アース邑4
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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山道は依然として闇に包まれ、冷たく湿った空気が頬を撫でる。
だが、道中、ふとした瞬間に遠く遠くに浮かぶ動く点々とした光が、まるで生きているかのように瞬きを繰り返すのに気が付かされる。
恐らくそれらは、かつては小さな焚き火や灯りだったのだろうが、次第に彼らに迫るその光は、まるで生物の群れのように神秘的な息吹をも感じさせた。
しかし、少年たちはその光の方向へ意識を逸らすことなく、目的の集落へと進み続けた。
集落に近づくにつれて、点在していた光が徐々に集団となり、まるで遠くの闇夜の中で少年たちを謎めいた存在として取り巻き始めた。
やがて、集落の輪郭がその眼前に広がると、彼らは一瞬にして事態の重大さに気付く。
そこには、集落全体が不吉な炎に包まれている様相があった。
「これは……一体、何の祭り.... 賑やかな宴....でもなさそうだし」
集落に足を踏み入れると、目に映ったのは、中央広場のような広い場所に設置された、荒廃したかごのような噴水。
その周囲に無造作に散らばる石片の間、冷たく硬い石の上に磔刑に処された一人の男の死体が異様な存在感を放っていた。
男の顔は苦悶と恐怖の表情を残し、そのまま動かぬ姿勢で、まるで時間が凍り付いたかのようにそこに佇んでいる。
死体の傍らからは、かすかな呻きが微かに、しかし確実に届いた。
——痛い……暑い……助けて……
死者の微かな声。
皮膚や骨にまで刻み込まれるような冷たく湿った音色が、周囲の無数の音の中に不規則に割り込んでくる。
アースは、風がささやく秘密、木々のざわめきの中に潜むメッセージ、そして大地の隠された鼓動といった、万物が発する声を感じ取る能力を持っている。
しかし、今回のその声はこれまで彼が聞き慣れたどんな囁きとも根本的に異なり、全く新しい感覚を彼の内側に呼び起こした。
その声は、まるで死者たちが遥か遠い時空から這い上がり、無数の亡霊が口々に語りかけるような、冷たく硬直した音だった。
耳をすませば、色あせた記憶のかけらのような囁きが、まるで迷宮の中を彷徨う風のように、彼の意識の奥底に直接届く。
何重にも重なったその声は、救いを求める叫びでありながら、同時に破滅の予兆でもあった。
少年は眉を深くひそめ、内心で訴えるように呟いた。
——これは、どうか静かにしてほしい……
その瞬間、アースは万物の声を感じるその能力が、祝福であると同時に重い呪いであるという現実を改めて実感する。
特に、この異様に響く死者の声は、彼の心に重くのしかかり、過去から断ち切れぬ記憶と向き合わざるを得ない苦悩を伴っていた。
炎に包まれた集落、痛みと絶望が混じるその空間の中で、少年は自らの意思と戦っていた。
— μετά—
ふわっと現れ、ふわっと投稿。良きかな良きかな…




