表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/93

地下都市34

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

「……何か光が見える。美しい光…閃光がこっちに向かってくる……」


 彼の瞼の裏側に広がるビジョンは、深い瑠璃色の輝きと、燃え上がる紅玉色の閃光が錯綜する幻想的な光景であった。

 それらの光は、まるで生きたもののように躍動し、疾走するかのように横切り、やがて無数の軌跡が交差し、絡み合いながら一本の細い糸へと収束していく。

 まるで、遥か遠い記憶の断片が一つの物語として再編されるかのような、不思議な連鎖反応が起こっていた。


「……聞こえる。何かが聞こえる……」


 その瞬間、少年の耳には、重層的な声が波のように次々と押し寄せてきた。

 声の内容は、はっきりとは捉えられないものの、どこか悲しみに満ち、絶望的な響きを帯びていた。

 それは、遥か彼方の苦悶する魂たちが、互いに絡み合いながらひそかに訴えかけるような、複雑で重苦しい響きであった。

 まるで、長い年月をかけて蓄積された哀しみと孤独が、無数の囁きとなって降り注いでくるかのようだった。


 このとき、少年の全身は、かすかな震えとともに、内なる力に満たされ始めた。

 感覚は鋭敏に研ぎ澄まされ、肌を撫でる空気の流れすらも、かすかな温かみと冷たさを同時に感じさせた。

 彼は、自らの心がこの未知なるアースの力と交わり、内側から新たな世界を垣間見るかのような感覚に、恐怖とともにある種の畏敬の念を抱いた。


 部屋の静寂を破るかのように、遠い場所からの微かな呼び声と、煌めく光の連鎖が、彼の内面で次第に大きな波紋を広げていく。

 そこには、救いを求める叫びと、絶望の中で彷徨う魂の叫びが混在し、少年はその全てに包み込まれるような錯覚に陥った。

 フレイの冷静な助言と、内面から湧き上がる感情の激流との間で、少年の心は今まさに揺れ動いていた。


 そして、もう一度、内側から湧き上がる声に耳を澄ませた。

 遠くから届くその複雑な響きは、まるで時間と空間を越えて、無数の存在が伝えようとする救いのメッセージのようであった。

 心の奥深くに刻まれたその叫びは、彼自身の存在意義すら問い直すかのように、重く、そして切実に響いていた。


 この瞬間、少年は自分自身と向き合いながら、未知の力の波に身を委ねる決意を新たにした。

 彼の内面は、恐怖と期待、絶望と希望が入り混じる複雑な感情に満ち、やがてそのすべてが、一つの大いなる物語へと繋がっていく予感を秘めていた。

 全てが変わり始める、まさにその一瞬を、少年は静かに、しかし確固たる決意とともに迎え入れようとしていた。


 声が、幾重にも折り重なりながら波のように押し寄せる。


 それは、ひとつの声ではなかった。

 無数の魂が、寄り添い、絡み合うように響く声。


 ——助けて

 ——見つけて

 ——ここにいる





  — μετά—

アドバイスや感想を是非気軽に書いてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ