ルート邑13
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真紅の力がこめられた拳が閃光を放つと同時に、目の前の何重にも重なる魔法障壁──固い石壁のように何重にも張り巡らされた防護フィールド──は、爆ぜるように砕け散った。
光と影が交錯し、周囲を取り囲んでいた数十人の魔術師が、無慈悲な力に挽き潰され骨も肉も跡形もなく砕け散り、粉塵と化して空中に溶けた。
そこには存在していたはずの生命の痕跡すら跡形もなく消え去っていた。
その爆発音は鼓膜を焦がし、遠くの山々にまで反響を投げ返した。
辺り一面に血の雨が降り注ぎ、焦土と化した村の残骸に赤い染みを刻む。
地面は震え、砂利が跳ね、石壁の隙間からは立ち込める熱気と焦げた薪の匂いが押し寄せる。
遠吠えのように響く男たちの悲鳴は、瞬く間に断末魔の合唱へと変わり、夜の静寂を切り裂いた。
「今度は何だ⁉︎ 魔法が…使えねぇはずじゃなかったのか?」
揺らめく炎に照らされ、男は歯を剥いて叫んだ。
その声には恐怖と怒りが同居し、こもった喘ぎ声のように背筋を凍らせる。
しかし次の瞬間、彼は決意を固めたように歯噛みし、呼吸を整える。
「くそ、、、魔法が使えるとなると…。俺らがここにいることがあいつらに勘付かれて作戦が頓挫しちまうじゃねぇか。クッソ…こんなとこで死んでたまるか。仕方ねぇ、あまり使いたくはなかったが──」
男は集落の外れに隠れていた仲間たちを振り返り、血飛沫舞う夜空へと声を投げる。
淡い橙色の松明の炎が揺れる大広間は、一面に散らばった砕けた石片と焦げた木片の匂いに満ちている。
空気には硝煙の刺すような刺激と、床に染み込んだ血の鉄錆くさい匂いが混ざり、胸の奥で鈍い痛みがうずく。
そんな張り詰めた闇を裂くように、低く凍りつく声が轟いた。
「おいぃ!誰か生き残ってる魔術師を連れて来い!これ以上の犠牲は御免だ。隷属の槍を使う!」
声はまるで凍った刃が空気を切り裂くように冷たく、壁に跳ね返った余韻が鈍い振動となって足元から胸にまで伝わる。
重々しい沈黙が支配する中、一歩一歩を思い切り踏みしめる音だけが、砂利を蹴散らしながら響いた。
凍りつくほどに冷ややかな命令に、背後の影から一人の部下があえぎ声と共に這い出してきた。
肩から滴る汗は冷たい床石で瞬く間に固まり、唇は青紫色にぞくぞくと震えている。
「ボス!!それはまじぃですって……ここでそんな禁忌を使ったら、一体何が起こるか……俺たちにもわからないことが多すぎますし、それほんまの“最終兵器”ってやつなんすよ?」
彼の声はかすれ、乾いた喉を撫でる風がひんやりと背筋を走った。
指先は汗で滑り、がちりと岩のように堅い床に爪を立てる音が、胸の中の恐怖と焦燥を刻みつける。
しかし男の瞳は凍結した湖面のように動かない。
鋭い視線が部下の身体を貫き、声にならない重圧が胸にのしかかる。
「オメェ。その緊急事態が“今”なんだよ!!あれを放置して死ぬほうが、よっぽど御免だろうが!!」
— μετά—
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