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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節 【兵器人間は人の夢を見るか? Do cyborgs dream of human ?】
64/69

特異

     ……………


『ドガァアアンッズザザザザァアアッ!』


 衝撃。

 或人と有馬の目の前に賀茂瀬里美が叩きつけられ、地面をえぐって滑り込んだ。

 

 有馬は叫ぶ。


「来たかッ!」


「遅い」


 背後の栄光のジュンは有馬の首筋へ突きを叩き込む。


『ジャリィッ!』


 有馬の鎖の一本がひとりでに動き、彼を守る。他の二本の鎖が栄光のジュンの手足へ絡みつく。


『ズガァンッ!』


 衝撃波と共に栄光のジュンは動き、有馬の腹へ突くような蹴りを繰り出すとともに鎖を回避する。

 同時に、彼の瞳は賀茂瀬里美が叩き込まれた地面へと向く。

 彼女が起き上がりつつ無詠唱魔術を発動していたためだ。

 魔術結合が光の速度で栄光のジュンへと付着。ほぼ同時に発火。


『ドガァアアアンッ!』


 栄光のジュンは範囲の絞られた爆破を耐える。だが、賀茂の攻撃の手は止まらない。


『ドガガガガガガガガッ!』


 起き上がった賀茂は爆発音の直後、眼前に栄光のジュンによる拳が現れたことを察する前に顔面に一撃を食らいまたしても後方へ吹き飛んでいく。


『ズドガァアアアアアアアアアンッ!』


 その攻撃の隙を取らんとばかりに二本の鎖をまとった有馬が突進。

 だが、栄光のジュンは周囲の地中から飛び出し同時に奇襲をかける二本の鎖の攻撃を『或人との出会いにより成長した予知能力』で察知。無数の残像を残しながら有馬の背後へ回り五発の拳を彼の背中を添うように叩き込み、地面へとめり込ませる。


『ズドガガガガガッ!』


「アァアッ!」


 全身の骨にヒビが入った激痛を有馬は受け、声を漏らす。

 栄光のジュンは有馬の鎖で守られた背中を踏みつけながら見下ろす。


「やはり……。第一級程度、他愛もない。

 そこの女も魔力の操作がそこまで達者ではない。術式はさすが【無詠唱使い】、洗練されているが、身体能力に欠ければただのジリ貧だ」


 そう言って彼は或人の方を見る。


「――ほう、面白い目をしているねェ。向かってくるほどの度胸が、この状況で出せないのかなぁ?」


 或人は今までの一連の戦闘速度に、ついて行けるわけがないと理解していた。数秒の間もなく有馬、賀茂が何度も倒れ、そして何度も立ち上がる。

 立ち尽くし、自身の身体の硬直を彼は何度も恥じる。


 そして、栄光のジュンによる嘲笑は、彼の最後の一歩を踏み出させた。


「……」


 或人は油断しきった様子の栄光のジュンへ彼は魔術を試みる。


――金剛さんから学んだ魔術は二つ……。『神経操作術』と『力学操作術』。前者は賀茂さんにも通じたが、奇妙な思考が僕の中に走り、『無詠唱』となった。

 僕の『死』の時と同じ声がしたんだ。それが不安だ……。

 僕の意志とは無関係な存在が『介入』するような感触……。

 また、あの術をやって、またあの声が来た時……。僕の想定もしていないことが起これば、バカな僕はまた打ちひしがれてしまう。

 なら、確実性は下がるかもしれないが……!

 力学操作術の術式は……。


 しかし、彼の思考に『声』がさしはさまる。或人の不安は回避しようがなかったのだ。


――『すべての動きを意味するもの。熱と力の境のもの。知恵と言葉の境のもの。切り裂け、抉れ、破壊せよ』


 栄光のジュンはその瞬間、或人の放つ『敵意』の高まりを察知。

 彼の腕に呪いの力が溜まりつつある瞬間に動き出す。

 だが、或人の腕からは彼の『呪文詠唱』が始まるよりも前に、力が噴き出す。


『ズドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!』


 魔術結合が光の如く吹き出し、それに続いて突風のような力が或人の手より噴き出していく。それは純粋な『チカラ』。押し出し、突き刺す鋭い力。

 レーザービームのごとく迸るチカラ。栄光のジュンによる回避は不十分。彼は肩を撃ち抜かれる。


『ドグチャァアアアッ!!』


 栄光のジュンの肩をえぐり、骨を露出させる。

 数十トンもの投下型爆弾を何十発と食らおうとビクともしないであろう彼の肉体がえぐり取られた。


「何ィイッ!?」


 百戦錬磨、自身の肉体的強度と速度を把握している彼は当然の驚愕を得る。

 さすがの彼といえど、この強度、この破壊力を持った無詠唱魔術を受けたことはなく、対応へ全神経を即座に集中させ始める。


――ワタシの予知と感知に引っかかるのはありがたいが、反応速度を最大限に高めなければ、一瞬で全てを『持っていかれる』……!

 だがそれよりも……。

 単純な力学操作術。だというのに『魔術結合』が読めない……!

 解読不能。言語的な特性も不明。そもそも言語なのか?

 『介入術』による威力の低減や無力化は不可能。


 彼はその事実を整理するとともに、にやりと笑う。


「面白い……。私の成長した予知を最大限引き出せる相手さえも、キミは用意してくれるとは……。ますます感謝しかないね」


 栄光のジュンの魔力がほとばしり、彼の背後より『腕』が沸き上がる。

 

 対する或人は攻撃の成功に反し、焦りを覚えていた。


――くそっ……! 金剛さんと練習していた時には起きなかったことがまたしても……!

 僕は僕の制御下にない……!

 またしても、僕が暴走するかもしれない……!


 だが、彼の決意は固い。


――それならば、僕は、そうならないように最大限努力するだけッ!

 そうしなければ、有馬さんも、賀茂さんも、増田さんも、全員死ぬだけだッ!

 死ぬ気で死なないように、戦うんだッ!


 彼の決意に満ちた意志を邪魔するかのように、栄光のジュンは衝撃波と残像を表して目にもとまらぬ速さで動き出す。


『スパァアアンッ!』


 或人の背後を取ったジュンは手刀による一撃を或人の無防備な首筋へ叩き込む。

 だが、或人は振り返り、攻撃を見る。


「!?ッ」


 或人による予知能力は超音速の攻撃にさえも対応。

 彼の魔術が栄光のジュンを襲う。

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