——ニュー・ハリス:中央都市・センフィールド——Ⅴ
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「お前、好きだなその古い言い伝えが。まだ信じてるのか、そんな迷信じみた話を…」
トニーは苦笑いを浮かべながらも、心の奥ではその言葉に何かしらの真実を感じ取っているようにも見えた。
彼の周囲には、かつて戦場で感じた激しい硝煙と、命の危険が迫る瞬間の冷たさが、ふとした瞬間に蘇るようだった。
「信じるも何も…それに、これもお前がかつて口にした話だろ?」
エリックは、声を少しだけ震わせながら問いかけた。
彼の瞳には、過ぎ去った日々の記憶と、今この瞬間の現実が混ざり合う複雑な情感が映し出されていた。
「えぇっと、そうだったっけか? あまりにも昔の話で、もう記憶の彼方に流れてしまったよ」
トニーはそう言いながら、ふと遠い昔の戦火の中で交わされた密やかな約束を思い返す。
かすかな埃の匂いと、焦げた鉄のような苦い記憶が、彼の意識の隅にちらつく。
「確か…あれ? いつ聞いたんだっけか……お前から聞いたはずだと思うのだが…あれ? この話、そもそもどうやって知ったんだっけ?」
エリックは戸惑いと不思議そうな声色で問い直す。
廊下の窓から差し込む陽光が、彼らの顔を一瞬だけ黄金色に染め、まるで過去の幻影を映し出すかのようだった。
「知るかよ。だからこそ、ずっと言ってるだろ? こんなことが起こるはずがないって」
トニーは、どこか皮肉すら感じさせる口調で返すと、ふと窓の外に目を向けた。
遠くの地平線には、静かに迫る嵐の前触れとも取れる、曇りがちな空模様が広がっていた。
「いや、今に見てろよ。賭けてもいいさ。
だからこそ…一体、エル・ダグラスは何をなされているんだ。
今すぐにでも、各地に散らばっている使徒の方々を招集しなければならないだろう……お前もそう思うだろ、トニー?」
エリックの声は焦りと同時に、内面に秘めた熱い信念を燃やすような情熱に溢れていた。
彼はまるで、自分の考えをトニーに理解してほしいと懇願するかのように、言葉を選びながらも、確固たる決意を示していた。
「…あ? あ、あぁ。そうだ。まったくその通りだとも」
トニーは一瞬の戸惑いを見せながらも、やがてうなずいた。
だが、その瞳の奥には、過去の戦闘で失った仲間たちの顔や、切なくも儚い未来への不安が複雑に絡み合っていた。
彼の内側では、かすかに未来を賭けた覚悟が、冷静さと同時に芽生えていたのだ。
エリックは、どこか抜けた様子で肩をすくめると、苦笑いを交えながら呟いた。
「このままじゃ、奴らの思うがままになる。
そもそも、予言上ではあと百年ほど先の話だったはずなのに……そのくせ、あんな役に立つか微妙な惑星要塞なんかを造ってる場合じゃないってのに…」
その言葉とともに、エリックが背後から静かに口を挟んだ。
エリックは窓際に立ち、外の空を見上げながら、視線の先に浮かぶ異様な光景に目を凝らしていた。
空には、多数の惑星が浮かんでいるが、その中の幾らかは人工の力によって作られ、今まさに球体へと変貌しようとしている様相を呈していた。
それは、手のひらほどの大きさにも感じられる不自然な形状で、どこか歪みながらも、確実に球体へと近づいているようだった。
エリックは低く息をつくと、鋭い眼差しでその球体を見据え、冷たい空気の中に漂う金属の匂いや、遠くで響く機械音すらも感じ取るかのように語った。
「まるで、未来の運命を告げるかのようだ……このままでは、我々が知る世界が、あの予言に刻まれた運命に引き込まれていく。
使徒の方々の集結が遅れれば、取り返しのつかぬ大惨事が待っている…」
— μετά—
ふわっと現れ、ふわっと投稿。良きかな良きかな…




