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第十一話「バカンス! バカンス! バカンス!」

 コウチを出発した戦艦『カサブランカ』は、その後トカラ列島とアマミ大島の間を通過し、Sの字を左右反対にしたような航路を取ってオキナワ本島に向かっていた。

 地図で見たオキナワは本州に比べるととても小さな物だったが、実際に肉眼でみると矢張りそれは巨大であった。


「これが、オキナワ……」

「かつて人間が地球に住んでいた頃には、ここはニホンの中にある南の楽園と称されていたらしい」


 艦橋から島の一部を眺めて感嘆していたライチに、その横に立ったジンジャーが説明を始めた。


「空気も澄んでいるし、海も青い。空も青くて、バカンスにはもってこいだったそうだ」

「ジンジャー、随分詳しいんだね」


 そう言って自分の方を見つめてきたライチに、ジンジャーは黙ってオキナワについて簡単に記されたパンフレットを差し出した。


「イナに貰った」

「あ、そう」


 一気に白けた顔になるライチを見て苦笑しながらジンジャーが言った。


「まあ、それも昔の話だ。ここも今では、とてもバカンスだの何だの言っていられる環境じゃないからな」

「でも、海には昔と変わらずに入れると聞いていますよー?」


 ジンジャーの横に立ったレモンが言った。僅かに片方の眉を吊り上げてジンジャーが尋ねる。


「本当なのか?」

「はいー。この辺りの海……と言いますか、世界中の海の汚染レベルはゼロに近いのでどこでも自由に泳ぐ事が出来ると、三姉妹の方々が仰っていましたー」

「そうか、泳げるのか。実は海は初めて見るんだが、こんな所で泳ぐと言うのはその、なんだかワクワクするな」


 嬉しそうにオキナワの海について語るレモンと、それを聞いてどこか興奮気味に笑みを零すジンジャー。そしてライチもまた、この『海』と呼ばれる巨大な水たまりを前に、己の中にある未知の物に対する好奇心、探究心を刺激されていた。


「これ……この海ってやつ、どこまで続いてるのかな?」

「海は全て繋がっているのですよー? ただそれを海に面した国々が領海とか何とかの関係から、それぞれ適当に区切って別々の呼称をつけているだけなのですー」

「え!? じゃあこの『海』って言うのを泳いで行ったら、いつかは別の大陸に着けるって事なの!?」

「はい。そう言う事ですー」

「まあ、その前に体力が尽きて終わりなんだけどね」


 突然かけられた言葉に驚いて三人が背後を向くと、そこには腕を組んでこちらを見つめるエムジーの姿があった。そして躊躇いも戸惑いも感じさせない自然な動作でライチの横につき、その島を眺めて言った。


「へえ、あれがオキナワって言うんだ。初めて見るけど、いいトコじゃないの」


 ねえ? エムジーがライチに問いかける。一つ頷いてライチが返す。


「うん。空も綺麗だし海も青いって事で、結構有名だったらしいよ」

「結構どころじゃないわよ。オキナワはニホンだけじゃなくて外国の人も訪れに来る一大観光スポットだったんだから」

「そうなの?」

「私、地球にいるのはそれなりに長いんだけど?」

「そういえばそうだったね。忘れてたよ」


 ライチが笑い、エムジーも笑い返す。そこには気負いも遠慮も無かった。

 それは気の置けない親友同士が交わし合う他愛のない談笑。とても微笑ましい少年少女のやり取りであった。


「……どうやら、吹っ切れたみたいですねー」

「あいつらがどうかしたのか?」

「いいえ、なんでもありませんよー」


 この数分後にカサブランカはオキナワの泊港跡地に停泊したのだが、監視カメラを通して二人の模様をスバシリと共に眺めていたのをレモンはついに誰にも話さなかった。





 オキナワには地球耕作部隊ソウアーの支部が作られていた。支部はここ以外にもホッカイドウのサッポロ、オーストラリアのシドニー、インドネシアのパロポ、イギリスのロンドン、グリーンランド、マダガスカルのアンタナナリボに設置され、そして本部がニューヨークに置かれていた。


「全部島じゃないですか」


 ソウアーオキナワ支部隊員によって通された会議室で地図を見ながらその説明を受けたライチ――この時、ライチとジンジャーとエムジーはレモンの執り成しでソウアー特別隊員と言う扱いを受けていた――の放った質問に、支部長のハナダは張り出した自分の顎をさすりながら神妙な面持ちで頷いた。


「うむ、これには理由があってな。実はN爆弾……ナノマシンボムの投下から数日後に、あるウイルス兵器が投入されたのだ」

「ウイルス?」

「ああ。地下に逃げた人間だけを抹殺させるように開発されたウイルスで、非常に重いから飛ぶ事はせずに地面を這うように進み、そして水のような特性を持っている。地面に浸透して地下施設に到達し、そこで接触感染によって人間の体内に入り込み対象を殺害する」

「……酷い……」

「ウイルスはまずマレーシアとインドに一発。ロシアのモスクワとウラスノヤルスク、それとラプテフ海近郊に一発ずつ。オーストリア、ザンビア、ニジェールに一発ずつ。ボリビア、メキシコ、アメリカのネブラスカ州にそれぞれ一発。カナダのユーコンとアルバータに一発。そしてトウキョウに一発」


 地図上の地域を指し示しながら、ハナダが淡々と話を続ける。


「これで全滅だ……全滅する筈だったと、撃ち込んだ連中は思ったんだろう」

「何かあったのか?」


 ジンジャーの言葉にハナダが頷く。


「当時は誰も知らなかったのだろうが、このウイルスはナトリウムに弱かったのだ。ナトリウムと接触するとすぐに反応し、たちまちの内に分解され毒性を失ってしまう」

「ナトリウム?」

「塩だよ」


 エムジーがはっと顔をあげる。


「海水ね?」


 顎をさすりながらハナダが頷く。


「奴らは気流に乗って飛散する事が出来ない。地を這うように動くしか出来ない。その代わりしぶとさはピカ一なんだが、それも海と接触して、片っ端から消えていった。 ……おそらく、ロクにテストもしないで使用に踏み切ったんだろう。ここに撃てばイギリスやオキナワにも拡散されるだろうと見切りをつけて、適当にばらまいたのが明暗を分けた」

「……だから島国は無事だった」

「そう言う事だ。他にもキュウシュウやシコク、無傷で済んだ所はいくつかあるが、ソウアーの人員にも限りがあるからな。めぼしい所を見つけて、支部を作ったと言う事だ」

「でも、もしそうならアメリカは?」


 ライチの放った言葉に全員が視線を向ける。北アメリカ大陸をじっと見つめながらライチが言った。


「アメリカのニューヨークはネブラスカと陸続きですよね? これはどうしたんですか?」


 ハナダの顔が途端に苦虫を噛み潰したような物になる。ギュンターとヤーボもそれに倣い、レモンは静かに顔を伏せる。


「アメリカは」


 やがて嫌な物を吐き出すかのようにハナダが言った。


「ウイルスごと――汚染された大地ごと、ネブラスカを核で焼いたんだ」





 支部が海に囲まれた島に置かれた理由を聞いた後、支部長のハナダはレモン達に労いの言葉をかけた。


「ニューヨークからわざわざご苦労。しかし、随分と遅れたな。何かあったのか?」

「はいー。それが、ちょっとアクシデントに巻き込まれましてー」

「そうか。それについては後で詳しく聞くとして……まあ、無事でここまで来れたから何よりだ」


 そして次に、彼女達にするべき仕事の内容を簡潔に伝えた。

 何のことは無い。オキナワの大地を耕せと言うモノだった。


「明日から作業に就いてもらう。それまで、君達はゆっくり休んでいてくれ」

「はい。わかりました」

「あのー、ライチ様の方はどうなさるのですかー?」

「彼らには別に話したい事がある。暫くはここに残ってもらうつもりだ。君達は退出してくれたまえ」

「了解ですー」

「了解しました。それではお三方、我々は先にカサブランカに向かっておりますので」


 そしてレモン達が一足先にカサブランカに戻った後、ハナダは次にライチとジンジャーとエムジーを見た。そして最初の二人を見てハナダは一人頷いた後、顎をさすりながら静かに言った。


「君達か。色々やらかして火星を追われた人間と言うのは」


 その後、ハナダはなぜそれを自分が知っているのかといった事などについて、息を呑む二人に事情を説明した。

 もともとライチ達はソウアーのニューヨーク本部に送られる事になっていたのだ。そしてそこで一生、住み込みで緑化活動に従事する事になっていた。ソウアー本部から各支部へはその様に打診されていた。


「だが君達を乗せたシャトルが途中でいきなり音信不通になってね。あの時は相当焦ったそうだ……良ければその時の話を聞かせてくれないか? 君達が無事だったという情報と一緒に、本部に報告しておきたいんだ」


 二人はシンジュクで起きた事をかいつまんで説明した。ハナダはそれを聞き終えると、苦い顔をして吐き捨てた。


「また奴らか」

「奴ら?」

「あの青空の会とか言う奴を知ってるんですか?」

「ああ。もちろん。知りたいか?」


 素直に頷く。ハナダが口を開いた。


「青空の会。奴らは端的に言えば、人類の大多数が火星に飛び立った後も地球に残り続けた、いわば『純粋な地球人』の末裔だ」

「地球の生き残り……!?」


 ライチが唾を飲み込む。ハナダが続けた。


「そして、容易に想像がつく話だが……連中は火星人を恨んでいる。そしてやつらは世界中に根を張り、相互にネットワークを構築して連絡を取りあっている」

「オキナワにもいるんですか?」

「ああ。直接姿を見せる事はないがな。嫌がらせだけはしっかりしていくよ」


 懲りない連中さ。うんざりしたようにハナダが漏らした。そのハナダに今度はジンジャーが尋ねた。


「最初見た時、奴らはかなりの重装備をしていた。連中はどこか武器や資金を提供するスポンサーみたいな所と繋がっているのではないのか?」

「いや、それはない」


 ハナダが断言する。


「奴らは恐らく、地下施設から武器を調達していたんだろう。確証はないが、あそこに大量の武器弾薬が積み込まれてあってもおかしくはない」

「ジャケットは?」

「ジャケットは当時は軍の物で、おまけに戦争でその殆どが潰れてしまった。もし無傷で収容出来たのなら、それはもはや奇跡に近い」

「私達は奇跡に救われたってわけね」


 エムジーがしみじみ呟く。事情を知ったハナダも「まったく運がいい」と感慨深げに唸った。


「そうだ。ジャケットで思い出したんだが」


 その時、ハナダが不意に顔を上げて言った。


「君達、操縦は出来るか?」

「ああ、まあ」

「僕は治す方の側なんですけど、一応は」

「私アンドロイドなんで操縦は……」

「そうか。いや、観測手も必要だったんだよ。ちょうど良かった」


 ハナダが満足そうに頷き、そして三人の目を交互に見ながら言った。


「実は、ウチにはジャケットを操縦出来る奴が一人いたんだが、二日前から風邪で寝込んでいてね。もし良ければニューヨークに行く手筈が整うまでの間、ここで特別任務に就いてもらいたいんだが……」


 どうだ?

 ハナダが尋ねる。

 三人は少し迷って、同じ答えを言った。





「海! オキナワと言えば海!」


 外界活動用の義体に自らをインストールしたイナが、白い砂浜に両足で立って高らかに叫ぶ。

 彼女は今、黒のビキニを身に着けていた。


「海で泳がずんばオキナワに来た意味にあらず! いざ青の世界へ! いざや! いざや!」

「……テンション上がってるね」

「イナ姉ちゃんはハメを外すと止まらなくなるタイプだからねー!」


 パラソルの下、目の前に広がる大海を指さし一人吠え猛るイナを遠目で見つめながら、スバシリとライチが互いに言葉を交わした。スバシリはイナと同じく義体の上に青いスクール水着を着込み、ライチはボクサーパンツタイプの水着を身に着けていた。


「それよりさー、ライチは泳がなくていいの?」

「え? いや僕はその……泳げなくってさ」

「そういえば、火星に海って無いもんねー」

「遊興ブロックにある『プール』って言う水の溜まった施設を使えるのは上流階級だけだったしね」

「なにそれ、人種差別じゃん!」


 頬を膨らませてスバシリが憤慨するが、すぐに顔をいつも通りの笑顔に戻してライチに言った。


「まあいいや! 今はそんな事忘れてさ、海で楽しもうよ!」

「――うん、そうだね。そうしよっか」


 その言葉にライチも力強く頷く。そう、楽しまなければ損である。





 ハナダとの会談を終えた後、彼らは停泊地から百メートル離れた砂浜の上にいた。そこは元々埋立地だったらしいのだが、ならばこの砂は一体何なのか。ライチ達は敢えて考えないようにした。

 そう、今やるべきは考える事ではない。思いっきり羽根を伸ばす事である。

 なぜなら彼らは海水浴に来ていたからだ。


「オキナワですよオキナワ! 澄み切った水色! オキナワの海! 珊瑚……は殆ど死滅してるけど、それでもなお美しさを保つオキナワの海! これが泳がずにいられようか! いやいられまい!」


 例によって発案者はイナであった。どこからか全員分の水着まで用意していた(男性の腰回りや、女性のスリーサイズまでぴったりであった)。


「……イベント大好き人間……」


 自分の水着を受け取りながら、クチメはそう姉を評した。





 だが着替えを終え、いざ泳ごうと言う段階になって、いくつか重大な問題が発生した。火星人がカナヅチと言うのは周知の事実。問題はそれ以外のところにあった。

 端的に言うと、無知ゆえの悲劇である。


「ごふっ、ごふっ、げほ……な、なんだあれは!? 途中から足がつかなくなったぞ!」

「ええまあ。だって海ですから。海って言うのはですね、こう、先に進むにつれて深さが増していくんですよ」

「何!? 海はどこまで行っても一定の深さでは無いのか!?」

「ええ。だって海ですから」


 黒ビキニ姿のジンジャーは何も知らずに海に入って溺れ死にかけ、立ち直るまでの間タオルを背中から羽織ってトランクスタイプの水着をつけたヤーボにその背中をさすってもらっていた。その顔は死体のように青ざめていた。


「げふっ、うっ……!」

「……ライチが海水飲んだ……」

「ギャハハハハッ! コイツ真水と間違えてやんのー! あーウケるー! アッハハハハッ!」


 ライチはライチで海水の特性を知らずにがぶ飲みし、完全にグロッキーと化していた。そしてイナの逆鱗に触れたスバシリ共々、体調が整うまでパラソルの下で休むハメになった。


「ねえ! 本当にこんな露出の激しいモノ着けて歩かなきゃいけないの!? ねえ!」


 そしてそれとは別に、エムジーは手渡されたビキニ水着を見て羞恥に狂っていた。


「訳わかんない! これじゃただの露出狂じゃない! やっぱり人間って訳わかんない生き物だわ!」

「まーまー。一度その開放感を味わうと、案外病みつきになる物ですよー?」

「え、ちょ、それは流石に――!」


 そう言って飛び出したレモンはビキニとそれを隠すように腰からパレオを巻いただけで、胸を隠していなかった。

 デミノイドだったからそれほど問題は無かった。


「……ごふっ……」


 訂正。その姿を見たギュンターが鼻血を出して医療室行きになった。





 そんなアクシデントも今は昔。

 最初の頃から一時間ほど経った今では、もう自分達の尺度に会った、それぞれの楽しみ方で海水浴を満喫していた。


「ああ、これはいい。これはとても癒されるな」

「……右に同じ……」


 ジンジャーとスクール水着を身につけたクチメは比較的浅い所で仰向けになり、潮の流れに身を任せてゆらゆら揺れていた。そうして浜辺に漂着しては億劫そうに身を起こして再び海に入り、腰ほどの深さの辺りでもう一度仰向けになる。そしてまた浜に打ち上げられる。その姿はまさ土左衛門であった。


「シミュレート……デリート。グラム修正。リブート。シミュレート……」

「カサブランカマザーシステムに接続。検索。キーワード『お城』……9875498542ヒット。548パターン適用。オプティマイゼーション。インストール。リスタート」


 エムジーとイナは二人して訳の分からない言葉を口走りながら、砂浜に座り込んで城を作っていた。二人してまだ土台しか出来ていないそれを見つめていたが、その目はそれまでのテンションが嘘のように色を失い、死んでいた。凄い怖い。


「おおー、焼けますねー。じゅうじゅう言ってますねー」


 レモンは浅瀬の所で胡座をかき、腹の蓋を開け、中にある六角柱型のジェネレーターに向けてバケツの中に注いだ海水をぶちまけていた。そしてその海水がジェネレーターの発する熱で蒸発する様を眺めて楽しんでいたのだ。


「うっ……うーん、ちょっと溜まり過ぎましたかー。仕方ないですねー」


 そして定期的にその場で四つん這いになり、蒸発せずに体の中に溜まった海水と蒸発によって取り残された塩を一緒に流し落としていく。それが終わるとまた何事も無かったかのようにバケツに水を汲み、再び先と同じ奇行を行う。ジェネレーターが以前よりも赤く激しく明滅しているような気がするのだが、爆発しないのだろうか?


「ギリギリのスリルって面白いよねー!」


 そんなレモンの姿を見ながらスバシリが言った。そしてスバシリの言葉につられてその姿を見た後、ライチはギャンブルを嫌うイナの気持ちがちょっとだけ分かったような気がした。


「無茶だけはしないと思いたいなあ……」

「どーだろーね? 案外ヤバイ所まで行っちゃうんじゃない?」

「それ、普通に困る」

「まあまあ。それより、体の調子はどう?」


 そう問いかけてくるスバシリにライチが微笑む。


「うん。大分良くなったよ」


 スバシリの顔の笑みが一段と輝く。


「本当に!? 本当に!?」

「うん。本当だよ」

「よーし! それじゃあさっそく」


 そう言ってライチの手を取り。


「行こう! アタシがライチに泳ぎ方を教えてあげる!」

「本当? じゃあその指導を受けるとしようかな」


 二人して立ち上がったその時。


「動くな!」


 銃声が轟いた。

 空気が一瞬で張り詰めたものになる。

 その場にいた全員が動きを止める。


「お前ら、動くんじゃないぞ! 本気だからな!?」


 子供の声だった。若々しい、声変わり前の少年の声。そして殺気立った声。

 強靭な意志に満ちた、本当に『やりかねない』声であった。


「いいな。そのまま、そのままじっとしてろよ……へへっ、宇宙人なんざそのまんまビクビク怯えてるのがお似合いなんだよ」


 その声のする方へ、ゆっくりと顔を向けていく。


「いいな? 動くんじゃないぞ? 宇宙のカスどもめ、死にたくなかったらそのまま動くんじゃないぞ!」


 薄茶色の半ズボン、白のタンクトップ。欠けた前歯。いがぐり頭。


「ここは俺達地球人の土地だ! お前ら宇宙人がいていい所じゃねえんだよ!」


 突撃銃を背負った年端もいかない少年が、拳銃を両手で構えて仁王立ちになり、こちらをじっと睨みつけていた。


「あれはマカロフですねー」


 風に乗って、ライチの耳にレモンの声が聞こえてきた。

 この局面を打開できるような、もう少し有用な情報が欲しかった。


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