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授かったスキルが『最強』~スキルに『最強』以外の説明がないが、なんかすごい件。知らんけど~

掲載日:2026/06/16

スキル付与の儀。

神官が水晶を頭上にかざしながら言った。


「そなたのスキルは『最強』!」


周囲がざわつく。


ざわっ……ざわっ……。


「最強だと?す、すごい」


「あぁ、最強はすごい」


「すごいな。最強とは」


「そりゃすごい。なんたって最強だ」


ざわっ……ざわっ……。


最強……確かにすごい。

自分の手を見つめ強くにぎりしめる。


でも、確かめたいことがある。


僕は顔を上げ神官に尋ねた。


「神官様。最強とはいったい……」


「すごいな」


「あ、はい。ありがとうございます。それで、最強とは……」


「よかったな」


「え、えぇ。それで……」


「すごい、よかったな」


その日はそのまま帰された。


---


父さんとの帰り道。


「いやー鼻が高いよ。まさかお前のスキルが最強だなんて」


「父さんは『最強』ってスキル知ってるの?」


「知らん」


「え?でも今、鼻が高いって」


「いや、『最強』というスキルは知らんが最強という言葉は知っている。なんだ、お前は知らないのか」


「知ってるけど……」


「なんだ。知ってるんじゃないか『最強』」


「……」


いや、だから何なんだよこのスキル!


---


次の日、家の外から声が聞こえて来た。


「村人たちよ!王のおなりである!出迎えよ!」


窓から外を見ていると、村の皆が家からぞろぞろと出てくる。


ざわっ……ざわっ……。


「なんだ?」


「なんだなんだ?」


僕も父さんと一緒に外へ出る。

二人で並んで立っていると、王様の側近らしき人と目が合った。


「お前が、『最強』のスキルを手にした者だな」


「え、もう知っているんですか」


「うむ、お告げがあったのだ。『最強』のスキルを授かる者がこの村に現れると」


「でも、なぜそれが僕だと?」


「スキル透視で見たのだ。大きく『最強』とだけ書いてあって分かりやすかったぞ。助かる」


助かるんだ。


「な、なるほど。……あの、厚かましいことは承知の上で、お願いがあるのですが。よろしいでしょうか」


「うむ、申してみよ」


王が答える。


「最強とは一体どういったスキルなのでしょうか」


「知らん」


王が答える。


「お前は知っておるか?」


王が側近に尋ねた。


「いえ、私も存じ上げません」


「だが、最強なのであろう?」


「はい。そう記されております」


「ならばよい」


えっ!?いいの!?


「最強か。すごいではないか!!」


「まったくもって、そのとおりでございます!」


村人たちが歓声を上げる。


わーっ!わーっ!


なにこの何も起こってないのに何かが解決した感じ!


「では『最強』よ」


名前、聞いてくれないんだ……。


「お前を王都へ招待しよう」


「え?王都ですか?」


「うむ。最強だからな」


それは、理由になるのだろうか?


村人たちがお祭り騒ぎだ。


「おい!聞いたか?王都だってよ!」


「なんてこった!さすが最強だな!」


「あぁ!最強と言えば王都だからな!」


「そうなのか?王都だから最強なんじゃないのか?」


「知らん!」


え?僕ってこんな村で生まれ育ってきたの?

なんかヤダ!


ポンと肩に手を置かれる感触。

振り向くと父さんが泣いていた。


「父さん!?」


「ぐっ、うぐっ、立派に、なったな……」


「そうかな!?その反応であってるのかな!?」


「知らん。とにかく、行ってこい息子よ。あ、『最強』の息子、だったな」


父さんが笑顔で親指を立ててくる。


ちょっとイラっとした。


「では『最強』殿、こちらへ」


名前を聞いてくれない兵士に案内され、馬車に乗り込んだ。


「あの、一応ですが僕の名前は――」


バタムッ!


言い終わる前に扉を閉められてしまった。


「どうして、こんなことに……」


……

…………

………………


「こうして、かの『最強』の物語がはじまったわけじゃな」


夜の森。

焚火の前で老人がこどもたちに昔話を語っていた。


「へぇ~、すごいや……おじいちゃん、それでその『最強』って――」


「知らん」


「じゃあ、主人公の名前は――」


「知らん」


「え、何なの、この話――」


「知らん」


おわり

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