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間話 挿入歌1
……………
こんな、夢を見た。
皆が寝静まった夜。俺はふと目を覚まして、居間に出た。電灯が点いていて、母が座っていた。母は寝間着が少し崩れていた。母はおれに気づくと少しぎょっとしたが、すぐにいつもの調子に戻っていた。
「〇〇〇」
俺には母の言葉がよくわからなかった。ふわふわとした優しさのある声だったが、何を言っているのかわからない。俺は無視をするのも嫌なのでああとか、うんとかの返事で誤魔化した。
「〇〇〇……。〇〇〇。叔父さんがね…… 〇〇〇、〇〇。雪が〇〇〇。〇〇……」
母は言葉を続けている。理解が淀んでいるように俺にはその言葉がほとんど伝わらない。誤魔化した返事がちゃんと話にあっているのかもわからない。俺は台所で水を一杯飲んでからそそくさと部屋に戻ろうとした。
「寝るの?」
母の言葉がやっとわかった。
「ああ」
「おやすみなさい。〇〇〇」
ああ、母の不明な言葉には俺の名前も含まれているのか。俺にはそれが何だか、妙に悲しかった。
「おやすみ。母さん」
俺はそのまま部屋に戻った。俺の部屋は皆の寝室から少し離れていた。
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