間話 挿入歌2
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こんな、夢を見た。
暑い。
蒸し暑い密林だった。
俺たちは敵の砲撃を受けた仲間の身体が、バラバラに弾けるところ目の当たりにした後、何人もの男たちが小銃を持ったまま死んでいくところを見た。
武器も、装備も、もはや意味などないように思えた。
撤退の伝令の後、俺たちは生き残った者たちと共に歩き始めた。
一晩、二晩、ただでさえ飯は少なく。後方に戻ってもさらなる撤退。
行軍の中で負傷者は死に、押し下げられた前線でさらに死に、はぐれた時には飢餓で死ぬ。
それまでは運が良かっただけ。
そしてとうとう俺の番が回ってきただけだった。
「少尉殿。歩けますか」
「……。健吾。健吾か」
「俺が背負います」
血に濡れた視界の中で、健吾は俺の腕と足に包帯として布を巻き、そのまま俺を背負って後方へ離脱を開始した。
「健吾。置いていけ。俺は、もう、使えん」
「少尉殿はまだ生きている。少尉殿を見過ごして行けん」
息も絶え絶えにそう語る。
「健吾。お前まで死ぬことはない」
「……。『正しい人を陥れるのが世の常だ』あんたはそう言った」
「……。そうだ。だが、おれは正しくも無い。陥れられてもいない」
この前線にくる以前も、来てからも、俺はその惨状を見てばかりで、気が滅入りながら部下にそう愚痴ったものだ。そんな事を言ってしまう俺は『正しい人』では決してない。
「『だからこそ、その人を守れる人であれ』そう言ったのもあんただ」
「はは……。だからって今。死にかけ背負って共倒れか? お前。それは……」
「俺はその言葉をその時、信じたんだ。今も信じてる。明日も信じる。何十年後も信じる。俺の息子にも言ってやる。俺の孫にも伝え聞かせてやる」
「そうか……。死ぬなよ」
「言われなくても死んでたまるか。俺は帰ったら警官になって、今言った言葉をアンタも知らない奴にまで伝え聞かせてやるんだ」
「はは、いいぞ。そうしてくれ……」
そのまま健吾は、数十キロ離れた野戦病院に一晩中歩き詰めて俺を運んだ。
歩けなくなった俺はそのまま本土へ送還され、大病院で看護されることになったが、健吾は負傷も少なかったため、そのまま戦線に復帰していった。
俺はその後、あいつがどうなったか知らない。
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