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地下都市37

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

 少年は静かに、しかし確固たる決意を胸に、足を一歩ずつ進め始める。

 漆黒の闇の中、足元に広がる感覚のない虚無と、冷ややかな空気の流れを五感で捉えながら、彼は慎重に前進した。

 たった30歩ほど歩んだ時、はじめてその正体がわずかに浮かび上がってくるのを感じた。

 それは、かつて目にしたことのない不思議な存在——人の形を模した、白い影であった。


「一体、あれは……?」


 少年は静かに、しかし確固たる決意を胸に、足を一歩ずつ進め始める。

 漆黒の闇の中、足元に広がる感覚のない虚無と、冷ややかな空気の流れを五感で捉えながら、彼は慎重に前進した。

 たった30歩ほど歩んだ時、はじめてその正体がわずかに浮かび上がってくるのを感じた。

 それは、かつて目にしたことのない不思議な存在——人の形を模した、白い影であった。


 だが、そこには一つだけ異様な点があった。

 人影と呼ぶには、顔すらも存在しない。

 輪郭だけが淡い白さで浮かび上がり、まるで流れるような影絵のように、こちらに向かって静かに手を振っていた。

 その仕草は、親しみさえ感じさせるが、同時にどこか得体の知れない不安を呼び覚ます。

 まるで、長い時を経て再会する約束を果たすかのような、冷たくも温かな矛盾した感情が、少年の胸中をかすめた。


 その瞬間、突如として耳元に、はっきりとした声が響く。


「おかえり。待ってたよ。こっちにおいで」


 声の主は少女であった。

 その声は、柔らかな旋律のように耳に届く一方で、背筋を凍らせるような冷たさと、虚無感を孕んでいた。

 少年は思わず顔を上げ、白い影が伸ばす細い手の動きを追った。

 彼は、自然と自分の手をその方向へと差し出すが、指先は何か透明なものに触れるかのように、すり抜けてしまった。

 実体のない幻影——それは、どこか儚く、しかし確実に存在しているかのような、不思議な感触を伴っていた。


 戸惑いと好奇心が入り混じる中、少年は問いかける。


「君は……誰なんだ? 誰を待っているんだ?」


 その問いに対し、白い影は一瞬動きを止め、空気を震わせるかのような静寂の後、再び囁くように声を返す。


「あなたの……帰りを……待って……いる」


その言葉が空間に溶け込むと同時に、白い影は予期せぬ方向へと急速に走り出した。

 彼女——いや、影の動きは、まるで何か神秘的な力に導かれているかのようであり、少年はその後を追った。

 だが、影が進む先には、またもや奇妙な現象が待っていた。





— μετά—

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