ルート邑3
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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「ツィア、大丈夫か? なんだか僕…さっきから体調が急激に悪くなってるんだ。なんだこれは…」
「大丈夫?」
問いかける声は、不安と困惑が混じったかすかな響きに過ぎなかった。
時間の経過とともに、少年の体調はますます悪化していく。
ふとその視線が少女の顔に移ると、彼女の表情はどこか冷静で、苦悶や焦燥の痕跡すらも見受けられなかった。
顔面に汗一つ浮かべることもなく、彼女はただ平然とした佇まいを貫いていた。
「すごいな……ツィアは、本当に強いんだな」
「休む…?」
その一言に、少女は心配そうな瞳を浮かべ、ためらいながらも優しさに溢れる手を差し出す。
少年は、ひ弱な体力の中でその温かな手に触れるために、かろうじて自分の膝を支えながら寄り添った。
「ありがとう。でもここで立ち止まらない方がいい、だんだん暗くなってくるからそれまでにとにかくここを出よう」
その手は、まるで冬の夜空に冷徹な月光が注がれるかのように冷たく、体温の伝わらない氷のようだった。
しかし、その冷たさとは裏腹に、彼の胸の内に一筋の温かさと安堵が広がるのを感じずにはいられなかった。
どのくらいの時間が流れたのだろうか。
日差しはすでにその輝きを失い、漆黒の夜が徐々に大地を包み込む中、少年たちは疲弊した体を引きずるように歩み続けた。
視界の奥で、闇に交じるかすかな光が次第に迫る中、彼らの耳には風がささやかのように、木々が微かに唄う音、遠い虫のざわめきが込み上げ、冷え込む大気が頬を撫でた。
すべての感覚が研ぎ澄まされる頃、ついに彼らは周囲を覆っていた濃密な闇から、一転して広大な夜空を見渡せる一角へと辿り着いた。
もしかすると、そこは険しい山の中腹であったのだろう。
足元の土や枯れ葉のかさぶたが、彼らの行く手に淡い音を奏で、時折、遠くからは野生動物の鳴き声が混じり合う。
だが、目に映ったのは、遠く離れた場所に煌めく無数の火が、一つの大きな集落のシルエットを形作る光景。曖昧ながらも集団の人影を感じさせるその光は、まるで希望の灯火のように二人の心を引き寄せた。
「向こうに行けば、ひょっとすると人がいるかもしれない」
「うん、確かに」
「じゃあ、あそこを目指すか…あと少しだけど頑張れる?」
「うん」
「そうか。じゃあ行こう」
少年らは最後の力を振り絞り、懐かしさすら感じるかすかな温もりを追い求めるかのように、その煌めく火の元へと向かって足を踏み出す。
— μετά—
チョー遅れてすみません。
色々予定が立て込んでました。
全力で再開します。




