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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節 【兵器人間は人の夢を見るか? Do cyborgs dream of human ?】
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意識と害意

     ……………


 或人は敵の様子に困惑する。


――なんだ……?

 なぜ動かない……?

 ただ呆然と……。遠くを眺めている……?


 人狼バルトルト・ホーフェンは意識を取り戻してなお、一歩として動かず、ただ黙って立っていた。

 彼に何が起こったのか。或人の『感知』は何となくそれを伝達する。


――何も無い……。意識を取り戻して覚醒している人間とは思えないほどに、この人狼から何も感じられない。さっきまでの霊体から感じられた無数の感情……。いや、金剛さん達が言う『呪い』が、全く感じない。

 生きているのに、死んでいるようだ……。


 バルトルト・ホーフェンは精神的負荷に耐えきれなかった。

 幽鬼の魔術によって結合された複数の霊魂。それらは彼の記憶や神経そのものを掻き混ぜ、乱した。それが肉体にも適用され、彼は混沌の中で脳をはじめとした様々なものを喪失し、一人で歩き出すことすらも忘れた。


 再起不能である。


 或人は彼の退場を覚るとすぐに怪人の向かった先へ意識を向ける。

 怪人はすでに次なる兵器人間へと狙いを定めていた。砲弾を生成し発射する【野戦砲人間】が放つ砲弾の爆裂を軽々と避けながら、怪人はその鋼鉄の義手の内側から【回転のこぎり】が現れ、野戦砲人間へ一気に距離を詰める。


 そこへ、或人の声が響く。


「地面だッ! もう一体!」


「アギッ……!」


 怪人はその言葉を聞いてか、駆け抜ける最中で地面を蹴り跳躍。


『ゴギャガガガガガガガ……!』


 次の瞬間、その先の地面が盛り上がり、音を立てて回転する円錐形のドリルが二本出現、あのまま怪人が進んでいればその二本のドリルの間に足を取られていただろう。


 そのまま、怪人は着地、そして足首をぐるりと回転させ、身体の向きをドリル人間の方へと向けるとそちらへ飛込む。


「ギャシャアアアッ!!」


『ガギィイイイイイッ!!』


 地中から飛び出したドリル人間の腹めがけ、両腕の回転ノコギリを突き出した怪人。刃は相手の黒革のコートをズタズタに引き裂き、内部の鋼鉄装甲を魔力と共に削りねじってゆく!

 だが、相手には痛覚など無いのか、ドリル人間は天に突き上げていた両腕の大型掘削ドリルを怪人の頭に振り下ろす。


()()()からだ! 向かって左へ避けろっ!」


『グゥンッ!』


 またしても或人の指示が届いたのか、怪人は指示通りすばやく動く。

 ちょうど次の瞬間、ドリル人間の両腕による歯車的小宇宙の破壊が振り下ろされ、地面に激突。


『ギャラギャラギャラギャラギャラァッ!!』


 さしもの破壊力。

 しかし、この攻撃だけなら怪人にとって防御可能なレベル。わざわざ攻撃機会を失ってまで回避する攻撃ではない。

 そう、或人の感じ取ったのはその攻撃だけではなかった。


『ズガアアアアン!!』


 砲弾の炸裂。

 もう一体の野戦砲人間がその場にいる味方・ドリル人間をも巻き込む砲撃を撃ち込んだのだ。


 仮想物質により生成された砲撃は先ほどから怪人が避け続けるもの。或人が先ほど直撃した際に彼の魔力防御をぶち抜いて火傷を負わせた威力。

 怪人にとって致命打になり得るのだ。


 そして、この急応ながらみごとな連携をした或人は確信する。


――こちらの言葉を理解している動きだ。やはり増田さんは自我を取り戻している……?

 彼から感じられる混沌とした感覚も収まりつつあるように思える……。


 或人は怪人のもとへと駆けながら、そう考える。

 彼は自分に向かってくる野戦砲人間の砲弾を軽々と回避しつつ、みずからの広範な感知能力を利用して戦況を把握する。


――先ほど増田さんが倒した『ノコギリ人間』はダメージこそ多いものの、再起しようともがき始めている……。

 あの砲弾を撃つ『野戦砲人間』と感知の届かない地下を進む『ドリル人間』、片方だけならどうにかなるけど……。

 本当に同時に来られるとかなり不味い。

 更にノコギリ人間まで来られるのはダメだ。

 僕が、どれか一体を『無力化』する必要がある!

 

 そして或人はドリル人間が地下へと潜ろうと動き出しているのを察知。野戦砲人間の砲撃準備も感じ取る。


 野戦砲人間の砲撃準備、それは見るもおぞましいものであった。

 自身の頭部を切り離し、両腕を一つの砲身としたものの中へ入れ込むのだ。切離された首からは血ではなく黒いオイルのようなものがわずかに漏れる。

 ぬらぬらとして光るそのオイルには死んだ者の血のような薄気味悪さがあった。


 そうして元々頭部のあった場所には『仮想物質』の頭部が再構成され、同時に狙いすました地点へと『砲弾』が発射される。


『ドゴオオオンッ!』


 両腕の砲身の底、文字通り『両脇』に着けられた噴射口より砲撃の砲火が噴出。砲身から砲弾が飛び出して、ある地点へと向かう。


 或人はその砲撃に違和感を覚える。


――()()!? 着弾地点が増田さんや僕ではなく、ずっと後ろ……?


 困惑する或人は感知によってその着弾地点を探る。そして、踵を返し、頭上を通過しようとする砲弾へ向けて飛び上がる。


「止めなくちゃ、マズい!!」


 砲弾の着弾予定地点は遥か先、賀茂瀬里美が暴れる地点。

 彼女をおびき寄せ場面に混沌をもたらす算段である。


――今までの様子から言って、彼女が僕や増田さんを狙うのはほぼ確実!

 奴らはその隙に

 有馬さんが身体を張って引きつけているのが無駄になる……!

 僕を信じ、身を案じてくれた有馬さんを裏切るわけにも、行かない。

 それに賀茂さん、瀬里奈さんがコントロール不能とは言え増田さんを殺してしまうようなことは、絶対させちゃいけない!


 或人は決断的に砲弾へと飛翔。体当たりで受け止めようとする。

 だが――


『キュイイイッ!』


 砲弾が突如、横回転。砲撃軌道が逸れる。


――何!? 初めてだ、今までこんな動きをしたことは無い。砲撃の軌道が逸れた!?

 賀茂さんの方向とは全く違う、まさか――


 或人は砲弾となっている『頭』が表情を示しているのを発見する。頭部を覆っていたフルフェイスヘルメットのようなものは発射時の爆風で吹き飛んだらしい。

 その顔はニタリとしたり顔で笑っていた。

 嘲笑。

 或人は完全にハメられたのだ。


 その頃、怪人の元へ地下を潜航するドリル人間が近づいていた。同時に野戦砲人間が砲撃を用意している。

 盤面は兵器人間たちの勝利へと動き始めていた。

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