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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節 【兵器人間は人の夢を見るか? Do cyborgs dream of human ?】
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防護

     ……………


「ウウ……! ウグァァアアアアアッ!」


 軍人が持つ機械によって操られ、錯乱したような様子の怪人。彼に向け、取り囲む三体の黒い改造人間たちは一様に【捕縛術式】を試みる。魔術結合が怪人の装甲に、肉に、へばりついて食い込み、動きを制限する。

 籠の中の鳥、怪人は為す術もなく捕らえられ、身動きできなくなってしまう。


 それを見かねた者が一人、居ても立ってもいられずに改造人間の一体へと殴りかかる。


 松谷である。


「クソッタレッ! この、時代錯誤のコスプレ野郎! ヤツを捕まえたけりゃ、まず俺を狙えっ!」


 改造人間はその蚊ほどの意味もない攻撃を無視しながら、捕縛術式を続けている。だが、人狼の軍人は違った。

 彼は或人を残し一瞬で地面を蹴り、飛び込むような勢いで松谷に向け鋭い爪を振り下ろす。


 或人はそれを追おうと飛ぶが、間に合わない、彼の叫びが響き渡る。


「松谷さん!!」


『ガキィイイン!』


 人狼はその爪を受け止める存在を見て、驚愕する。


「何っ!? 貴様……!」


 そこに立つのは攻撃を片手で受け止め、松谷を守るように立つ【怪人】の姿。魔術による拘束など、張り付いた魔術結合から肉や装甲を引きちぎり、無理矢理にここへと来たのだ。

 松谷は突然現れた怪人の姿に、声を上げる。


「アンタ……。戻ったのか……?」


「あぎ……。私は……。お、おれ……。知らない……。ま、まつ……。アガガ……。グ、ギ……」


 変わらずの答え、だが、松谷はそこに希望を見出す。


――そうだ、『死んではいない』。さっき有馬たちは確かにそう言っていた。やはり、記憶を刺激したりする事に何か効果があるはずだ。

 この行動は、『増田太郎』によるものだ。

 俺にはそう思える。そう感じられる。

 ジジイの話に出ていた、仲間を想い、戦いを憎み、上に怒り、自分を犠牲にできる人の行動だ。

 攻撃の迫る俺の前に自らを躊躇なく差し出せる人間の行動だ。

 なら、俺がやるべきことは……。もう決まっているじゃあないか。


 松谷はすぐに駆け出す。怪人へ言葉を残して。


「必ず戻る。戻った時にはハッキリさせてやる! お前が何者であるかをな!」


 その言葉に反応するように怪人はみなぎる魔力を操り、動き出す。

 人狼の爪を押し、凄まじい膂力を発揮し始めたのだ。


「クゥウァッ! この、魔力……! お前らっ、掛かれッ! あの無能者(非魔術師)を殺せッ! この不良品(出来損ない)を捕まえろッ!」


 号令により、3体の黒いフルフェイスヘルメットをしたような改造人間たちが一斉に動き出す。


 その金属製の腕は液体のようにうごめき、各々が回転ノコギリやドリル、砲門へと姿を変えた。

 そして二体の改造人間は、抵抗する怪人へ、残る一体は松谷へ、その腕の兵器を差し向ける。


「くっ!」


 松谷が振り向くとそこには腕を近代的砲門へと変えた改造人間。火砲による砲撃が松谷を狙う。


『ドガァアアン!』


 砲門のマズルブレーキから爆炎が噴射する。砲弾は魔術により質量ある『仮想物質』として生成されたもの。常に魔術結合によって魔力を供給されながら、松谷の元へと飛込む。


 『怪人』は二体の改造人間に阻まれ、有馬は栄光のジュンに縛られ、賀茂も式神もわずかに遠すぎる――かくして無防備な松谷の元へと砲撃が当たる。


『ザッズガアアアアン!』


 爆発音。

 しかし、爆炎が松谷を包むことは無かった。

 全て砲弾を抱えるように覆った、或人の元で炸裂したためだ。


「或人……! お前……!」


 或人の身に着けている強靭な秘匿課向けスーツでさえ、腹部が痛々しく融け、或人の皮膚が表面だけながらも焼け焦げていた。


 だが、彼は痛みに冷や汗を流しながら松谷に言った。


「松谷さん……! 早く行ってください……! 進路は僕が守護(まも)ります……!」


 そう言う彼の腹は既に癒え始めていた。それは異常な魔力による驚異的な作用か、或いはもっと別の何かか。


 とかく、松谷は走る。


 全ての時が動き出すように、改造人間たちや【栄光のジュン】らは一斉に次なる行動に移る。


『ゴシャアアアンッ!』


 松谷を守ろうと動き出した或人、そのすぐ隣の地面に人影が落下し大地を大きく凹ませた。


 有馬である。

 身体に鎖を巻き、なんとか攻撃から身を守ってなお、彼は半死半生ともいえる手酷いダメージを負って落ちてきた。


 それを見た或人はすぐに察する。栄光のジュンという追っ手が彼の背後に迫ることを。


「察しが良くても、遅い」


 或人の耳にその言葉が聞こえた瞬間、或人の元へと上空から激しい音と衝撃波、そして人体が飛来する。

 栄光のジュンによる或人の脳天を目指した蹴り。当たればひとたまりもない。


『ドギャアインッ!』


 だが、頭を抱えて守ろうとした或人の眼前に、二体の式神、そして賀茂の姿が現れる。


 ()()()()()間に合ったのだ。


 式神の身体は残る最大限の魔力防護も虚しく、軽々と貫かれ、賀茂の肩は防護護符などお構いなしに痛々しくえぐられて肉と骨があらわとなっていた。

 栄光のジュンによる攻撃を文字通り、『肉の盾』で防いだのだ。


 間もなくして式神は消え去り、賀茂の瞳も閉じる。


 生命の灯火が消えゆくのを感じ、栄光のジュンはせせら笑う。

 

「一人目……。【日本魔界府の秘匿一課】、【最も危険な違法魔術師狩り】と称されるモノでもこんなものか、他愛もない……」


 そして、賀茂は目覚める。


「よくやってくれるじゃない……! 楽しめそうで何よりね!」


「!?ッ」


 驚くジュンを尻目に、賀茂瀬里美が不敵な笑みを浮かべ、魔術を紡ぎ始めた。


 えぐられた傷すらも、筋繊維一本一本がひとりでにうごめき出し、肉が再生してゆく。


 彼女の身体に溢れんばかりの魔力が満ち、力の本領が露わになってゆく。


 底知れぬ無邪気な力が刃を剥いたのだ。戦いは始まったばかりである。

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