ルート邑16
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「それに、俺の部下をこんな無様な形で何人失うつもりだ……あいつの命令がなければ、こんなに朝から走り回る必要もなかったってのに」
胸中の苛立ちが、言葉に混じった歯ぎしりとなって響く。
男の視線は、まるで意志を宿すかのようにそこにとどまり続ける少年の下半身へと釘付けになった。
さらに一歩踏み出すと、少年の体を中心として、深い瑠璃色の光を放つ正八面体のエネルギー体が不規則な列をなし、空気を震わせるように高速で飛び回っているのが見えた。そのひとつひとつが、宝石のように透明感のある結晶構造を浮かべ、回転するたびに鋭い金属音の残響を伴って夜の闇に煌めいた。
「くそ……まだ死んでねえのか?」
男は冷たい唾を吐き捨てるように言った。
その声に重なり、瑠璃色の結晶群が次第に密度を増し、まるで意思を持つかのように男を取り囲んでいく。
夜風が渦を巻き、木の葉を鞭のように叩きつけ、耳をつんざくような風切り音が辺りを満たす。
そのとき、少年の残骸から紅玉色の閃光が迸った。
鮮やかな猩々(しょうじょう)緋を思わせる光が、瑠璃の結晶とぶつかり合い、不規則な輝きのコントラストを描き出す。
まるで古代の儀式が甦ったかのような神秘的な景観に、男の胸は鼓動を早めた。
「くそ、早くこの首輪をはめねえと……」
声が震える。
男は必死で腰に差した小さな袋から隷属の首輪を取り出し、手探りで指先を滑らせた。
だが、暴風の勢いが増し、赤と青の光が渦を巻く中、土ぼこりと枯れ葉の破片が視界を遮る。
全身を覆う鎧の隙間が冷気を通し、骨まで冷やすようだった。
その瞬間、少年の背骨が新たに生え出し、ぎしりと嫌な軋み音を立てた。
次いで肋骨が肉を破って浮上し、内側の核──星型八面体の真っ白に輝く中心体──を護るかのようにその周囲に組み上がっていく。
再生の過程が生々しく、男の胃袋を締めつけた。
「まずい……このままじゃ本当にやられる」
男は地面に膝をつき、剣を鉤状に曲げながら光と結晶の奔流を睨む。
青白い閃光が肉体を包み込むたびに、暴風が一段と激しさを増し、地面の砂礫が男の頬に当たって痛みを伴う。
髪に絡みつく埃と焦げくさい匂いが、雄叫びにも似た風の音に混じり合い、胸の奥に冷や汗が伝った。
男は必死に膝をついたまま、首輪の外周に刻まれた紋様を目で追い、震える指先に汗をたっぷりと滲ませながら輪を広げようとする。
だが、再生の速度は猛烈そのもので、両腕の肉が少しずつ形を成しはじめている。
「右手が生えきる前に……絶対にはめねえと……!」
— μετά—
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