地下都市1
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振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
鋭い目つきで僕らを睨みつけるその姿は、ただの村人とは思えない。
白銀の髪は光を反射してきらめき、その整った顔立ちは、見る者を畏怖させるほどの美しさを持っていた。
だが、それ以上に目を引いたのは、その鍛え抜かれた身体と、腰に帯びた武器。
鍛錬を積み、戦いに身を置いてきた者特有の空気を纏っている。
一瞬たりとも隙を見せない彼女の佇まいが、少年らに向けられた警戒の強さを物語っていた。
少年は恐る恐る口を開く。
「助けてもらった病院の院長さんに、ここに行けと言われたんです。それで……」
彼女は鋭い眼光を緩めることなく、しばし観察するように見つめた。そして、低く呟く。
「ふむ……君らか。話は聞いている。確か、記憶を失っているとかなんとか…」
「はい……」
少年らのことはすでに知られているようだった。
だが、ここに来るまでにそれなりの時間がかかったはずなのに、どうしてこんなにも早く情報が伝わっているのか。その疑問が頭をかすめる。
だが、今はそれよりも、彼女が警戒を解いたことに安堵するべきなのかもしれない。
声色がとても柔らかいものに変わった。
「それならば、とりあえず案内する。ついて来て」
そう言い残し、彼女は踵を返した。
少年らは黙ってその背に従った。
案内されるのは、空に浮かぶ浮島——ではなく、地の底へと続く巨大な穴だった。
それは、山頂から見たときに目にした、あの底知れぬ穴。
真下へと円を描くように開かれたその巨大な空洞は、まるで地の底へ続く奈落の門のようだった。
穴の内壁には無数の建物が張り付き、縦に積み重なった街のように見える。
それぞれの家々の窓には光が灯り、薄暗い場所にもかかわらず、まるで昼のように賑わっている。
遠くから聞こえるざわめきが、ここに暮らす者たちの存在を確かに感じさせた。
中央までかかっている古びた橋を渡ると、螺旋を描くような巨大な階段が設けられていて、少年らはその螺旋階段をひたすら降りていった。
それは明らかに自然にできた穴ではなく、何かしらの方法で掘られたような穴であった。
壁には幾年もの時を重ねてできたようなさまざまな傷や、面影を感じる質感であった。
どこまで降りても終わりが見えないような錯覚に陥りながら、やがて最深部へと辿り着く。
目の前に広がるのは、周囲の建物よりも明らかに堅牢な造りをした建物だった。
その入口には警備の者らしき人物が立ち、内側から放たれる空気には、どこか特別な重みが感じられる。
少年と少女は無言のまま、その扉の向こうへと足を踏み入れた——。
— μετά—
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