ルート邑15
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「……死んだのか? あれは……」
隊列の一人が足を止め、息を呑む。
呼吸音だけがやけに大きく、夜の静寂をさらに深く感じさせる。
「多分死にましたよあれは。だって上半身が……消え去ってますし…」
男はゆっくりと顔を歪め、震える手を伸ばして白い棒を撫でた。
その冷たさは、まるで生者と死者の境界を曖昧にするかのように残酷だった。
「そうか。じゃあ死体を回収して確認する。お前らは生存者の捜索をしてこい」
大炎が一瞬にして消え失せた集落跡に、暗い夜の静寂と冷たい風だけが戻る。
瓦礫の間からは焦げた木の匂いと、焼け焦げた土の匂いが鼻を突く。
「ボス、大丈夫っすか?」
部下たちが一斉に駆け寄り、男の身を案じる。
鎧の継ぎ目に手を触れ、荒い呼吸を確かめる。
「ああ、一応な。だがこれだけは絶対に放っとけねぇ……」
男は深いため息を吐き、ポケットから小さな金属の輪──隷属の首輪を取り出した。月光の下で鈍く光るそれを、慎重に手に握る。
「これは……隷属の首輪か?」
部下の一人が、声を潜めて尋ねる。
「万が一の保険だ。魔術師が暴走したりしたら、お互いの命綱だからな」
男は淡々と説明し、首輪を握り締めた。冷たい金属の感触が、まるで生と死の境界を再び突きつけるようだった。
「なるほど。分かりました、ボス」
部下は深く頷き、銀色の首輪を差し入れた。
夜風が再び吹きすさび、焦土に遺された静寂は、まるで戦いの喧騒を呑み込むかのように重く、そして凛としていた。
男は無造作に隷属の首輪を片手に、もう一方の手には血に濡れた剣を握りしめ、上半身を吹き飛ばされたまま下半身だけで横たわる少年の残骸へと一歩ずつ近づいていった。
足元の砂利が靴底に砕ける音とともに、小さな破片が不規則に弾け、かすかな金属臭と焦げた木の匂いが混じり合って肺に侵入する。
少年の傷口からすでに乾き始めた血が、地面に赤黒いしみを作りながらゆっくりと滲んでいた。
しかし、近づいても何の反応もない。
ただ、寂しげに夜の静寂だけが、広がり続ける。
冷たい風が頬を打ち、獣の遠吠えにも似た木々のざわめきが暗闇に溶け込んでいた。男は荒い息を吐き、額に浮かぶ汗を手の甲で拭いながら、眉間に深い皺を寄せる。
「一体あれは何なんだ……」
声は地を這うように低く、呟きは自分自身に托された呪詛のようだった。
— μετά—
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