ネイティブダンサー
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「君のことをもっと知りたい」
本心だった。僕は王族。彼女は幾人ものお手伝いの中の一人。叶うはずの無い恋で、僕の人生は変わる。
彼女はサディーといった。作法の行き届いた麗しい少女だった。僕は無能な跡継ぎ。なんとかして弟にすべてを任せられないかといつも考えている。怠惰な僕のことをみんなは嫌うけれど、彼女は違った。彼女の行動からは何の感情も滲まなかった。他の使用人たちは表面的には媚び諂っていても、軽蔑が滲む。僕にはわかる。比べて、彼女の仕事は丁寧だった。僕を目の前にしても、顔色一つ変えない。
僕は彼女をそばに置くようになった。勉強するときも、身体を鍛えるときも、外へ遊びに行くときも彼女を侍らせた。それでも彼女は機械的だった。
「君のことをもっと知りたい」
そう言ったとき、彼女は初めて目を見開いた。
「わたし、そんなに面白い人間ではありませんよ」
彼女の口角はうっすら上がっている。僕は夢中だった。食べ物はそんなにおいしくもなく、ほこりっぽい、くだらないもので溢れた街だったけれど、僕はこの街のこの喫茶店が好きになった。彼女のいる場所が好きだった。
僕はラブレターを書いていた。古風で面倒なことだと笑われるかもしれないけど、僕は真剣だった。婚約者も用意されていた。それでも彼女への想いを形にしたかったのだ。ノックが鳴る。
「紅茶をお持ちしました」
僕はラブレターの上に別の紙をのせて、彼女を通した。礼を言って受け取る。部屋に華やかな香りが広がった。
「何をなさっていたんですか」
「いや、ちょっとね。勉強かな」
僕は言葉に詰まる。顔が熱い。居たたまれなくなって紅茶を飲み干した。
「座りなよ」
僕は彼女に一等いい席を差し出す。
「ありがとうございます」
彼女は多くを語らない。沈黙を許容してくれる。紅茶の残り香のなかで僕はぽつぽつとこれからの話をした。僕が王位を継承する日が迫っていること。儀式の準備のこと。弟は部下を多く集めて力をつけていること。
「……もう少し後で言うつもりだったんだけど」
一拍置いて、僕は手を握りしめる。
「一緒に逃げちゃわない?」
声が震えていた。
「きっと争いが起こるよ。そして僕にそれを止める力はない」
椅子から立ち上がる彼女。
「あなたは国民を見捨てるんですね」
不意に彼女は笑った。心底うれしそうに。
「ここで戦えない人間が他の場所でやっていけると。浅ましい」
吐血。僕のラブレターが血に染まる。立ち上がることもできない。視界が急激に歪んだ。毒か。酷く痛む頭を上げ、彼女の顔を見た。どんな表情なのか、よくわからない。
「信用してくれて、ありがとう」
彼女は静かにそう言った。敬語じゃない。汗が噴き出る。歩み寄ってきた彼女が僕を見下ろしている。
「サ……ディ」
声を絞り出す。弟からのスパイだとしたら、これも本当の名前じゃないんだろう。国賊が。
「これが、本当の私。ねえ、こんな私のこと、好きになれる?」
畜生。畜生。畜生。こんなにも苦しいのに。憎いのに。殺されるのに。
「……呪われろ」
矛盾。僕はまだ彼女のことが好きだった。
爆風が止む。アリカは雪原に見合わない熱を感じた。
「アリカ!」
ナターシャが叫ぶ。怒鳴り声だった。
「ナターシャ!」
応えて、迫撃機巧の伸ばした手に向かって駆ける。
「させると思う?」
三號機が斧を振りかぶる。アリカとナターシャの間に鉄が割って入った。スケールの差にアリカは大きく吹き飛ばされる。右腕から瓦礫の中に堕ちた。
「ぐぁ……」
強い衝撃に呻く。二の腕にガラス片が刺さっていた。制服が破れ額から血が流れている。アリカはそれを強引に拭った。四號機からはかなり離れてしまった。目測でおよそ三十間。と、そこにエンジン音が響く。
「ギナンさん!」
「乗ってください」
アリカのもとに四台の装甲車が駆けつけた。ギンコの車両に乗り込む。ギンコはシートベルトをしなかった。
「あなたが救った子供は無事に護送されています。つまり、我々に心配は要りません。攪乱します」
彼の瞳は爛爛として、何も映っていなかった。アリカは頷く。
三台の装甲車が一斉に走り出した。方向は三者三葉。少し遅らせてアリカの乗った車も出発する。
アリカからナターシャの乗る迫撃機巧まで残り二十間。トップスピードのままドアを開け放ち、アリカは車から転がり降りた。そのままナターシャに向かって走る。
残り十五間。けたたましくクラクションを鳴らしながらアリカの遥か前方で一台が真っ直ぐ突っ走る。多少の障害物も意に介さない。物凄い速度で三號機に迫るが、避けられる。アリカはほとんど使い物にならない右腕さえも振って走る。
残り十間。もう二台が三號機に肉迫する。ドリフトして周囲を回転する。クウロは踏みつぶそうとするが、その瞬間に他の車に体当たりされた。勢い良く炎が上がる。
残り五間。三號機が膝を付いた。
「長く生きていれば、誰しも千両役者となれる舞台に巡り合うことができるものですね。ジンさん、頼みましたよ」
三台が同時に突っ込む。アリカは声にならない叫び声をあげる。それも風が消し去ってしまう。
到達。四號機はハッチを閉じ、再び立ち上がった。
「アリカ、その腕」
右腕は打撲し流血していた。アリカは袖を破り、右腕の傷口を左手と口で大雑把に縛った。血と汗がコクピットに滴る。転がっていた痛み止めの錠剤の瓶から五、六錠つかみ取り、噛み砕いた。
「これでチャラさ」
頭部に装着した機械からナターシャの怒りが伝わってくる。
「ナターシャ。行くぞ」
「もちろんよ」
三號機が防御の姿勢を崩す。
「車で突っ込んでくるなんてびっくりだよ」
立ち上がったクウロたちに四號機は殴りかかる。
「うるさい!」
「なんでこんなことを!」
ナターシャとアリカの右ストレートを斧で受け止める。クウロは嗤った。
「自己紹介がまだだったみたい」
四號機から距離をとり、わざわざポーズをとる。
「私こそセカンドアース旅団長、ナナツ・マイワ!この星を侵略しに来たよ!」
「セカンドアース!?」
「正体を現したわね……侵略者!」
この星は地球ではない。光源は太陽ではない。近くに月のような惑星もない。肥沃な大地に浅い海。人類はこの星に歓喜した。
地球ファーストアースは使い潰された。代替となる星を探す旅は難航した。苦し紛れの暫定措置として地球から八光年ほど離れた寒冷な惑星が見初められた。開拓も進まないまま、高官や貴族が次々と地球を脱出した。地球とは似ても似つかない星だったが、地球に帰還した一人の先遣隊はこの星をセカンドアースと呼んだ。
セカンドアースは未知の生物に溢れていた。それらは浮遊し、空を泳いでいた。飢えからそれを食べた先遣隊の一人は魂を抜かれたように人間性を喪失した。地底は氷に覆われており、資源の採掘は困難を極めた。そんな中、一握りの権力者が比較的肥沃な土地を独占した。人員削減の憂き目にあった労働者たちは飢餓に苦しんだ。文明は退行した。とある探検家曰く、「まるで深海に住んでいるようだ」と。資源の枯渇から移住計画は一時停止された。
その後ある偶然から技術の飛躍的進歩が起こり、超長距離航行が可能となった。地球から三億光年離れた銀河に輝く白い星にサードアースと銘打ち、再び移住が始まった。それから二百年が経ち、地球はもぬけの殻となった。地球を挟んでサードアースの反対に位置するセカンドアースから船を出すことは出来なかった。地球にて新たに開発された技術を再現できなかった。
深海に光は届かない。生物は数少ない資源を奪い合う。
セカンドアースは見捨てられた。
歴史が変わる。いや、私が変える。クウロは天に向かって手を挙げた。
「仲間はまだまだいるんだから!」
空挺型侵略者が空を覆う。続々と侵略者が降下した。
四號機は構わず三號機に殴り込む。クウロはその拳を掴んだ。完全に見切られている。そのまま胴に蹴りをいれた。
四號機は背中から倒れる。雪が衝撃を和らげた。ガソリンが漏れて雪が染まる。
「来る!」
ナターシャが警鐘を鳴らす。すぐには立ち上がることができない。四號機はクウロたちに右腕を踏みつけられた。
「うああぁああああっ!」
「アリカっ!」
「あれ、痛むの?アリカちゃんもなかなか同調できてるね」
ナターシャが脚をばたつかせ、無理やり立ち上がる。近くに落ちていた瓦礫を投げてけん制する。
「魂と怒りを通して共鳴してるってとこ?うーん……」
瓦礫を軽々避けながら会話に興ずる。雪煙のなかに四號機は姿をくらました。まだ残っているビルの影から狙いを定める。
銃声。その瞬間、三號機は大きく背中を反らした。通り過ぎた弾丸が建物に当たって爆ぜる。
「そこっ!」
三號機が指をさし、二体の口腔型が続く。ビルが噛み砕かれた。四號機は走りながらそれを撃つ。
銃声を聞いてから避けるなどありえない。たとえパイロットが反応できたとして、それに迫撃機巧がついてこられるはずがない。アリカは三號機を睨んだ。
「驚いた?私、強いよね~」
「化けの皮被りやがって……今まで手を抜いていたな!」
ステップを踏んで接近し、蹴りをいれる。三號機は高く跳ねた。四號機の頭を足蹴にする。
「ねえ、魂とパイロットが最もシンクロできる組み合わせは何だと思う?双子?恋人?親子?」
「あぁ!?」
四號機は頭を押さえてよろめいた体勢を立て直す。
「残念時間切れ!正解は~自分自身!私は私の魂を抽出していたのでした」
演技っぽく大げさに告げる。異常。クウロは自らの魂を持っていなかった。
「考えられない……」
ナターシャが眉をひそめる。彼女の目にクウロは異形に映る。魂を持たない人間は人間ではない。そう考えていた。
「じゃ、死んでくれる?」
クウロが嗤う。三號機が不意に斧を投げる。四號機は顔の横を紙一重で通過し、落ちた斧がコンクリートを深く抉った。その隙に三號機が急接近する。
どてっ腹に一発ボディブローが入る。次に右頬。次に膝が人中に入る。
四號機が背中から倒れた。囲んで待機していた口腔型が群がる。アリカは強い痛みに動けそうにない。ナターシャが懸命にもがく。
ナターシャは銃弾で口腔型を薙ぎ、それでも接近してきた一体を握りつぶした。手が黒く染まる。
「そろそろ……アリカちゃんにも聞こえるかな?みんなの声」
クウロは息を整えつつ呟く。アリカは疑問を感じるが、声が出ない。
「そこにいる侵略者のみんな。思ってたほど知能が低くないってことはわかったでしょ?覚醒したパイロットは魂を通して彼等の声が聞こえるの。ほら、集中して?そこに落ちてる瀕死の拉致型。死にたく」
「耳を貸さないで!出鱈目なんだから」
くすくすとクウロが嗤う。
「いいのかなあ、何も知らないで……」
クウロが地面に刺さった斧を抜いた。雪が散る。そのまま倒れ伏した四號機の首に向かって振り下ろした。
爆風。アリカは目を見開く。少し、斧が逸れた。
「誰!」
クウロの視線が逸れた隙に四號機は転がって立ち上がる。
雪道に戦車が並ぶ。増援だった。
「アリカ、よく耐え抜きました。カマクラとグンマからの援軍です」
「待ちくたびれたわ、まったく!」
悪態でありながら、ナターシャの声色は明るい。アリカは深く息を吐き、吸った。
戦車には侵略者を完全にうちのめすほどの火力をもたない。それでもミサイルは侵略者の気を惹く。硬い装甲は盾になる。
アタシが、やるんだ。
「アリカ・バンジョウ、ナターシャ、出る!」
「クウロ……貴様は時間をかけすぎた」
三號機の関節から火花が散る。クウロたちの本気の操縦に迫撃機巧がついていけていない。クウロは舌打ちした。
「一人じゃなにもできないくせに!」
「はっ。寂しいか」
再度、衝突。三號機が四號機の拳を受け止める。しかし四號機の出力が三號機を上回っていた。クウロは呻く。
「私に大切な人なんていない!誰かのために生きるなんて馬鹿のやること!」
四號機は三號機の右腕を掴み、高く蹴り上げた。右腕が断裂する。
「うあああっ!」
クウロは自分の腕を押さえる。迫撃機巧とあまりに同調したため、脳が肉体を誤認していた。
これで、正しい。彼女を行動不能にすれば、この戦いは終わる。皆がそう望んでいる。アリカはこれまで出会った軍人達の顔を思い浮かべていた。額から汗が滴る。
「形勢逆転だ、クウロ。投降しろ」
クウロは口元の血を拭う。皆満身創痍だった。
「誰が……」
まだ手はある。四號機は右腕をほとんど動かしていない。このまま斧で切り伏せて処理できる。他の有象無象は無視して、一旦撤退しよう。押し切れる。まだやれる。なのに―――
「動かない……?」
クウロは背筋が凍るのを感じる。コクピットのあちこちをいじるが、どうにもならない。駆動系はくたびれているが、コンピューターは正常のはずだ。
「ウルメ、どうなって」
「ごめん、私」
ウルメが初めて口を開く。軽薄で素朴な声。
「もう疲れたよ」
三號機は自らのコックピットに手をやり、無理やり指を差し込んだ。
「……は?」
ウルメからクウロにその倦怠感がなだれ込む。操縦桿を何度も動かすが、ウルメは止まらない。繋がっているから、わかる。ウルメは本気だ。本気でクウロを殺そうとしている。
「もう無理だよ。私達、殺しすぎた。自分の始末くらいは自分でするよ」
その声は一抹の解放感を感じさせる。
「なんで!従わないの」
クウロの叫びが空しく響く。アラートが止まない。火花が散って、液晶が割れた。
「ウルメ!?何をして」
動揺したアリカが歩み寄ろうとして、停止した。
「近づいちゃ駄目!爆発するわ」
「でもあのままじゃ!」
アリカの叫びはナターシャには届かない。
「あいつは敵よ」
アリカはその冷たさにゾッとする。右腕が痛んだ。
クウロは必死に抵抗するが、ゆっくりと、しかし確実に鉄がコクピットにめり込んでいく。ハッチが開かない。無駄だとわかっていて、それでも叩いた。
「こんなの理不尽だっ!なんで!助けてよ、ねえ、誰か」
「誰かなんていないわ。あなたが殺したのよ。独りぼっちで死になさい」
その声は怒りに震えていた。アリカは目を見開き、己の無力に歯ぎしりする。
操縦席が鉄の指に握りしめられる。甲高い断末魔にアリカは息が詰まった。三號機が爆発し、火柱が立つ。轟音が響いた。
「……生きてなきゃ、償うことすらできないのに」
アリカは愕然とした。
侵略者達が上昇し、母艦へ退却していく。
「終わった」
虚ろなままアリカが呟いた。まだ何の実感も伴っていない。周囲には迫撃機巧や戦車の残骸が雪に包まれていた。
「……まだ。少しだけ残ってるわ」
ナターシャが気配を感じ取った。疲れているアリカのために声のトーンは下げられている。
崩れた建物の影に数体の口腔型と一体の拉致型が固まっていた。隠れていたようだが、三號機の爆発によって姿を晒され、弱っている。それらは全て通常のものより小さい。およそ戦力には数えられそうにもなかった。四號機は歩みを進める。
アリカは何故かその侵略者達に懐かしさを感じた。戦場ではおよそ感じたことのない、寂寥。
何か―――音がする。
「アリカは休んでで。私がやるから」
アリカの鼓動は早まる。
「……ねえアリカ。私、ジャイブって好きよ」
口を閉じたままでいる。
「兎になったみたいで楽しいの。そんなに緊張しないで」
本当は、これはコンペティション・ダンスではなかった。片方の踊りをトレースしているだけなのだから。
「ねえ、踊ろう?」
ナターシャが励ますように言う。アリカはただ頷いた。そうすることしかできなかった。
四號機がほとんど動かない侵略者達を蹂躙する。もう銀世界の中で動いているのはそれだけだった。
「…ッ。なんだ、これ、まただ」
アリカは頭を押さえた。声がする。それはもう幽かな音ではなかった。曖昧だったそれは彼等の肉を通して、明確にアリカに流れ込む。
『こわいよ』『痛い!』『しにたくない』
建造物は砕けその内部を露わにしている。瓦礫で足元が不安定だ。
肉が飛び散る音が『ルウム!』『カキ!』声が『うわあああああ』『なんで』『アリカ……姐ちゃん、たすけ』
「ああ、そうか。そういうことか」
『良い人間になれ、アリカ』駆動音。魑魅魍魎の死骸。アリカは耳を『痛み』『嫌い』目を閉じ『抜け殻』『大切な人』『出来損ない』それだけ『飲まれる』『光』が『幽霊』い。ねえ、私のこと、覚えて『人殺し』
止まない。許しを乞う声が。泣き声が。断末魔が。
気づかないふりをしていた。あの侵略者達は命を持っている。そして、今足元に広がる肉片は―――
「っあ……。ごめ、なさ…」
疑念が核心に変わる。小さな彼等。その声。その名前。
こいつらは、同じダンススクールの門下生だ。
四號機の楽しげな動きに対して、コクピット内のアリカは苦しみに声を上げる。ジンは冷静を装って、アリカに声をかける。
「アリカ、何が起こってる。答えろ」
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめ
四號機はジャイブのステップで小さな口腔型の群れを全て踏み潰した。脚は彼等の体液で濡れている。雪と肉が混ざり合って地面が柔らかかった。目の前には少し大きな拉致型が一体だけ、震えている。
「アリカ!アリカ!応答しろっ!」
ジンの叫びはアリカには届かない。
「アリカ」
あぁ。
「何が悲しいの?」
嫌だ。
「これは敵だよ?みんな…魂なんて持ってない」
そんな目で見るなよ。
「ほら、もうあと一体」
やめろ。
「敵は倒さなきゃ……そうだよ!」
やめてくれ。
「私達、ヒーローなんだから!」
「ああぁあああああああああああっ!」
アリカは迫撃機巧の脚を掴み、ねじ切った。自分の脚を失ったような痛みを感じてまた叫ぶ。
「アリカ?何やってるの?」
ナターシャの焦った声にも関せず、ハッチを叩き、外へ飛び降りた。侵略者に向かって思い切り手を伸ばす。地面に叩きつけられる前に、拉致型の胎内に包まれた。
この場から逃げたかった。ただ目の前の命を守りたかった。短絡的で、自分勝手な選択。
斯くして、アリカは飲まれる。




