地下都市37
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少年は静かに、しかし確固たる決意を胸に、足を一歩ずつ進め始める。
漆黒の闇の中、足元に広がる感覚のない虚無と、冷ややかな空気の流れを五感で捉えながら、彼は慎重に前進した。
たった30歩ほど歩んだ時、はじめてその正体がわずかに浮かび上がってくるのを感じた。
それは、かつて目にしたことのない不思議な存在——人の形を模した、白い影であった。
「一体、あれは……?」
少年は静かに、しかし確固たる決意を胸に、足を一歩ずつ進め始める。
漆黒の闇の中、足元に広がる感覚のない虚無と、冷ややかな空気の流れを五感で捉えながら、彼は慎重に前進した。
たった30歩ほど歩んだ時、はじめてその正体がわずかに浮かび上がってくるのを感じた。
それは、かつて目にしたことのない不思議な存在——人の形を模した、白い影であった。
だが、そこには一つだけ異様な点があった。
人影と呼ぶには、顔すらも存在しない。
輪郭だけが淡い白さで浮かび上がり、まるで流れるような影絵のように、こちらに向かって静かに手を振っていた。
その仕草は、親しみさえ感じさせるが、同時にどこか得体の知れない不安を呼び覚ます。
まるで、長い時を経て再会する約束を果たすかのような、冷たくも温かな矛盾した感情が、少年の胸中をかすめた。
その瞬間、突如として耳元に、はっきりとした声が響く。
「おかえり。待ってたよ。こっちにおいで」
声の主は少女であった。
その声は、柔らかな旋律のように耳に届く一方で、背筋を凍らせるような冷たさと、虚無感を孕んでいた。
少年は思わず顔を上げ、白い影が伸ばす細い手の動きを追った。
彼は、自然と自分の手をその方向へと差し出すが、指先は何か透明なものに触れるかのように、すり抜けてしまった。
実体のない幻影——それは、どこか儚く、しかし確実に存在しているかのような、不思議な感触を伴っていた。
戸惑いと好奇心が入り混じる中、少年は問いかける。
「君は……誰なんだ? 誰を待っているんだ?」
その問いに対し、白い影は一瞬動きを止め、空気を震わせるかのような静寂の後、再び囁くように声を返す。
「あなたの……帰りを……待って……いる」
その言葉が空間に溶け込むと同時に、白い影は予期せぬ方向へと急速に走り出した。
彼女——いや、影の動きは、まるで何か神秘的な力に導かれているかのようであり、少年はその後を追った。
だが、影が進む先には、またもや奇妙な現象が待っていた。
— μετά—
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