ルート邑17
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「右手が生えきる前に……絶対にはめねえと……!」
言葉にならない渇望を込め、男は最後の力を振り絞った。
荒れ狂う風圧に抗いながら、金属の輪をひと呼吸で掴み、全神経を一点に集中させる。
まるで運命を賭けた賭けのように、男の手は白い光の渦の中へと突き進んだ。
息を呑む静寂の瞬間、世界は再生と破壊の狭間で凍りついていた。
荒い息が喉を焼き、焦げついた肺が激しく痙攣していた。
爪は地面を掴もうと必死に土を引っ掻くが、指先からは力が抜けてゆくばかりだった。
ここまでか——脳裏に冷たい声が響く。
意識は朦朧と霞み、鼓動は乱れ、全身が鉛のように重かった。
——諦めるな。
心の奥から悲痛な叫びが沸き上がる。
それはかつての自分の声だった。
だが目の前に広がる現実は、容赦なく残酷だった。
立ち上がるための力はもう枯れ果てている。
それでもなお、指は地面を掴み、震える身体を少しでも前へ引きずろうとしていた。
汗と泥が混ざり合い、頬を伝って落ちる。
瞳には涙が滲み、視界が歪む。
自分自身が何に抗っているのかさえも、もはや曖昧だった。
ただ、生きることを諦めるまいという本能が、最後の希望として身体を震わせている。
背後からは終焉の足音が迫っていた。
重く、不吉な音が心臓を締めつける。
——諦めたくない。
——だが、もう動けない
そんな絶望が渦巻き、悲壮な呻き声が唇から漏れた。
指先に込められた僅かな力、それだけがまだ自分を支えている。
この指を離した瞬間、すべてが終わってしまう気がした。
だから、どれほど絶望が迫ろうとも、地面を掴む手を離すことだけは許されなかった。
言葉にならない渇望を込め、男は最後の力を振り絞った。
荒れ狂う風圧に抗いながら、金属の輪をひと呼吸で掴み、全神経を一点に集中させる。
まるで運命を賭けた賭けのように、男の手は白い光の渦の中へと突き進もうとしていた。
息を呑む静寂の瞬間、世界は再生と破壊の狭間で凍りついていた。
すると男は振り返る暇もなく、背後からの叫びに驚きと安堵が入り混じった感情を胸に押し込めた。
「ボス…今助けます‼︎」
鋼鉄の盾を抱えた数名の仲間が、横殴りの暴風に盾を突き出しながら、一歩一歩、必死にこちらへと歩を進めている。
盾同志がぶつかり合う金属音が、耳鳴りのようにかき消されそうな風切り音にかぶさり、砂塵が目に突き刺さる。
盾の縁に残る血しぶきがかすかに乾き、焦げた木の匂いが鼻腔をくすぐった。
「馬鹿やろぅ。お前らも死ぬぞ!」
— μετά—
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