——ニュー・ハリス:中央都市・センフィールド——Ⅳ
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「なるほどな。いずれは、どっちにしろ同じ結果に至る運命だったのかもしれんしな。国のために命を捧げれたんだ。ディーンの奴らも、これ以上ない喜びだろうな」
その言葉を聞いたトニーは、深く息を吸い込み、静かに吐き出す。
彼の表情には一瞬、無念さと怒りが交錯し、拳が知らず知らずのうちにぎゅっと固く握られた。
だが、その動作は誰の目にも留まらず、ただ密かに内面の葛藤を映し出すにすぎなかった。
「おい、そんな差別的な言葉は控えろ。ただでさえ今、最近世間のこの国に対する風当たりが強まってんだから。些細な一言が大火種になりかねないんだぞ?」
エリックは軽蔑を込めた声で応じた。
「別に構わんよ。劣等種が人間に逆らえるはずなどないのだから。
やはりあれらには厳しいしつけというの改めて必要なようだな….. そんなことよりもだ。あの惨状…まったく酷いもんだな」
窓の外を見渡すと、宮殿の壮麗な庭園と遠くに続く地平線が、平穏そのものに映っていた。
透き通る青空はどこまでも広がり、まるで何も予兆がないかのような静けさを湛えている。
しかし、その空気の向こう側には、かつての激戦と失われた命の叫びが風に乗って漂っているのだと、二人は感じ取らざるを得なかった。
廊下に響く足音や、遠くで響く鐘の音、そして石の冷たさ——それらはすべて、戦いの記憶と希望、そして失われた未来への儚い祈りを映し出しているように思われた。
こうして、古き宮殿の中で交わされる会話は、過去と現在が交錯する一瞬の静謐なドラマとして、永遠に刻まれるのであった。
「間違いないな。まだこの場所には達していないが、例の異常気象はもうじきこの地にまで忍び寄るだろう。
聞いた話では、西側の大地はすでに深い汚染にまみれているとさ」
トニーの低く落ち着いた声は、廊下に響く静寂と相まって、重々しい予感を含んでいた。
冷たい大理石の床に足を踏みしめる音が、やがて遠くの激戦の記憶を呼び起こすかのように、心の奥底にざわめきを残す。
「これではまさに、あの予言の書に刻まれた通りじゃないか」
隣に立つエリックは、焦燥と哀愁が交錯した眼差しで窓の外に浮かぶ雲の行方を見つめながら、口に出す。
彼の声は、荒れ狂う風の音や、かすかに聞こえる遠雷の響きと重なり、耳に鮮明な不安の調べとして残った。
「お前、好きだなその古い言い伝えが。まだ信じてるのか、そんな迷信じみた話を…」
— μετά—
ふわっと現れ、ふわっと投稿。良きかな良きかな…




