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第十九話「いつだって戦闘は呆気なく終わる」

「ザップザップザップザップ」


 耳鳴りにも似た甲高い音が数秒続き、一瞬途切れた直後、爆発音と共にその濃い鉛色をした複合金属製の壁の一部が吹き飛ばされた。その壁は部屋と通路とを隔てる壁であり、その歪にこじ開けられた穴の通路の側に、二人の女性の姿があった。そのうちの一人はもう一方の腰程の背丈の持ち主だった。


「あら? あらあらあらー?」


 そこは横長の空間で四方を無機質な白で染め上げられ、天井にある丸照明の光によって十分な明るさを保たれていた。通路とは異なる塗装を施されていたが、この施設は人が使う部屋は全て白一色に統一されているらしく、それはこれまで壁を壊して見てきた『外れ』の部屋も同じだった。

 その白い空間の壁一面に、上方にカメラを付けた白いモニターが敷き詰められ、そのモニター一個につき一台の白いコンソールがその下部に、更にそのコンソール前には簡略化されたウレタン素材の椅子が一脚ずつ設置されていた。

 それらの機械類はモニターこそ暗く沈黙していたが中のコンピュータ自体は今も低いうなり声を立てて稼働を続け、本来の主人が一人残らず拘束された事も知らずに活躍の機会を待っていた。


「どうやら、ここが当たりのようですねー」


 穴の向こうに広がるそんな光景を前にして、女性の一人――レモンは右掌から煙を吐き出しながらのんびりと言った。


「今までは二段ベッドが並ぶ個室ばかり見てきましたけど、これはもうここが司令室か、それに類する部屋であると見て間違いありませんねー。スバシリ様、ここであっているでしょうか?」

「すっげー! ショックウェーブ発振装置内蔵とかまじすっげー!」


 一方でその横に立っていたスバシリは穴の向こうの光景には目もくれず、珍しい物を見るような目つきで、その煙を吐く右手をまじまじと見つめていた。


「うおー! かっこいいー! ていうか稼働エネルギー余りすぎワロス! まじウケるー!」

「私が改造を受けた時は技術が未発達でして、人間一人動かすのに必要なエネルギー量を遙かに上回る容量のジェネレーターを搭載させられましたからー。それで、この余ったエネルギーを有効活用すると言う名目で後付けで装備させられた物なんですけれどねー」

「そうなの!? うっわ凄い! 人間万事塞翁が馬とは良く言ったもんだね!」


 無視されたにも関わらず解説をしたレモンにそう返しながら、スバシリが駆け足でその司令室と思しき空間の中へと入り込んでいく。そしてコンソールの一つに飛びつき、滑る様な動きで椅子に座り、まるでそれを何年も使い込んできたかのように手慣れた手つきで操作して行った。


「えーっと、まずは通信、通信……と。アクセース!」


 それから数秒もしない内にスバシリの飛びついたコンソールの上にあるモニターに砂嵐が走り、そこからノイズ混じりの声が聞こえてきた。スバシリはなおも無心で指を走らせ続けた。


「も……もし……もしも……応答して……ねえ、聞こえる? もしもし?」


 スバシリがキーを叩く度にモニターの砂嵐は目に見えて薄まって行き、その奥に隠されていた映像が露わになって行く。並行して音声にかかっていたノイズも取り除かれていき、そしてスバシリが最後のキーを勢いよく叩いた時には、その砂嵐の完全に消え去ったモニターには二人がよく知る人間の顔が映され、同時にそこからノイズの入っていない鮮明な声が聞こえてきた。


「もしもし。ライチだよ。聞こえる?」

「おっ、ライチ? 聞こえる聞こえる! こっちは今司令室っぽい所にいるんだけど、そっちは? ちゃんと着いた?」

「うん。今、砲台の管制室にいる。例のミサイルの砲台の所だよ」


 そこで言葉を切り、ライチが肩越しに後ろを振り返る。周囲が薄暗かった事もあってスバシリ達には背後の光景がよく見えなかったが、どうやらライチの後ろにある窓ガラスの向こうには、件のミサイル砲台がずらりと並んでいるようだった。

 生け贄ヒツジ作戦。その第二段階。ジンジャーがタイワンの連中を足止めしている間に彼らの作ったミヤコ島基地のミサイル砲台を利用し、カゴシマ支部にミサイル攻撃を加える。その最後の攻撃の際に不都合が生じないよう、ライチがこうしてここにいたのだった。そんな訳で砲台管制室に侵入し、そしてこちらに向き直って会話を再開したライチの顔には、ほんの少しの緊張と恐れの混じった表情が浮かんでいた。


「間近に見るとやっぱり大きいって言うか、怖いね」

「そりゃもう! 人間大砲とは違うんだからね! サイズに開きがあって当然だよ当然! キャハハハハッ! どーんどーん!」

「ああ、ライチ様。そちらも無事に到着なさったのですねー」


 スバシリが躁気味にはしゃぎ回り、その背後についていたレモンが全く動じる事無く安堵のため息を漏らす。その空気の違いすぎる二人の様子をモニター越しに見たライチは、肩を竦めてそれに答えた。


「うん。途中で誰にも会わなかったから、すんなり来れたよ。まああまりにも静かすぎて、ちょっと拍子抜けしたんだけど」

「そりゃあ静かなのも当然よ! なんてったって、私達が既に一網打尽にしておいたんだからね!」

「そうかそうか。偉い偉い」

「わっはっはー! もっと褒め称えよー!」


 コンソールから手を離してモニターを見上げ、スバシリが胸を逸らして自慢げに鼻を鳴らした。それを見て微笑ましげに苦笑した後、ライチが真剣な顔に戻って言った。


「とりあえず、今からこいつらの点検がしたい。爆弾とかトラップとかあったら洒落にならないからね。設計図というか、それっぽいデータが欲しいんだ。こっちに転送出来るかな?」

「もっちろん! ミサイル砲台のデータでしょ? すぐに送るから待ってて!」


 スバシリが頷き、再びコンソールに指を走らせる。同時にモニターの右隅に四角い別枠が出現し、その中を記号化されたデータの列が人間の目には終えない程の猛スピードで上から下へとスクロールしていく。

 検索と転送は五秒で終了した。


「はい、転送終了! これでいい?」


 スバシリが言った。この時ライチの側のモニターにも小さく別窓が開き、そこにスバシリの転送した砲台の設計図があった。どうやらそれを見ていたらしく、この時スバシリの側のモニターには、こちらにまっすぐ向けていた視線を隅へと逸らし、険しい顔でその一端を見つめるライチの姿が映されていた。


「……うん。これなら行ける」


 そしてすぐにモニターに向き直り、表情筋を緩めてライチが言った。


「じゃあ、今から作業に行くから。ちょっと時間かかるかもしれないけど、待っててくれる?」

「おっけー! 首を長くして待ってるからね!」

「わかりましたー。どうぞお気をつけてー」


 二者二様の返答を受けてライチが小さく頷いた後、通信が切れモニターが黒く沈黙する。今もそこにライチが映っているかの様にそのモニターを見つめながら、レモンがスバシリに言った。


「私達の仕事は、とりあえずはこれで終了と言った所でしょうかー?」

「うーん、今のところはそうかなー? とりあえずライチからの連絡が無いと動きようがないし……」


 レモンの問いに対して椅子に深く腰掛けぼんやり天井を見上げながらそう答えたスバシリだったが、その次の瞬間に「あ、そうだ!」と叫び、再びコンソールに張り付いた。


「どうかしたんですかー?」


 そう尋ねたレモンに対して滑る様な指さばきでコンソールをいじりつつ、モニターから目を離して肩越しに振り返りながらスバシリが言った。


「あー? うん、ちょっとねー!」


 指の動きは止まらない。頭と体がそれぞれ別の生物になったかのような動作を行いながらスバシリが続けた。


「ほら、クチメ姉ちゃんがヒッキーになってた船あるじゃん? なんてったっけあの船? 笠田?」

「カサブランカですねー」

「あーそうそうその船。それにちょっと連絡付けようと思ってねー」

「連絡ですかー。その心は?」


 レモンの言葉に指の動きを止めてスバシリが答える。


「帰る時に拾ってくれたらなーって!」


 そう答えたスバシリの上にあるモニターにはゴシック体で大きく書かれた『送信完了』の文字と、その下に横長に伸びた緑色のゲージがあった。


「かわいい妹がそこにいたら拾ってあげたくなるのが人情ってもんでしょ!」

「早業ですねー」

「ふっふん! もっと褒めてくれてもいいんだよ? むしろもっと褒めなさい! そうら崇め奉るがよいのだ!」


 目の前の光景の意味を察して簡単の声を漏らしたレモンに椅子を回転させて向き直り、当然と言った感じでスバシリがドヤ顔を見せつける。レモンは何も言わずにニコニコ笑っているだけだったが、スバシリは意に介する事無く、一人高笑いを上げていた。


「レモン、スバシリ、聞こえる? 聞こえたら返事して?」


 だが突如モニター左右から聞こえてきたその声が、二人の意識をそちらに向けさせた。モニターに発信者の顔は映らず、代わりに声の調子によってその形を上下にジグザグと激しく波立たせる一本の横線が映されていた。もっともそれは声のみならず周りで絶えず発生している雑音まで拾ってしまうので、その横線は落ち着く事無く常にその身を小刻みに震わせていたが。


「そういえば、声以外に何か目立つ音が聞こえてきていますねー」

「ああ、言われてみれば確かに。なんだろこれ。ドアをひっかいてるような……」


 中には不思議な音も混じっていたのだが、レモンとスバシリは敢えて追及しない事にした。

 とにかく、周りの音に反応して形を変えるその線と、その線の形を変化させる源である女性の声が、発信者がライチではないと言う事を表していた。

 それは二人にとってなじみ深い声であった。


「確かこの声って……」

「エムジー様ですねー。いったいどうなさったのですかー?」


 レモンがあっさりと声の主を言い当てる。その声を聞いて息をのんだ音を拾ったのか、小刻みに震えていたそのジグザグな波は、ほんの一瞬だけ振り幅を大きくした。だがそれは焦りや恐れの類ではなく、「ああ、繋がった。良かった!」と言う安堵の現れであった。そして肩の力を抜くかのように大きくため息を漏らし、そのまま通話口にいるであろう二人に向けて言った。


「ねえ、そっちは無事? 無事だったら少しは連絡よこしてよ。待たされる方は気が気じゃないんだからさ」

「ああー、それはそうですねー。まったく申し訳ないですー」

「あれ? ていうか、どうしてこっちの周波数知ってんの? アタシ教えた覚えはないんだけどなあ」

「それについても申し訳ありませんですー。何かあった時に備えて、私がエムジー様にマザーシステムに繋がる回線のデータを送っておいたのですよー」

「マジ? いつ?」

「ハッキングをした時に、ちょろっと」


 頬に手を当て、首をかしげて笑顔を見せる。無線の向こうからも、エムジーが苦笑いを浮かべていたらしき苦笑が聞こえてくる。


「そうか! ちょろっとか! ちょろっとなら仕方ないなーちょろっとなら!」


 スバシリもそう言って大きく口を開けて爆笑した。つられてレモンも声に出して、だが口に手を当てて上品に笑い、二つの笑いが互いに重なり合い響き合い、すぐに司令室は二人の笑いの坩堝と化した。その様はまだ地球に国があった時代に放映されていたホームコメディを彷彿とした。


「おい、ちょっと。笑ってないでそろそろこっちも本題に――」


 笑いを打ち消してそう言いかけたエムジーの言葉と二人の笑い声は、突如別モニターに映し出されたライチの顔と共に発せられた声によって遮られた。その声は快活で、達成感に満ちていた。


「みんな! こっちのメンテナンスは終わったよ! それと後でちゃんとオキナワにも連絡取っとかないと、途中で迎撃されちゃうよ! そこは大丈夫なの?」


 そしてその彼の口から発せられた情報――皆の頭の中からすっかり抜け落ちていた情報が、三人の頭を一気にこちら側に引き戻した。


「あーそれ忘れてたわー! オキナワ突っ込んだら確実にぶっ壊されるわーアッハッハッハッ!」





「生け贄ヒツジ?」

「ああ」


 同じ頃、ジンジャーは半壊したスキウラーから引きずり下ろされ、後頭部に両手を乗せて岸辺の地面に俯せになり背中に銃を突きつけられていた。

 足をやられたのがまずかった。下半身の装甲が予想以上に脆弱だった事や自分の機動性が損なわれたと言う事実にジンジャーは戦慄したが、それ以上に敵にこちらの弱点を知られたのが痛恨だった。予想通りメイデイに徹底的に足を狙われ、最終的には四本中三本をおしゃかにされた。その後はただのボーナスステージ、縁日の的当ての的と化した。

 完全に身動きの取れなくなった所に集中砲火を浴び、頑強だった装甲にもヒビが入り始めた。外部装甲が砕け破片となって飛び散り、むき出しのフレームにこれでもかと言わんばかりの光弾がぶつかってくる。ダメージの余波がコクピットにまで飛び火してくるのにさして時間はかからなかった。それからモニターがひび割れ周辺機器から火花が飛び始めた時、ジンジャーは投降する事を決意したのだった。

 そして今に至る。

 その後、こうしてジンジャーは自分がここで何をしているのかを洗いざらい吐き出す羽目になったのだが、それでもなお彼女は平静を保っていた。だがそれは余裕の表れではない。ただ単に諦めの気持ちが先行してやけくそになっていただけである。


「つまりそれ、カゴシマの支部が危険って事?」

「ああ」

「なにそれ、私聞いてない」

「言ってなかったからな」


 背中に突きつけられた銃――カスタムジャケット『メイデイ』の伸ばした腕の先にある掌のエネルギー弾発射装置を――肩越しにちらちらと伺う様に見ながら、ジンジャーがさらりと言ってのける。メイデイに乗り込んでいた女は外部マイク越しに震えた声を出した。


「え、じゃあなに? 私、まんまと嵌められたって事?」

「いや、お前が来たのは想定外だ。カゴシマとタイワンが戦争状態にあったって事も知らなかった。お前みたいなカスタム機がある事も知らなかった。全部偶然の一致と言う奴だ」

「ああやだ。なんて最悪な偶然なのかしら」


 メイデイのコクピットの中にいた女が苦々しげにそう漏らしながら、キーボードをいじってカゴシマ支部との無線周波数を合わせ、連絡を取ろうと試みる。

 時既に遅しだった。


「……ああやだ。最低」

「勝負に負けて試合に勝った、と言う所か」


 そんなジンジャーの減らず口に全く反応する事無く、メイデイが構えていた腕をゆっくりと降ろす。


「撃たないのか?」

「もう戦う理由もなくなっちゃったしね」

「そうか。じゃあもう立っていいか」

「好きにすれば?」


 メイデイから投げやりな言葉が響く。罠かもしれない、と言う考えはジンジャーの頭の中には無かった。乗機であるスキウラーはもう動かないし、隠れる場所もない。どっちみち逃げ道はないからだ。


「……あー。あー。マイクテス、マイクテス……」


 彼女たちの周辺に何重にもエコーを掛けたやる気のない平坦な声が響いてきたのは、ジンジャーがそうして立ち上がろうとしたその瞬間だった。


「なに!?」


 メイデイが咄嗟に両手を水平に広げ、掌を光らせながら銛の様な帽子を目深に被った頭を動かして周辺を索敵する。ジンジャーは無駄と判りつつも、それでも生身でいるよりかはマシだと判断してかつてスキウラーと呼ばれていたブツのコクピットに乗り込んだ。そしてハッチを動かそうとしてその部分もイカれている事に気づき、縁を蹴りつけながら悪態をつく。


「音声サーチ、声の発信源は……」


 その一方でメイデイのパイロットは懸命に捜索を続けていたが、その努力は呆気なく裏切られた。


「……ああ」


 彼女達がいた所より右手の所に、基地周辺の荒廃が嘘のように無傷な姿で水上に浮いていた船艦の姿があったからだ。音源の探索を行うまでもなく、最初の発言から一定の間を置いた今になって「マイクテス、マイクテス」と言う声が連続して聞こえてきていたのだ。


「……うん。マイクの調子は良好。これでいい……」


 そこで戦艦の声が一旦途切れる。メイデイと、何事かとコクピットから首だけを出してその方の様子を伺うジンジャーの前で、その戦艦が再び声を放った。


「……あーあー。ジンジャー。ジンジャー・バーリィ、いる? いたら返事して……」

「あ」


 そこで始めてその戦艦の存在を頭の中に収めたジンジャーが、とても気の抜けた声を出した。

 戦艦カサブランカ。こんな所にいたのか。それまではただの黒い壁にしか見えなかったそれの正体に、今更ながらジンジャーは気づいたのだった。


「……ジンジャー・バーリィ。いるのは判ってる。赤外線センサーとバイタルパターンからも検知済み。いたら返事して。ジンジャー・バーリィ、応答を……」


 そしてこの声はマレット三姉妹の根暗な子の物だ。クチメと言ったか。そこまで考えたジンジャーは、やがてゆっくりとコクピットから降りて戦艦の元へと進んでいった。


「ここだ。ここにいるぞ」

「……ジンジャー……」


 戦艦からの声が一気に安心した物へと――調子は相変わらず平坦だったが、ジンジャーにはそう聞こえた――変わる。そんなクチメの下に近づきながら、ジンジャーが助けを求めるかのように両手を高々と振り上げて言った。


「クチメ。こっちだ。ちゃんといるぞ」

「……ジンジャー、敵の制圧は……?」

「ああ。ご覧の通りだ」


 ジンジャーの言葉を受け、クチメの視線を表すかの様にカサブランカの艦橋上部にあったビームライトが周辺を舐める様に照らしながら動いていく。その光が照らすのは瓦礫ばかりであったが、やがて無傷のメイデイに当たるやいなや、そこからピクリともせずに照明が固定される。


「……」

「ああ……あれは投降した。なんの問題も無い」


 ジンジャーが足を止め両手を広げて弁解する。


「……本当に……?」

「私を信じろ」

「……わかった……」

「と言うか、見てなかったのか?」

「……今までシステムをダウン――『寝てた』。無駄な労力を消費したくなかった……」

「やれやれ」


 メイデイを照らしていたビームライトが消える。再びジンジャーが歩き出す。


「それで? 私を呼んだ理由は?」

「……帰る……」


 既にジンジャーはカサブランカの側まで来ていた。そして側面から全自動で斜めに降ろされてくるタラップ――骨組みだけの簡素な物ではなく、ガッシリと組まれた肉厚で頑丈そうな代物だった――を待つジンジャーに向けてクチメが続ける。


「……カゴシマへのミサイル着弾を確認。同基地の消滅も確認。ミサイルはミヤコ島から飛んでいった模様。オキナワを通過するも迎撃装置は機能せず。周辺のゴタゴタが全部片付いた……」

「そうか。向こうはちゃんとやってくれたのか」

「……こんな作戦、聞いてない……」


 むくれたように言ったクチメにジンジャーが肩を落とす。


「オキナワの方にも話してなかったんだ。完全にこっちのアドリブだよ。オキナワに報告するか?」

「……もうしておいた……」

「早いな」


 説教で済むかな。そう考えながら、ジンジャーがゆっくりとタラップを上がっていく。そのタラップはエスカレーターのような構造をしていたため、放っておいても勝手に上昇していく仕組みになっていた。


「……途中でミヤコ島に寄る……」


 その道中、クチメがジンジャーに言った。


「……そこでスバシリ姉様達を拾って、それから帰還する……」

「そうか。ならこちらからも一つ頼みがあるんだが」

「……なに……?」


 タラップと側面出入り口の境界で立ち止まり、身を翻してメイデイの方を見る。その視線に合わせる様に、ビームライトが再度メイデイの方へと向けられる。


「彼女も同乗させてほしい。こちらに投降した。一応は捕虜の扱いだ」

「……わかった……」


 ジンジャーが完全に船の中に消える。その間、メイデイは完全に沈黙していた。抵抗するのは無意味と悟っての沈黙ではなかった。


「うわー、やっべー。貯蔵庫あっちじゃねーかよー。タイ米おじゃんじゃねーかよー。やっべーまじやっべー」


 自分が前金として受け取っていた米がなくなった事と、これからどうやって生活していくかの事ばかりに気を取られていて、戦艦どころではなかったのだ。


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