ルート邑14
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言葉が炸裂すると同時に、冷たい風が一層強まった。
天井裏から軋む鉄骨の呻きが落ちてくるように響き、周囲の誰もが息を呑んだ。
部下は言葉に詰まり、うつむいたまま痺れたように動けなくなる。
「だから早く……はよ持ってこぉぉい!!」
命令は凍りついた風花のように空間に舞い、再び深い沈黙を呼んだ。
その沈黙を切り裂くように、今度はまた別の部下が血を吐くような荒い呼吸を漏らしながら姿を現す。
「ボス!持ってきやした!!」
ローブの裾にこびりついた乾きかけの血は、かすかに湿り気を残し、胸元でかすかに音を立てる。
彼の震える指が差し出すのは、全長二メートルを優に超える槍だ。
槍先は黒曜石のように冷たく、見る者の心を凍らせる重圧を放っていた。
表面は滑らかに磨かれ、その冷たさは触れるだけで骨の髄まで沁み渡る。
柄にはうっすらと朱色の稲妻紋が浮かび上がり、かすかな振動がまるで生きているかのように掌に伝わってくる。
槍先が月光を受けて放つ暗紅の光は、見る者の心を凍結させ、周囲の影さえ押し潰すような重圧を帯びている。
握りしめた手のひらには爪が深く食い込み、ひび割れた指先からは血の味がじわりと立ち上る。
広間の隅々に張り巡らされた緊張と、抑えきれぬ恐怖と諦念が鈍い鼓動となって鳴り響いた。
「強力な障壁を頼む……あの拳の一撃だけは勘弁だ。それと、結界も頼む」
「結界…っすか?」
「あぁ。頼む。俺らがここに来ていることもここで何をしているかも、誰にも見られてはならない。空間を外界から遮断するんだ。あれが魔法だった場合すぐに探知されるぞ」
「了解っす‼︎」
術師は祈るように呟き、杖を地面に突き立てると、周囲に波紋のような魔力が広がった。
刹那、見えざる結界がまるで生き物の皮膜のように展開し、男はその庇護のもと槍を背後へ構えた。
暗い夜風が再び唸りを上げ、男は身体を捻って力強く槍を投擲した。
先端が空気を切り裂き、鋭い金属音が響く。
槍は一瞬にして少年の心臓を狙い撃ち、凄まじい衝撃波を伴って炸裂した。
大地が裂け、周囲の建物や燃えさかる廃墟が一瞬で吹き飛び、人が立っていられぬほどの轟音と熱風が辺りを包む。
その衝撃の震波は、まるで山をも押し潰す圧力を秘めていた。
砂埃が眼を突き、肌に小石が叩きつけられ、鼓膜を刺すような轟音とともに世界が白黒の閾値に揺れる。
息を詰め、指先の震えを必死に抑えながら男は目を見開いた。
そこには少年の胸を槍が貫き、その細く儚い体は、次の瞬間、鮮烈な紅を撒き散らして砕け散った。
その刹那の光景は、まるで破滅を荘厳に奏でるシンフォニアのように、悲痛にして壮麗だった。。
暴走の末に全身を散り散りばらばらに吹き飛ばされた少年の残骸が、まるで鮮烈な彫刻の破片のように地面に点在していた。
しかし、少女を守っていたあの白い棒──一本だけは何事もなかったかのように、静かに立ち尽くしている。
まるで時間がそこで止まったように、淡い月光がその表面を滑り、凛とした輝きを放った。
「……死んだのか? あれは……」
— μετά—
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