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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節 【兵器人間は人の夢を見るか? Do cyborgs dream of human ?】
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魔術六領域十三属性

     ……………


「えっ!? は、はいッ!」


 突然呼び出されて驚いた或人だが、すぐに了承する。


――やるしかない。姿が賀茂さんなので少し気は引けるが性格は全く違う、別人だ。

 あのまま有馬さんを殴らせてはいけない……!

 さっきの様に怖気づく訳にも行かない!

 ここで僕が何とかしないと!


そう言い聞かせながら彼は金剛に教わった『魔術の基礎』を思い出す。


―――――


「さて、先にも説明したように、『魔力』は術者が念じるだけ、思うだけで無限の効果を発揮する。しかし、その分『消費が重い』」


 金剛は寺院の広間にてホワイトボードを前に或人へ解説をしていた。或人が魔力操作修行をなんとか完遂した翌日の事。

 彼は右腕に魔力を込め、掌に炎を出現させながら話を続ける。


「このように炎を出現させるだけでも常人には難しいレベルの高度な魔力操作技量と魔力消費を要する。

 拙僧とて1Mマギアの消費で出力できる魔力操作の強度は約『5mt(ミリトン)』ほど、500g程度のガソリンを一挙に燃やした際に放出されるエネルギー量と同等か」


 そう語る彼は右掌を握り、出現していた炎を消す。そしてゆっくりとその手を開き『魔術結合』を紡ぎ出した。


「――だが、このように魔力で紡いだ言葉を以てすれば、同じ1Mマギアの消費で『20kt(キロトン)』という何千倍もの強度を実現できる」


 魔術結合より光がとびだし、次の瞬間、ポロリと小さな輝ける塊が金剛の掌に振り落ちてくる。

 それは金剛石(ダイヤモンド)の粒。金剛の魔術は空気中の炭素や魔力から生成された炭素へ高温・高圧を加え、人工ダイヤモンドを生成したのだった。


 或人はその光景に圧倒されながらも、心に留まった疑念を金剛へ投げかける。 


「どうやってこんな……。圧倒的な出力が実現するのでしょうか。ただ魔力で言葉を作り出しているだけで」


「なに、簡単な話だ。

 魔力とは遺伝子配列、脳のホルモン状態や電気の状態そうしたものから出力される感情といった情報量に伴うエネルギー。

 そして『言葉』は多くの人間が利用されることで成立する情報そのもの。故に多くの魔力を持ち、恒久的に増大させ続ける。それが宗教や信仰、祈りにまつわるものや一定の『論理』に基づくものならば更に莫大な魔力を持つ。――人間は『論理モノガタリ』が無くては生きてゆけないからな。

 魔術とは、『言葉』に蓄積された先人の信仰心、祈り、怒り、慈しみ、喜びなどの『呪い』を利用する事に他ならない。

 自らの脳裏に言葉を浮かべ、魔力で紡ぎ出すことによって更なる魔力を言葉から引き出し、出力する。それが魔術だ」


 金剛の右手にはまだ魔術結合が残されている。

 或人がその文字を詳しく感じ取ろうと感知能力を研ぎ澄ませると、そこにはダイヤモンドの組成式や人工ダイヤモンドの温度・圧力条件、様々な言語の呪文めいた文言が詰め込まれていた。


 彼がそのように金剛の説明を理解しはじめる中、当の金剛はホワイトボードに正六角形をフリーハンドで正確に描画し各頂点へ一文字ずつ文字を割り振っていた。

 その文字は12時の方角から時計回りに『魔』『行』『力』『色』『態』『霊』とある。

 書き終えた金剛は或人に説明する。


「――魔術、魔力はどんな効果も発揮できる。だが、術者はそれぞれ『得意な効果』というものがある。

 この図は魔術の効果を大雑把に『六領域』として分類したもの。魔界では最も正当的(オーソドックス)な六領域分類法というものだ。

 情報や概念そのものを操作する『魔域』。

 魔術の条件や効果範囲、結界術、解呪法、呪物作成・使用に関わる『行域』。

 風や押し出すような力場を発生・操作する『力域』。

 電磁力やそれに伴う仮想物質や物質を生成する『色域』。

 熱と物質の状態を操作する『態域』。

 精神や幻覚、霊魂を操作する『霊域』。

 この六分類法に基づいて各魔術師の特異傾向を13種に分類した『傾向属性分類』というのを教えておこう。この分類は正六角形の各頂点を直線で結んだ際に生じる13の交点をそれぞれの属性に当てはめている。

 13番目の傾向属性は真ん中の中心点に置かれる」


「13種……。人間の適性というにはかなり少ない気がします」


「あくまで大雑把に分けただけだからな、人によって得意はさまざまだ。

 だが、不得意な領域の魔術効果を発揮するには得意な領域のそれよりも何倍か魔力を余計に消耗する。得意を大雑把にでも知っておくのは魔術師にとって大事なことなのだ」


「得意……。それじゃあ、僕の傾向属性もおしえてもらえるのでしょうか」


「勿論。或人殿の傾向属性は拙僧と同じ13番目『無限』と名付くもの。六種すべての領域を同じ出力効率(パフォーマンス)で発揮できる」


「ええ? それは……。今までの説明は一体……」


「――だが残念ながら器用貧乏だ。突出して得意のある傾向属性の魔術師の方が圧倒的に出力効率(パフォーマンス)が良い。何でもできて何でも中途半端といったところか。

 他の傾向属性を見ればわかる。

 例えば『魔域』『霊域』『行域』三種の属性に適性がある傾向属性『魔道』。これは魔域に当たる効果の魔術を最もよい出力効率で扱える。その効率は傾向属性『無限』の実に四倍。

 無限の者は魔道の者に比べ、魔域の同じ術式を操るのに四倍の魔力を消費するという事だ」


「――でも、僕の魔力量は……」


「その通り、魔力量や技量でカバーできればすべての属性を同じ出力で操れるこの傾向属性は実に強力。故に貴殿にはみっちりと、各領域の魔術と魔力操作を仕込んでいく。まずは浮遊術そして、次に……。そうだな、一つ二つは『戦闘向き』が必要であろう。ということで――」


―――――


 或人の脳裏には魔術の詳細、理論、領域が反芻し、発動の準備が着々と進んでいた。


――あの時、金剛さんに教わった魔術。

 浮遊術の後に必死で習得した、練習での成功率も十二分に高めてきた……。

 人間の脳内における電位差を発生させ麻酔効果を誘発する、『態域』『色域』に横断した効果を持つ術式『神経操作術麻酔物質生成術式』……!


 或人は呪文を唱える準備を始め、賀茂瀬里美へ向けた魔術結合を形成し始める。

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