ズル
銀鉱石を地面に並べる。
数は十個。全部、質の悪い安物だ。普通なら精錬してもロクなインゴットにすらならない。
「……で?」
フロールの声は落ち着いている。だがほんの僅か、探るような間があった。
「見るだけでいい」
俺はそう言って、鉱石に手をかざした。
魔力の流し方なんて知らない。けど、“こうすればいい気がする”っていう妙な確信がある。
転生特典か、それとも――元な○う作家の勘か。
「……集まれよ」
ぼそっと呟く。
すると、空気が変わった。
目に見えない何かが、鉱石の周りに“溜まる”。
フロールが初めて、わずかに息を呑んだ。
「……魔力の収束……? ですが、その制御は――」
無視する。
集中するのは一点。
“ミスリルになる瞬間”。
条件なんて曖昧でいい。どうせこの世界は“そういうノリ”で動く。
だったら逆に利用する。
――ミスリルとは何か。
高純度金属に、異常な魔力が干渉した結果生まれる“変質体”。
なら。
「変われ」
その一言でいい。
次の瞬間。
ピシ、と音がした。
銀鉱石の一つに、亀裂が走る。
中から覗いたのは――淡い青銀色。
明らかに、ただの銀じゃない。
「……おい、これ」
手を伸ばす。
触れた瞬間、頭の中に声が響いた。
《ミスリルを1g入手しました》
――きた。
思わず口角が上がる。
「やっぱりな」
振り返る。
フロールは、沈黙していた。
いつもの機械みたいな即答がない。
数秒。
いや、体感ではもっと長く感じた。
そしてようやく、口を開く。
「……確認しました」
声はいつも通り。だが、その奥にわずかな“揺らぎ”がある。
「当該行為は、“採取”として正常に認識されています」
「だろ?」
「……はい」
間。
「本来、ミスリルは自然環境下で長い年月をかけて生成されるものです」
「でも今は違う」
「……はい。違います」
フロールはそこで一度言葉を切った。
そして、ほんのわずかに――柔らかくなる。
「荒木裕太様」
「なんだ?」
「あなたの手法は、既存の枠組みでは説明が困難です」
「つまり?」
「――天才的です」
空気が静まる。
やけにあっさりした一言なのに、妙に重い。
「……マジで言ってる?」
「はい。創造神の眷属として断言します」
フロールは続ける。
「この方法は、理論上“再現性”があります」
「ってことは」
「はい。ミスリル1000gの収集は――」
ほんの一瞬だけ、ためらって。
「達成可能です」
ニヤッと笑う。
「最初からそう言えよ」
「いえ。通常は不可能ですので」
「でも俺ならいける」
「……はい」
わずかな間。
そして、はっきりと。
「あなたなら、可能です」




