ルート邑12
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すべての感覚が研ぎ澄まされたかのようなその一瞬に、少年の右手から発現した純白の槍と、そこから流れ出す謎めいたエネルギー体は、神話の英雄が宿命に抗い己の意志を解き放つかのように、壮絶な叙事詩の一幕を記録するかのようであった。
白い棒状の残像が揺らめくその瞬間、言葉を紡ごうとした少年の声は、まるで氷結したかのように震えとともに止まった。
四本の白い柱は動きを止め、まるで意志を宿した腕のように俯いたまま大地に突き刺さる。重苦しい沈黙が辺りを支配し、遠くで呻くような風の音だけが耳を打つ。
少年は微かに震える唇の端を引き裂きながら、ゆっくりと右手を前方へと振り上げた。
筋肉の流れが浮き彫りになるほど強く握りしめられた拳からは、瞬時に隆起した静脈を伝って鮮血が滴り落ちる。
鉄臭い匂いが濃く空気を満たし、肌がざらつくような生暖かさが胸を刺す。
一瞬の沈黙が、まるで無限を孕んだ闇の海のように深く、重く胸にのしかかっていた。
湿った大地は微かな振動を耳に送り、張り詰めた大気は小さな囁きを交わす。
空気に混じる土の匂いと、遠くで燃えたような焦げた匂いが交錯し、彼の鼓動はまるで太古の地脈を揺るがす震動のごとく、鼓膜を震わせた。
まるでこの世界そのものが、彼の存在に呼応しているかのようだった。
少年は身体の芯から震えを感じ、頸筋をそっと撫でる冷たい空気に肌を刺された。
まどろむ意識の奥底に、低く淡い声が響き渡る。
——ツィアを守れ
——全ての障害を排除せよ
——駆除をせよ
胸腔の奥で絡まり合う思考が、鋭利な刃物のように切り裂かれた。
少年の瞳──視界は血を帯びた紅に染まり、身体の細胞一つ一つが獰猛な渇きを帯び始めた。
かすかな金属の味が口内に広がり、乾いた土のザラつきが舌に感じられる。
少年自身がどこから──何によってこの衝動を得たのか、思考は霧のように消え去っていた。
言葉は鼓動と共鳴し、重苦しい沈黙を引き裂いて空間を震わせる。
声の震えが波紋となって、見えない手が空気を掻き回すように周囲の気流を乱した。
突如として“声”が反響して耳に直接届いた。
ハールの誘いの許に——
「……一体、なんの声だ?」
隣にいた仲間の声が、震える吐息とともに彼の耳に届く。
「わ、わかりません……」
冷たい声。戸惑いと恐怖が混じっている。
少年はもう自我を保つことはできなかった。
全身の血管が大地の震動と呼応し、皮膚の下を熱い血液が猛り立つ。
まるで刃を抱えた亡霊がその胸でうごめくかのように、彼の内部から鈍い殺気がじわりと滲み出し、空間に冷たい霧のように広がった。
暗闇に吸い込まれるかの如く、周囲の色彩は濁り、音は遠ざかり、ただ彼の鼓動と、血腥き気配を微かに漂わせ殺気を空間に撒き散らせた。
— μετά—
ふわっと現れ、ふわっと投稿。良きかな良きかな…




