地下都市4
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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「これより審問会を始める」
法壇の中でも中央に座る2人のうち最も年配の男が、厳かな声を上げる。
その瞬間、まるで目には見えない何かが空間に満ちるような感覚を覚えた。
——不気味なオーラ
肌に粟が立つような、言いようのない圧迫感が広間を支配する。
「まず少年に問う。君は真実に基づき、真実と向き合い、真実のみを語ると誓うか? 誓うなら”誓う”と答えなさい」
手は汗で湿り、喉が乾き、息が詰まるような感覚に襲われながらも、少年ははっきりと答えた。
「激しく…誓います」
「では少女に問う。君は真実に基づき、真実と向き合い、真実のみを語ると誓うか?」
少女は沈黙する。
長い沈黙の後、少年が助け舟を出そうとした瞬間、男が制するように言った。
「君は黙っていなさい。今は少女自身に答えてもらうべき時だ」
少年は言葉を呑み込み、少女の方を見た。
彼女の小さな唇が、わずかに震えながら開く。
「……誓う」
怯えを含んだ幼さの残る声だったが、それでも確かに彼女自身の意思で発せられた言葉だった。
「よろしい。では、まず確認しよう——君たちは、自分たちの名前や出自に関する記憶を失っていると聞いているが、それは事実か?」
「はい。その通りです」
「そして、君たちはここで生活する覚悟があるとのことだが、つまりここで暮らすということを受け入れると言うことか?」
「はい、受け入れます」
「では二つの選択肢を与えよう。ひとつは、ここで安定した生活を送ることだ。
辛いことも多いだろうが、身の安全は保障される。もうひとつは茨の道である。
修行を積み、士官学校に入学する道だ。どちらを選ぶか、今この場で決めなさい」
その問いに、少年は少しも迷わなかった。
もともとここに来るまでに、それなりの覚悟を固めていたからだ。
病院でこの少女を妹のように扱うと決めた時、どんな苦労をしても彼女を守り抜くと心に誓った。
手段は問わない。そう決心したのだから。
「僕は……後者でいいです。何もない僕ですが、それでもやれることがあるなら、挑戦したい」
すると少女も、彼女らしい小さな声で口を開く。
「私も……兄に…ついていく。覚悟は…できている」
人前で話すのを避けてきた彼女が、片言ではあったが、こうしてはっきりと意志を示すのは初めてだった。
それだけでも驚きなのに、自分のことを兄と認めてくれているとは……。
少年はその一言で、一瞬頭が真っ白になりかける。
——ってか、可愛すぎだろ……!
心の中でそう叫ばずにはいられない。
— μετά—
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