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日本国魔界府府庁秘匿部秘匿室秘匿一課  作者: 臆病虚弱
第一章・第一節 【兵器人間は人の夢を見るか? Do cyborgs dream of human ?】
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間話 証言記録1

     ……………


「どうです? 少し落ち着きましたか?」


「はい……。すみません、私、取り乱しちゃって……」


「いえ、無理もありません。こんな夜中に、不審者に遭遇したんですから。もっと取り乱して暴れる人もいます。そう思えば、冷静な方だと思いますよ」


「そうですかね……。いや、でも……。今でも、私は……。その、信じられないというか……」


「大丈夫、動揺すれば人は妙な記憶を作るものです……。ですが、話すうちにそう言った記憶はハッキリしてくるものです。――話しても問題ないご気分でしょうか?」


「はい……。待たせるのも忍びないですし、大丈夫です。こちらもハッキリさせたいですし」


「なるほど、わかりました……。まぁ、肩ひじ張らず行きましょう。とりあえず早い時点での証言を聞きたいだけですから」


「ええ。――ええと、会社は、たしか19時半に退社して……。20時頃には駅を出ています。ちょうど電車があったので。それで……。

 そう、駅のコンビニに寄って、それから帰り道にさしかかったんです。たぶん、そこから五分くらい歩いて……。20時15分くらいですかね。

 住宅街ですけど、ちょうど山道も近いところなので人通りが少ない道もあって――あの道、暗いんですよね街灯が少なくて。そんな場所だからなんですかね、最近珍しくなってきてる蛍光灯の街灯なんですよ、そこ。

 それで……。あの、すみません、こんな調子で大丈夫なんですかね、証言って……?」


「ええ、いい感じですよ。スルスル話が出てきているんで。他の刑事はどう言うのかは知りませんが、私はこういうラフな方がいいと思ってますから。この調子です」


「そうですか……。じゃあええっと、その、ちょっと林になっていてブキミな道にさしかかって、でもそこを抜ければまた住宅街に戻って、家なんです。だから、ちょっと嫌だななんて思いつつ小走りで抜けようとして。

 でも、その、道の先の街灯を見ると、何と言うか……。チカチカ光っている蛍光灯の光が、妙に、ブキミって言うか、何か、こう、いる(・・)っていうんですかね。

 ほら、出る(・・)みたいな。霊感というか、怖気みたいなのを感じてしまって。

 でも、それでも変えるために一歩踏んだら、鳥肌まで立ってきたんです。

 それですぐに思ったんです『何かヘンだ』って。明らかにいつもと、違うんです」


「フム……」


「変ですよね。でも、それは、今思うと、正しかったんです。――こういうことってあるんですかね?」


「いやぁ……。どうでしょうなぁ。だが、まぁ、人間というのは根底の部分で『動物』ですからね。『いつもと同じ場所』が『いつもと違う状況』にあれば、何か感じ取ることも、まあ、ありますよ。野生のカンってやつです。実際そういう人は結構聴きます。――ただ、状況が状況ですからな。もっと何かあったのかもしれませんので、ぜひ続きを」


「はい……。私、その変な感覚をおぼえたときに、思わず立ち止まってて……。そして、道の先を見ながら、気づいたんです。さっきからずっと妙な音がしているんです。初めは車が通るのかと思って背後を見たんですが、何もなくって。それで、前を向いて、音の方向を探してるうちに……。見えたんです。

 蛍光灯の明かりの先に、暗すぎて、闇と同化しているけれど、真っ黒の何か……。誰かがいるって。それに気づいた時から、その、呼吸が、早くなって……。冷たい、冷たい汗が背中に感じられたんです。氷柱(つらら)みたいな冷たいものが。

 その真っ黒い誰かが、考えていること、用意していることが、何となくわかったから。手元の、光の反射で」


「……」


「鋭いモノだということはわかりました。錐のような、モノだと。私が凍り付いたみたいに立ち止まっているうちに、真っ黒い影が動き出して、息を荒げながら、蛍光灯の明かりに入ったんです。

 その顔……。訳が分からないのはわかっているんですが、その、顔が……。人の顔じゃないんです。仮面のような、でも、目の穴のない、鉄板みたいな、プレートみたいな分厚い金属で、表面がざらりとしてる黒い、反射のあまりしない材質になっているんです。それで――それで、あごの部分が、明かりの反射のせいなのか、影のせいなのか、肌が……。無いような、肉でできたような、その、昔博物館で見たミイラのような……。それで、歯茎や歯が常に見えて、歯は金属みたいで……。変ですよね。でも、その光景はハッキリとしているんです」


「ええ、もちろん大丈夫です。そうしたハッキリとしたところも、異常だと思うところも全部おしえてください」


「そうですね。はい……。そして、何か、体は緑っぽい色のコートを羽織っていて、胸にはその、音を立てているエンジンのような、小刻みに振動して動く何かが着いていたんです。そして、鋼鉄の小手みたいに、金属の反射がしている両手の先に、ドリルのような棒状のものが、あったんです。

 明かりに入って姿を現したその、人? は、その両手のドリルを、高い音を立てて回し始めて、肩で息をするような、そんな様子を見せ始めて。

 私、腰が抜けてしまって……。その場で座り込んで何もできなくって……! はっ……。は……! は……。はぁっ……」


「落ち着いて、大丈夫です。焦らずに、ゆっくりと、まずは深呼吸をしましょうか」


「す、すみません……。取り乱して……。しまって……」


「大丈夫です。お茶でも用意しましょうか?」


「いえ……。大丈夫です。ゆっくり話せば問題、ありません」


「では、ご自分の楽なように……。記録はとってあるのでどのように話しても問題ありませんよ」


「ありがとうございます。――その、肩で息をした、人はですね。一歩、足を踏み出して、私に近づいてきました。でも、その、何といえば……。それは、その、ぎこちないというか。何か、何か引っかかりというか。自然に歩いた感じではないんです。明かりの中に出てきた時の歩き方と何か決定的に違うような感じで。

 それは次の一歩でさらに確信に変わって、引きずるような様子になっているんです。

 そして、三歩目で膝から崩れるように、四つん這いになって、震えているんです。いつの間にか、手のドリルみたいなものもなくなっているというか、引っ込んでしまって、口から黒い液体がこぼれているのが、金属製の歯のせいで見えて……。エンジンの駆動している音で聞こえずらかったんですが、何か、苦しんでいるようなうめき声をあげていて。

 全然訳が分からなかったんです。でも、その人は……。苦しんでいる様子で、こっちに顔を上げて、確かに、言ったんです」


「……?」


「【すまない、君は関係ない、すまない。】って」


「フム……」


「そう言った直後、今までにない勢いでうめき声をあげて、頭を抱えて苦しみだしたんです。私、少し心配になってきたりして、でも何もできなかったんです。

 そしたら……。そのままうめき声を叫んで、足の力で飛び上がって……。すごい勢いで飛んで行ったんです……」


「なるほど……。その時のうめき声が」


「はい。それを聞いた人が通報してくれて……。あの、これってやっぱり、幻覚、ですよね。私、そこまで疲れてしまって……」


「それは、なんとも。妙なヤツがいたことは確かです。通報してくださった方が聞いたように、デカいうめき声はいくつか証言がある。同じ時刻の似た不審者情報もあります……。ま、さすがに細部は恐怖の影響もあるでしょうな。本日はもう大丈夫です。早くお休みなられた方がいい」


「ああ、はい、その、ありがとうございます。話したら少し整理がついたというか……」


「いいえ。どうぞ本日はお気をつけて」


「はい、ありがとうございました」


「……。――『すまない』ねぇ……」

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