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地下都市40

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

 しかし、彼の視線の先に映っていたのは、汗と埃にまみれ、荒い息をつきながらも必死に戦うフレイの姿であった。

 普段は厳格で、冷静そのもののフレイが、今はまるで風雨に打たれた枯れ木のように、極限の状況に晒され、額から滴る汗が、彼の内面の激しい戦いを物語っていた。


「それより……ジジィこそ、大丈夫か? 咳がひどいが」


 少年の問いかけは、どこか心配と軽い皮肉が入り混じったもので、言葉の裏に隠された温かい思いが滲み出ていた。

 フレイは、一瞬だけ目を細め、深い思索の色を浮かべながらも、すぐに厳しい表情を取り戻し、静かに答えた。


「お主が心配するほどのことではない」


 その声は、普段の凛々しさを保ちながらも、微かにかすれ、今まさに戦いの余韻が残るかのようだった。しかし、彼は決して自らの弱さを露呈することなく、少年に向き直った。

 そして、厳かに問いかけるように、次の言葉を発した。


「それで、お主は……何を見た?」


 少年はしばし沈黙を守った後、先ほど体験した奇妙な出来事を、脳裏の万華鏡のように鮮明に思い出す。

 黒く塗りつぶされた世界、まるで幻のように浮かび上がる顔のない白い影、そして耳元で重々しく響いた少女の声。

 理解しがたいその言葉たちが、まるで遠い昔の記憶の断片のように、彼の心を支配していた。

 ゆっくりと、しかし力強く息を整えながら、少年は慎重に言葉を紡いだ。


「……わからない。見たことのない街のような景色が、次々と眼前に広がっていた。

 煌めく街灯の下、人々のざわめく声が、まるで遠い夢の中のように聞こえた。

 そして、一番印象に残ったのは……顔のない少女の姿をした、あの白い影だった」


 フレイはその言葉に、重々しい頷きを返した。


「そうか。それは……実に興味深いな」


 その一言には、彼自身が深い謎に直面しているかのような、内面的な闇と覚悟が滲んでいた。

 だが、彼はこれ以上多くを語ることなく、ただ静かに、しかし意味深に続けた。


「だが、それが決して悪い兆しではない。

 お主は確実に成長し、己の心を研ぎ澄ますことで、この世のあらゆる流れを感じ取る力を徐々に取り戻しつつある。

 今の体験も、その一歩に過ぎぬのだ」


 少年は、フレイの言葉の重みを噛み締めながら、ゆっくりと頷いた。

 心の奥で、未知なる世界への扉が静かに開かれ始めるのを感じながら、彼は一つの名前を口にした。


「……そういえば、ツィアはどうしているんですか?」





— μετά—

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