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地下都市1

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

 振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。


 鋭い目つきで僕らを睨みつけるその姿は、ただの村人とは思えない。

 白銀の髪は光を反射してきらめき、その整った顔立ちは、見る者を畏怖させるほどの美しさを持っていた。


 だが、それ以上に目を引いたのは、その鍛え抜かれた身体と、腰に帯びた武器。


 鍛錬を積み、戦いに身を置いてきた者特有の空気を纏っている。

 一瞬たりとも隙を見せない彼女の佇まいが、少年らに向けられた警戒の強さを物語っていた。


 少年は恐る恐る口を開く。


「助けてもらった病院の院長さんに、ここに行けと言われたんです。それで……」


 彼女は鋭い眼光を緩めることなく、しばし観察するように見つめた。そして、低く呟く。


「ふむ……君らか。話は聞いている。確か、記憶を失っているとかなんとか…」


「はい……」


 少年らのことはすでに知られているようだった。


 だが、ここに来るまでにそれなりの時間がかかったはずなのに、どうしてこんなにも早く情報が伝わっているのか。その疑問が頭をかすめる。

 だが、今はそれよりも、彼女が警戒を解いたことに安堵するべきなのかもしれない。

 声色がとても柔らかいものに変わった。


「それならば、とりあえず案内する。ついて来て」


 そう言い残し、彼女は踵を返した。


 少年らは黙ってその背に従った。


 案内されるのは、空に浮かぶ浮島——ではなく、地の底へと続く巨大な穴だった。


 それは、山頂から見たときに目にした、あの底知れぬ穴。


 真下へと円を描くように開かれたその巨大な空洞は、まるで地の底へ続く奈落の門のようだった。

 穴の内壁には無数の建物が張り付き、縦に積み重なった街のように見える。


 それぞれの家々の窓には光が灯り、薄暗い場所にもかかわらず、まるで昼のように賑わっている。

 遠くから聞こえるざわめきが、ここに暮らす者たちの存在を確かに感じさせた。


 中央までかかっている古びた橋を渡ると、螺旋を描くような巨大な階段が設けられていて、少年らはその螺旋階段をひたすら降りていった。


 それは明らかに自然にできた穴ではなく、何かしらの方法で掘られたような穴であった。

 壁には幾年もの時を重ねてできたようなさまざまな傷や、面影を感じる質感であった。


 どこまで降りても終わりが見えないような錯覚に陥りながら、やがて最深部へと辿り着く。


 目の前に広がるのは、周囲の建物よりも明らかに堅牢な造りをした建物だった。

 その入口には警備の者らしき人物が立ち、内側から放たれる空気には、どこか特別な重みが感じられる。


 少年と少女は無言のまま、その扉の向こうへと足を踏み入れた——。





  — μετά—

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