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車内恋愛  作者: 紅生姜
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第一章

 「もっと別の出会いをしていたら、僕たちどうなっていたかな。」

 

 「そんなこといわないでよ・・・彰のばか。」



 ぼくと千枝がはじめて会った場所はインターネットという電脳空間のなかだった。現実世界のなかで出会ったわけではないし運命というのは大袈裟かもしれないけど、やっぱり僕たちの出会いは運命だったんだとぼくは思う。

 

 そのころのぼくはものすごくつらい出来事が笑えるほど続いて、こころは荒みきっていた。

 東京で個人経営の飲食店を営んでいたぼくの家は、ぼくが高校2年のときに地獄になった。経営不振になり一日中閉まったままの店のシャッターを、サラ金の取立て屋が毎日のように叩いていた。父親の自殺をきっかけに、母方の祖父母が住む愛知に移り住んだのは、それから間もなくのことだった。もともと体の弱かった母はすぐに体調をくずし、半年もしないうちに父のあとを追うかのように市民病院で息を引き取った。

 それでも幸いなことに若年結婚だった曽祖父はまだ元気で、残されたぼくと二歳下の妹の真紀は特に不自由することなく生活できた。昔、母と母の兄が暮らしていたという二階の空部屋はそれぞれ、ぼくと真紀の部屋に変わった。 

 そんな嵐のような一年を終え、ぼくは高校3年に、真紀は高校1年になっていた。

 高校生活では気の合う友達もできたし、また男子校ではあったが彼女も出来た。友達の紹介で知り合った志乃という子だった。志乃は近くの女子高の生徒で、同じ女子高に入った真紀の先輩にあたった。何度か家にも連れ込んだこともあって、曽祖父や真紀に紹介したこともあった。気さくだけどとてもやさしい子で、人の悲しむ顔を見ることを嫌った。そんな性格なだけに、あの日のあの一言は悩んだ末のものだったんだろう。

「おせっかいになったら、ごめん・・。こないだ学校で真紀ちゃんを見たんだけど・・・周りの子たちにいじめられてたように見えたの・・。それで部活の一年の後輩にきいてみたんだけど・・・やっぱりそうだった。クラスでも孤立してるみたい・・」 

 今までに見せたことのない程悲しい眼をしながらこぼした一言だった。

真紀は父親の血を忠実に引いていたのだろう。

 志乃に真紀のことを聞いた日から一ヶ月も経たないうちに、真紀は死んだ。自殺なのか事故なのかはわからなかったが、ぼくは真紀に何もしてやれなかったことを後悔した。真紀を傷つけないようにと思い、普段どおり振舞ったぼくの選択は結果的に間違いだった。曽祖父は真紀の短かった人生を嘆いていたが、真紀にとってこの高校1年の八ヶ月は途方もなく長かったのだとぼくは思った。

 家族をすべて失ったそのころは大学入試まであと二ヶ月残すのみの、周りはもっぱら受験モード全開といった時期だったが、ぼくには関係のないことだった。曽祖父は金のことは心配いらないからと念を押してぼくに大学進学を勧めたが、大学に進むことは最初から考えていなかった。

 志乃とは受験勉強に専念したいからと嘘をついて別れた。彼女を悲しみのはけ口にしたくはなかったし、なにより恋愛というものを続けていく気にはなれなかった。

 三月。

 友達は、一人、また一人とそれぞれの進学した大学のある地へ移り住んでいった。この地を一番最後に離れていった友達を見送ったのは、三月ももう終わろうとしている日だった。


 その日、ぼくは千枝と出会った。

初投稿です。

続きも頑張って書きたいです。(どのくらいの長さの話になるかわからないけど)

文章、文体の稚拙さは大目に見てやってくださいな。

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