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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節・裏
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【黄金の教示たち】2

     ……………


 高度数千メートル、遥か上空を超音速で飛行する影。

 栄光のジュンが戦闘機を超えた速度で【隠者の薔薇・華北支部『梁山泊』】へと帰還していた。

 その身体には痛々しい傷が残るが、致命的なものは無い。

 彼はやや苛立ったようすで『魔術結合による通信』を行っている相手、『勝利ネツァクのカリオストロ』に不満を吐露する。


「また今回も不完全燃焼だ。しかも今回は完全にキミの【物言い】だぞ、カリオストロ。

 戦略はキミの仕事であり、ワタシは盤面の駒であることは理解しているが、それでもワタシはワタシなりの意志が、流儀がある。

 今回ワタシを引き揚げさせた、それなりの戦略的理由とやらを聞かせてくれるかな?」


 通話の先の、鼻につく優雅な様子の声は、その言葉を待っていましたとばかりに流麗な言葉を流してくる。 


『もちろん、勿論ですよ。

 それに、アナタが単なる駒だなんてとんでもない。戦況をひっくり返す最終兵器。終末ハルマゲドンの化身のような方だ。荒ぶる怒りを抑えるべく、私は全力で説明いたしましょう。

 さて、【今回なぜ、真なる鍵である鳥羽或人の回収を断行しなかったのか】に対する理由としては大きく三つございますが、そのうち二つはまぁ、なんと言いましょうか……。お楽しみ(サプライズ)ですので今のところは共有しかねますな……。

 ですがワタクシの()()()を示すべく残る一つの理由につきましては納得できるものをご提供いたしますよ』


「――誠実さ、ね。ククク、『隠者の薔薇(ユダヤ系神秘主義結社)の幹部』として『|アーネンエルベ《ナチス・ドイツの残党組織》』と取引するキミの誠実さとやらを見せてもらおうか」


『ええ、きっと納得していただけますとも。

 まず結論としましては【時期尚早であるため】と言ったところです。

 【復活】のための【準備】が整っておりません。これはこちらの準備もありますが、()()()()()()()()()も整っていない為です』


「そんなのは捕まえてからコチラで整えれば良いんじゃないか?」


『それはコチラの準備が整っていないため労力と時間を多く空費するととなり、相手方(秘匿保障委員会)による計画的な攻撃を誘発するでしょう。

 向こうから特異(有穂歩)特異担当(金剛破戒居士)を同時に二人以上派遣されれば我々は確実に敗けます。

 そして、【真なる鍵】を魔力的に長期間隠すことはほぼ不可能。

 たとえ結界術の世界最高峰に近しいアナタが張った秘匿結界であってもあの魔力は抑えきれないでしょう』


「――そんなに『準備』へ時間がかかるというのかい? キミの以前の話ぶりでは今年中に、早ければ半年内にすべて終わると言ったハズだよ」


『いまのは飽くまでも、【ここで真なる鍵を奪取した場合】の話です。

 我々は【|組織内部からの反発《王冠のヨトゥムによる派閥》】と【外部からの侵攻(秘匿保障委員会)】の二つに晒されることになるので準備が手間取る。

 なのでそういう役回りは最後の最後まで【彼ら魔界府】へ押し付けておくのです……。

 そして【準備】は今回のような形で進めてゆけば年内にも事が済むでしょう』


「なるほど……。今後も【手詰め】の段階に入るまでは奴らにちょっかいを掛けてゆくカンジになるのか……。

 ――ちなみに、他二つの理由はちょっとでも教えてくれないのか?」


『フッフッフッフ……。良いでしょう、サプライズの予告はより一層楽しく、待ち遠しくなるものですからね。

 他二つは連動しております。【陽動ブラフ】と【布石】……。

 我々【真なる信徒】が内外の敵を屠り、利用し、遠ざける……。そのための最高の下準備ですよ』


 栄光のジュンはニヤリと笑い、語る。


「ククク……。良いねぇ、『利用するための陽動と布石』。経済人としてこれほどまでに心躍る言葉は無いね。

――ワタシは()()()の理想に興味はナイが、キミ達の勝利はつまり、ワタシの財布が潤うことだからネ。

 精々、頑張ってもらわねば困るよ」


『勿論ですとも。支払いは滞りなく続きます。

 早速、今回の分をお支払いしておきました、明日にでも届くでしょう……』


「それは重疊……。火傷した甲斐があるよ……。では、また」


『ええ、またすぐにでも』


 通信は終了。

 同時に栄光のジュンは地上へと降下を開始する。

 彗星の如き熱の中、彼は癒え始めた自らの傷をその熱さに晒し、しかし笑みを浮かべていた。


――張り合いのある相手とまた幾度も戦える……!

 カネも手にはいる……!

 そして、『勝利の感覚』も……。

 ククク……。撤退も悪くないかもね。


 栄光のジュンはそのまま、速度を下げつつ、自らの拠点たる、結界によって秘匿された地下基地へと降下してゆく。

 彼の身体は喜びと期待に満ち、魔力はその呪いの力に鳴動していた。

 次なる破壊を求めて。

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