地下都市54
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振り返ると、そこにはひときわ目立つ存在があった。
真っ白に輝く大きな門が、まるで今にも崩れ落ちそうな状態のボロボロの門が、孤高の存在感を放っていた。
その門は、冷たい光を反射し、周囲の薄明かりを取り込みながら、まるで遠い約束や未来への希望を秘めたかのように静かに佇んでいた。
二人は、その門の前で立ち尽くし、互いの顔を見つめ合いながら、これから始まる未知なる運命の一端を感じ取っていた。
暗闇と静寂の中に、ただただ希望と不安、そして再会の温もりが重なり合い、時の流れが一瞬だけ静止したかのような、奇妙で美しい瞬間がそこにあった。
「わからないなぁ…」
意識を取り戻すと同時に、混乱と無数の疑問が頭の中を駆け巡る。
まるで視界が朦朧とする中、心の中で小さな火花が散り、かすかな明かりが灯るような感覚だった。
そもそも、ここは一体どこなのか? これから自分はどうすればいいのか? 士官学校の入学、そしてこれからの生活……フレイのあの重い言葉の意味は一体何だったのか?
解決の見通しのない疑問が次々と湧き上がり、思考はまるで雪崩のように激しく崩れ落ち、混乱はさらにその上に重ねられていった。
「さて…これからどうする? 地下都市に戻るのもありな気がするが、フレイのことが心配だし……」
少年は、どこか不安げな表情を浮かべながら、口を開く。
その顔には、胸の内に潜む恐れと期待、そして戸惑いが交錯し、薄暗い世界の中でも一筋の弱い光のように浮かび上がっていた。
——何か嫌な予感がする。アースの流れが不安定だ。全てが歪んでいるように感じる。
そんな暗い表情をしている少年の姿を見ながら、ツィアはそっと気遣うように口を開いた。
「でも……士官学校に……向かうべきじゃないですか?」
「確かに、そうだな。そういえば、入学の日があと数日に迫っているとか、フレイが言っていたしな」
二人はしばらく言葉も途絶え、耳に届くかすかな風の音と、遠くでこだまする水滴の音だけが、虚空を満たしていた。
悩み尽くした末、地下都市の記憶やフレイへの想いを一旦脇に置き、彼らは前へ進むことを決意する。
外に出ると、天空には太陽が燦々と輝き、まるで新たな希望を告げるかのように雲一つない青空が広がっていた。
昼下がりの光は、静かに降り積もった雪を眩しく照らし出し、その表面に反射する無数の輝く粒子は、まるで星屑のように見えた。
だが、その光景と対照的に、周囲を吹き抜ける風は妙に穏やかで、普段なら肌を刺すような冷気は、どこか優しく包み込むような感覚を与えた。
雪が降り積もっているはずなのに、体は冷えず、むしろ温かな陽光のぬくもりに守られているかのようで、奇妙な気候に心が揺れ動く。
足元で雪がキュッと踏まれる音、そして雪の中に漂うほんのりとした木々や湿った土の香りが、彼らの歩みを一層確かなものに感じさせた。
その瞬間、少年は自分の内面に渦巻く疑念と不安、そして決して消えることのない未来への期待を、ひとしずくの涙とともに感じた。
過去と未来、混沌と希望の狭間で揺れ動くその心は、今まさに新たな旅立ちを迎えようとしているかのようだった。
「どんな困難が待ち受けていようとも、僕たちは前に進むしかないんだ……」
少年は、言葉に出さずとも心の奥底で固く決意し、ツィアと共に、未知なる世界への一歩を踏み出す覚悟を固めた。
そして、彼らの後ろには、かすかな足音とともに、過ぎ去りし地下都市の影が遠くに溶け込むように消えていくのが、まるで一編の詩のように静かに映っていた。
混乱の中にあっても、彼らはその目に映る全ての色彩と音、そして感じられるすべての感触に、未来への希望と決意を込めながら、ゆっくりと歩みを進めていった。
— μετά—
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