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ルート邑25

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

*現在投稿休止中

「なるほど。理由は大きく三つある。まず一つ目は──」


 だが男の説明は途中で断ち切られた。


「ほぅ?3つね?なら、そのすべてを聞かせてもらおうじゃないか」


 後方から投げ込まれた薄笑い混じりの声が、温度を奪った刃物のように一同の背筋を撫でた。


 男は舌打ちを飲み込みつつ、ぎしりと軍靴を鳴らして振り返る。

 そこに立っていたのは部下ではない。

 鋭利な眼光を携え、月白の外套をまとった別の男——トニー元老院議員だ。

 兵たちは反射的に敬礼し、鎧金具のぶつかる澄んだ音が周囲に連鎖した。


「なぁ?」


 トニーは口角を引き、足を止めずに言葉を被せる。


「その “理由”とやら、聞かせてもらおうか」

「お……お前、なんでここに……」


 男の顔から一瞬で色が抜け、驚愕に開いた唇が言葉を探したまま凍りつく。


 トニーは余裕たっぷりに肩をすくめた。


「お前らの帰りが遅いから心配して見に来てやったんだ。精鋭部隊と聞いていたが、この体たらくとは。私はがっかりしたよ」

「それはどうも。お気遣いありがとうございます、トニー元老院議員“殿” ……ってか?」


 男は辛辣な笑みを刻み、声量を抑えながらも言葉尻に毒を混ぜた。


「元をたどれば、お前が命令した強襲だろ?お前の指示で俺たちは地獄を見たんだぞ。部下は、お前の命令に従ったがゆえに焼き払われた。再度聞くが、この作戦は本当に必要だったのか?」


 問いかけの最中、トニーはわざと視線を宙へ泳がせ、くぐもった笑い声を漏らす。


「ああ、もちろん。だからこそ援軍を連れてきたんだ」


 そう言って親指を背後へ突き刺す。

 昏い回廊の奥、鎖帷子が擦れ合う金属音が連なり、三、四十人規模の増援部隊が列を成して近づいてくるのが見えた。

 砂砾を踏む足音が、地面の震えとなって伝わり、灯火がその振動で揺らいだ。


「内密な任務のために大規模な動員は避けたが、これだけいれば十分だろう?」

「お前なぁ……」


 男が反論しかけた瞬間、トニーは人差し指を立てて制し、再び言葉を奪う。


「で?その縛られてる“あれ”はなんだ?」

「ったく……あれはな。お前の指示で向かった村の最奥、ルート邑に現れた厄介な代物——全ての元凶だ」


 男の吐き捨てるような説明を聞き流すように、トニーは台車に近づいた。

 錆びた車輪がきしむ音が湿った床に伸び、仄暗い燐光が少年の閉じた瞳をなぞる。

 苛烈な緊張が、兵士たちの肩から肩へと稲妻のように走り、冷たい汗が鎧を伝った。


 鎖の金属音、兵の息遣い、遠ざかる足音──すべてが厚い静寂の布に縫い止められ、刹那の均衡を保ったまま、灼けた鉄の匂いを孕んで揺れていた。


「——これは、子供……か?」





— μετά—

ふわっと現れ、ふわっと投稿。良きかな良きかな…


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