しながらそう言った。対してそのジンジャーの言葉を聞いたイナが小さく頷き、周囲を見回しながら言った。


「はい。独房代わりにしていた部屋の鍵をこじ開けて、そのまま格納庫まで進み、ジャケットを奪って逃走した模様です」

「鍵をこじ開けてって、何をどうしたのよ?」

「扉が少し全体的にへこんでいましたので、肩から体当たりをして強引に外に出たものと思われます」

「少しセキュリティが甘いんじゃないか?」


 エムジーの質問にイナが答え、ジンジャーが顔をしかめて返す。この時ジンジャーと一緒にこの部屋にいた面々――エムジーとイナとクチメも揃って苦い表情を浮かべ、それに対してハナダは面目なさそうに頭を掻いた。


「言い訳するつもりはないが、こちらとしても捕虜を収容すると言うのは初めての事だったんだ。まともにロックのかかった部屋など満足に無いし、何もかもが手探りだった」

「確かに、ここはあくまでも隊員達の寄宿舎としての意味合いが強いですからね」

「……過ぎたことをいくら責めても意味が無い……」


 クチメの言葉に全員が頷く。今更その話を蒸し返した所で、強奪犯が帰ってくる訳では無いからだ。それに、今すべき話は別にある。


「それで、奴は今どこに向かっているんだ」


 ジンジャーの問いに対し、イナよりも早く彼らの後ろにいた隊員の一人が口を開いた。


「強奪された機体はオキナワ本島を抜け出した後に南下。この航路から予測すると……」


 キーボードの上で指を走らせ、モニターを注視しながら隊員が言った。


「オーストラリア。メルボルンに到達するものと思われます」


 彼らを取り巻く周囲の空気が一気に張り詰める。エムジーが息をのみ、咄嗟にジンジャーを見やる。


「オーストラリアって、確か……」

「ああ」


 エムジーの言わんとした事を理解し、ジンジャーが頷く。そしてジンジャーはイナの方を向き、苦々しい表情を浮かべて言った。


「また面倒な事になったな」

「ええ。まったくです」


 オーストラリア。リリーと共にカサブランカが向かおうとしていた場所。

 うんざりした様に肩を落とし、同時に大きく息を吐いてイナが言った。


「いい加減、青空の会とは縁を切りたい物なのですが」

「しかし、なぜオーストラリアなんだ? こちらの動きを先読みしていたのか。それとも、何か別の理由があるのか……」

「そこら辺はまだ詳しいことは判らないけど、このままだと、私達とそいつがオーストラリアのどこかで鉢合わせになる可能性は大ね」

「くそったれめ」


 ハナダの疑問にエムジーが疲れたように返し、それを聞いたジンジャーが怒りに満ちた口調でそう吐き捨てる。


「……私達、運命の赤い糸で結ばれているのよ……」


 そしてクチメが静かにはなった冗談を笑う者は一人もいなかった。





 弾き出された答えを前にして、ジンジャー達が作戦室で項垂れていたちょうどその頃、ライチとレモン、そしてスバシリは、救護室にてベッドの上に身を起こしていたリリーの見舞いに来ていた。

 ちなみに件のジャケット強奪の際に格納庫内――事件現場に最も近い位置にいたレモンは、ボディの表面装甲がちょっと焦げ付いた程度の被害で済んでいた。デミノイドの頑丈さに救われた形である。


「いやあ、まさか機体がガス欠起こすとはなあ! 俺もこんな結果に終わるなんざ予想してなかったぜ!」


 そして、リリーもリリーで頑丈だった。

 いつものレザースーツではなく水色の病人服を身に纏ったリリーが、腰から下に毛布をかけつつ、いつもと変わらない調子でゲラゲラ笑いながら言った。その額と両腕にはミイラよろしく包帯がグルグル巻きにされていたが、彼女は痛がる素振りを少しも見せなかった。


「俺としても、コクピットの中で警報が鳴った時はさすがにビビったぜ。あのときは何が何だかまるで判らなかったんだが、あれって燃料切れを知らせる警報だったんだな! 知らなかったぜ!」

「……まったくさあ……」


 だが、その一見して大事ないように思えるリリーの姿を見て、その横に座っていたライチ達は揃って顔をしかめていた。


「まったく、満足に補給も済ませて無い機体で飛び出すからこういうことになるんだよ。わかってる?」

「ああはいはい、わかってるよ。骨が折れただけで大げさなんだよ、そんなに怒んなって」


 右大腿骨および左上腕骨の骨折。これがリリーを現在の状況に置いている理由だった。今は完治しているが、ここに運び込まれた時は右肩と左股関節が脱臼し、内臓器官もいくつか損傷していた。

 原因は全身打撲。リリーの乗るジャケット『ハピネス』が空中でエネルギー切れを起こし、そのまま海面に激突した際に起きた事である。


「ちゃんと残量くらい確認しようよ……」

「いや、オキナワに来る前はちゃんと補給して来たんだぜ? 電池もちゃんといっぱいにして来たんだぜ? だから動かしても大丈夫かなーって思ったんだ」


「でも墜落しちゃったよね! それは厳然たる事実だよね!」

「うっ……いや、それは……」

「そういえば、最初に見た時も波打ち際に倒れてたよね。ジャケット持ってたのに、どうしてあんな事になってたんだろう……?」

「ああ、それは、だな。その」


 スバシリとライチの追及を前に、リリーのそれまでの元気が一気に無くなっていく。そうして顔を伏せて口ごもるリリーに対し、慈しむような暖かい眼差しでレモンが口を開いた。


「お姉さま、道に迷ったのですよねー?」


 まさかの会心の一撃。ライチとスバシリが一瞬ハッとした表情を浮かべてすぐさま合点のいったように頷き、裏切られたリリーが顔を真っ赤にする。


「そうか。道に迷って、ウロウロしてる内に海に墜落したのか!」

「だからライチが見つけた時、ジャケットも傍に置かずに波打ち際にいたんだよ! 脱出したから!」

「一回ガス欠になったから、もう一回呼び出しただけでもう燃料切れだったんだ!」

「う……ああ……ああそうだよ!」


 新たな発見をした喜びのままに言い合うライチとスバシリを前に、リリーが爆発した。ぎょっとする二人にリリーがそのままのテンションで言葉を続ける。


「ああそうだよ! 道に迷ってたんだよ! だって海! 広いんだもん海! 仕方ないじゃん海! 広いんだから海!」

「うるさいよ」

「あ、ごめんなさい」


 リリーのいるベッドの反対側に座っていた担当医師が言葉少なに注意し、四人がそちらを向いて同時に頭を下げて素直に謝る。その後四人は再び顔を合わせ、今度は声のトーンをいくらか――ヒソヒソ声と形容出来るくらいの小ささにまで下げてリリーが言った。


「だって海だぜ? 海の広さはお前らもよく知ってるだろうが。あれのど真ん中に陣取ってみろ。どっち向いても同じ景色で、方向感覚狂っちまうんだから」

「い、いや、それは判るけどさ。せめてレーダーとか地図とかつけようよ……」

「お姉さまは地図が読めない人ですからねー」

「う、うるさいな。ていうかレモンはどっちの味方なんだよ!」

「計画性が無いよ」


 自信の欠点を挙げられて目に見えてうろたえるリリーだったが、直後にライチが自身の呆れを隠すこと無く放った言葉を受け、リリーの動きがピタリと止まった。


「せめてナビゲーション機能とかはつけておこうよ。地図読めなくても指示通りに動けば目的地につけるようになるんだからさ」

「馬鹿じゃねえの? 馬鹿じゃねえの? 先走りにも程があるっつーの!」


 更にそこにスバシリが追い打ちをかける。一方的な、だが全て正論な弾劾を受け、リリーは顔から脂汗を垂らして頬を引きつらせる。そして咄嗟に、助けを求めるかのようにレモンの方を見やった。


「自業自得ですねー」


 その肝心のレモンがおっとり口調でバッサリと切り捨てる。最後の砦に見放され、リリーが肩を落として完全に意気消沈する。

 少しやり過ぎたかな? その打ちひしがれた姿を見てそう考えながら、ライチが若干口調を和らげてリリーに言った。


「まあ、過ぎたことは仕方ないよ。とにかく無事で良かった。体の方は大丈夫なの?」

「あ? ああ、まあ平気とは言えねえけど、別に死ぬほどでも無いから大丈夫だよ」

「全身包帯だらけで言われても説得力無いけどね!」

「まったく本当ですー。そんなに怪我だらけで帰ってきて。心配する身にもなってくださいよねー」

「なんだよ、心配性だな。骨折れたくらいで死ぬ訳ねえんだから安心しろって」


 ふくれっ面を見せるレモンの言葉にリリーが笑いながら返す。落ち込むスピードが早い分、立ち直るのも早いようだ。いつもの調子に戻って一安心、ライチはそう思った。


「それはそうと、その逃げた奴はどこ向かってるんだ?」


 不意にリリーがそう尋ねてきた。意識を思索から現実に引き戻し、ライチがそれに答える。


「ああ、今ジンジャー達がそれを聞きに行ってる。僕達の方はまだ何も判らないままだよ」

「ソウアーの方でもサーチしてたと思うし、それなりに早い段階で結論が出るんじゃない?」

「そうか。どこに行くのかはすぐに判るか」


 リリーがそう言った横で、レモンが顎に手を当てて考え込む様に言った。


「でも、そのジャケットを奪ったという人、いったい何がしたかったんでしょうか?」

「それはあれだろ? ここから逃げ出したかったんだろ」

「ああ、なるほど。敵地から抜け出したかったのですねー」

「でも、そこから先はどうするんだろ? ここから逃げたとして、どこに向かうつもりなのかな?」


 そんなライチの言葉に、それまで予想を立てていたリリーやレモンが口を閉ざして考え込む。スバシリも他の三人と同様に珍しく難しい表情を浮かべて黙りこくっていたが、やがて顔を上げてライチ達に言った。


「ここで考えるよりさ、直接聞きに行った方が早いんじゃ無い?」

「……ああ」


 まったくの盲点だった。思考の深みに嵌まり、視野が狭くなっていた。

 それまでその考えに行き着かなかった三人は目から鱗が落ちる様な思いを味わい、そして目を輝かせてスバシリを見た。


「ああ、そうだよ。それだよ。そうした方がずっと早い」

「私達だけで考えていても埒が明きませんからねー。確かにそちらの方が手っ取り早いですー」

「よーし、じゃあさっさと姉ちゃん達のいる所まで行っちゃおう!」

「ちょ、ちょっと待って」


 蹴り上げる様に席を立ち扉に走りかけたスバシリをライチが制止する。行動を止められて不満も露わにこちらを見つめてきたスバシリに、ライチが諫める様に言った。


「リリーの事、どうするの? 足とか腕とかまだ万全じゃ無いんだから、下手に動かすのは危険だよ。ですよね?」

「ああ。絶対安静が望ましい」


 ライチの問いかけに対し、医師がクリップボードに挟まれた紙に視線を向けたままそう答える。だがそれに対し、今度はリリーが不満そうに顔をしかめた。


「おいおい、俺はもう大丈夫だって言ってんだろうが。足の骨がイってるから派手には動けねえけど、松葉杖とかがありゃあ普通に行けるって」

「いや、いくらなんでもそれは……」

「ライチ様、こうなったお姉さまはもう梃子でも動きませんよー」


 渋るライチに、打ち沈んだ口調で諦めた様にレモンが言った。


「ここで下手に止めるよりも、素直に道を空けた方が賢明かと思います」

「……平気なの?」

「平気だっつってんだろうが。ほら、杖よこせ杖」


 苛立ちに顔をしかめ、ぶっきらぼうにリリーが言った。渋る医師がそれに手をかけるよりも早く、レモンが二本の松葉杖を手にとってリリーに渡す。リリーは毛布をはね除けてそれを受け取り、体をずらしてベッドの横から立ち上がった。


「さ、行こうぜ」


 そして露骨に嫌な顔を見せる医師を無視しつつ三人にそう告げ、リリーが膝を曲げて右足を浮かせた状態で顔色一つ変えずに松葉杖を動かして先へ進んでいく。その緩慢だが危なげない動きを見て、ライチは安心と驚嘆を同時に味わった。


「あの人、かなり頑丈だね」

「はい。お姉さまはとても強い方なのです」


 ライチの横に立ったレモンが、さも自分の事のように嬉しげに語る。そしてライチの方を向き、優しく微笑みながら続けて言った。


「私の、自慢の姉です」


 迷いも後ろめたさも無い、純粋な信頼と親愛に満ちた言葉。


「……そんなに、凄いの?」

「はい。お姉さまは私の誇りです」


 そのレモンの表情と言葉を前にして、ライチは初めてリリーの事を本気で凄いと思った。そして彼女がここまで他人に慕われていると言うのを知った時、ライチの目には前を行くリリーの背中がとても大きな物に見えた。

 とても、凄いと思った。


「おーい! なに止まってんのー!? 早くしないと置いてくぞー!」


 だがそのスバシリの言葉が、驚きのあまり呆然としていたライチの心をこちら側に引きずり戻す。そんな電流が走ったように肩を震わせたライチを見てレモンがクスリと笑い、「さ、行きましょう」とその手を取ってリリーの後に続く。


「よし、行くか! お前ら、俺の後にしっかりついて来いよ!」

「えー? でもリリー、道わかるの?」

「ばっか、お前当たり前だろうが。こんなちっこい所でいちいち迷うかよ」

「そうかなー? アタシの案内に従った方が得策だと思うけどなー? どうせ全部カンで行くつもりなんでしょ?」

「う、うるせえな。俺にわからねえ物は何もねえっつうの。いいからついて来い」

「……さっきの道、左に曲がった方が近道だよ」

「うそ、マジで!?」

「うっそー♪」

「てめ、この野郎……!」


 前からスバシリとリリーの愉快な会話が聞こえてくる。レモンはその光景を見て楽しそうに微笑んでいた。その間、ライチはそのレモンの行動に身を任せるままだった。

 導かれるまま、ライチはただひたすらに、前を行くリリーに憧れの眼差しを向けていた。





 彼らが作戦室に着いたのは、それから二分後の事だった。最初こそリリーが「俺が先導するからついてこい」と息巻いていたが、結局はスバシリのナビゲートのままに進んでいた。


「お、俺もこっちの方が早いと思ってたんだぜ? 本当だっつーの」

「脂汗流しながら言っても説得力無いよ」


 全道程の半分ほど進んだ時、本人的には隠そうとしていたがバレバレの動揺を見せつつ言ったリリーに、ライチが静かにそう返した。それが原因となったのか、その後は開き直ったかのように、自分からスバシリに道を尋ねていた。

 そして目的に到着し、作戦室のドアを開けたライチ達を見て、そこにいたジンジャーらは大いに驚いた。当然リリーを見ての反応である。


「おい、大丈夫なのか?」

「平気平気。飯食ってりゃ治るって」

「そう言う問題では――!」

「それより聞きたい事あんだけど、いいか?」


 食いつこうとしたイナを無視してリリーが言った。ハナダはその力任せな様子を見て「彼女を咎めても無駄」と直感し、無視されて嫌な顔を浮かべているイナの事を若干不憫に思いつつ、事の次第をライチ達に伝えた。


「マジか。そいつ、オーストラリアに向かってるってのか」

「ああ。それが一番可能性の高い結果となっている」


 他の予測結果も交えつつそう述べたハナダに、リリーは不敵な笑みを返した。


「――上等じゃねえか。こっちから探す手間が省けた分、奪還の件は楽に済みそうだぜ」

「どこまでも楽観的だな」

「……面倒くさいとは思わないの……?」

「探す面倒に比べりゃあ可愛いもんだぜ」


 取り付く島もない。嬉しさを微塵も損なわずにそう言い切ったリリーに他の面々はただただ呆れたり、信じられない物を見るように口を開けて呆然としていた。が、やがてそんな彼らに目を向けつつ、リリーがそれまでと変わらない口調で言った。


「それで、オーストラリアにはいつ向かうんだ?」

「え――あ、はい。早ければ明日にも、ここを離れてオーストラリアに向かおうと思っております」

「そうか。明日か。わかった、ありがとな」


 リリーがそう言って笑いかける。そして浅く礼をするイナに向けて、またリリーが尋ねた。


「それともう一つあるんだが、カサブランカが海を進んでいる時って、甲板は使えるのか?」

「はい。それも構いません。よほどの酷い天候で無い時は、甲板を使っても大丈夫です」

「そうか。そいつは良かった」


 イナの言葉を受けてリリーが満足げに頷く。そんなリリー以外の全員が、彼女がいったい何に対して満足していたのか判らずにきょとんとしていた。そんな彼らを見て、再びリリーが口を開いた。


「いや、俺の足とか腕とか、今こんなザマだろ? もちろんほっときゃ治る怪我なんだが、その間に俺のハピネスを放置しておくのも勿体ないと思ってよ」

「何する気だ?」


 ジンジャーが問いかける。リリーは答える代わりに首を動かし、じっとライチを見つめた。


「え、僕? 僕が何かしたっけ?」

「お前、ジャケット動かせるんだろ?」


 ジャケットを動かせる。その文章だけが突然の事に混乱する頭の中にするりと入り込み、それに反射的に反応してライチが首を縦に振る。リリーはその動きを肯定と受け取り、再びジンジャーの方に顔を向けて言った。


「あいつにハピネスをやる」

「……は?」


 ライチが素っ頓狂な声を上げる。他の者達も皆、一様に目を点にする。


「ああ、別に『やる』って言うのは物の例えだからな。俺の怪我が治るまで、こいつに貸しておくって話だ」


 そんなギャラリー諸兄にそう前置きした上で、リリーが自身の言葉の理由を述べた。


「ほら、ハピネスの操作系はちょっと他の奴と違うからよ。『普通のタイプ』の経験者がぶっつけ本番で乗り回せる代物じゃあ無いんだよ。それでオーストラリアに着くまでの間、ライチにハピネスの動かし方ってのを教えてやりたいんだ」

「それで、さっきの話に繋がる訳か」

「ああ。そういうわけだ。別にいいだろ?」


 リリーがそうイナに確認をする。そしてイナはその提案に対して暫しの思案の後に了承の意を伝えるのだが、ライチはその時の情景を頭の中に入れることが出来なかった。

 ただじっと、勝ち気な姿勢を崩さずにいるリリーの姿を目に焼き付けていた。


「ライチ様、どうしたのでしょうか? なにやら心ここにあらずと言った感じなのですが……」

「いきなりあんな事言われたんだもの。驚いて当然よ」


 不思議に思ったレモンに、その横に立ったエムジーがそう予想を立てる。

 このエムジーの予想は、半分当たりで半分外れだった。


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