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出発【本編終了】

温かい朝の光が差し込んでいた。

いつもと同じはずの景色。

けれど少しだけ違う空気。


孤児院の中

沢山の子供たちの前にエレンシアが立っていた。


隣にはカリナ

少し離れた場所にはユリアスがいた。


エレンシアは静かに口を開く。


「皆さんにお話があります。」

その一言で子供たちが一斉にエレンシアを見る。

院長も穏やかな表情をして見ていた。


息を少し吸って吐いてから

「私…、」

「この国を離れて、エトランテ王国へ行くことになりました。」

ざわついた空気になる。

子供たちの表情も変わっいく。

「え…?」

「ここを出ていくの…?」

「ここにはもう戻ってこないの…?」

小さな声が次々に重ねってくる。

エレンシアは一人一人を見る。

そしてゆっくりと頷いた。

「当分、戻ってくることはないと思います。」

しばしの沈黙。

すると、エレンシアの前にいた女の子が

ぎゅっとエレンシアの服を掴む。

「行かないで…っ」

女の子が泣きながら呟いた瞬間

他の子供たちが次々と声を上げる。

「お姉ちゃんがいなくなるの嫌だ…!」

「行かないでぇ…!」

小さな手が、エレンシアに触れる。

引き止めるように。


胸が締め付けられるのと同時に

涙が溢れてきそうになる。

何とか堪えて、子供たちの前にしゃがみ込む。

「…ごめんね。」

「でもね、」

優しく子供たちを見つめる。

「私ね、少しだけ

自分のために生きてみたいの。」

どこかぎこちない言葉。

けれどしっかりと自分の意思がある。


子供たちは涙をポロポロと流しながら

エレンシアを見てしっかりと聞いている。

「ここで過ごした時間は、」

「私にとって宝物。」

「ありがとう。

あなたたちと出会えて本当に良かった。」

涙がポロリとエレンシアの目から零れ落ちる。

子供たちは、エレンシアにくっついて泣いていた。

その時、院長がエレンシアの前にやってくる。

優しく穏やかな声で言う。

「行きなさい。エレンシアさん。」

エレンシアは顔を上げる。

院長は優しく微笑む。

「あなたはここで十分、休みました。」

「そして沢山の、優しさをこの子達に与えた。」

エレンシアの隣にしゃがみ込み

優しく肩に両手を置く。

「今度は、あなたが幸せを見つけに行くのです。」

その言葉にエレンシアの瞳が揺れる。

院長は続ける。

「大丈夫。」

「この子達はあなたから学んだことを

忘れませんから。」

子供たちは涙を拭いながらも何度も頷く。

「…元気でね。エレンシアお姉ちゃん。」

「また…ここに来てね。」

「エレンシアお姉ちゃんのこと絶対に忘れないから。」

エレンシアの胸の中がいっぱいになる。

そしてもう一度、子供たちを見る。

「ありがとう。皆。」

「どうか元気でね。」

子供たちが一斉にエレンシアに抱きつく。

エレンシアは涙を流しながらも微笑んだ。


やがてお別れの時間がやってくる。

エレンシアはゆっくりと立ち上がり、離れて

遠くで優しく見守っていたユリアスの所へカリナと一緒に行く。

その時

「エレンシアお姉ちゃん!」

子供たちの声が聞こえ、振り向くと

子供たちが手を振っていた。

「元気でね!!」

その声が響き渡る。


エレンシアは微笑みながら、

強く頷いた。




馬車が動き出す。

窓の外を眺める。

段々と小さくなっていく孤児院と手を

振り続ける子供たち。


エレンシアはその光景を見続ける。

胸が少し痛い。

でもそれ以上に温かい。


エレンシアは口にする。

「行きましょう。」

その声はもう迷っていなかった。



馬車は進む。

新しい国、未来へと。


悪女と決めつけられ、全てを失った

"令嬢"はもういない。


ーーーー本編、完ーーー


読んでいただきありがとうございます。

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