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地下都市30

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

 その瞬間、フレイの手から差し出されたのは、どこか不吉な印象を放つ黄緑色の液体だった。

 ガラス容器に収められたその液体は、まるで生き物のようにとろりと粘り気を帯び、微妙な波動を見せながら静かに揺れていた。

 光を受けると、薄暗い色合いが不規則に変化し、その様相はまるで毒々しい生体の分泌物を彷彿とさせる。

 視覚だけでなく、手にしたときに感じる冷たさとわずかな湿り気が、飲み物というよりも何か危険な儀式の道具であることを物語っていた。


 少年は、そんな異様な光景に思わず眉をひそめ、警戒心から一歩引いた。

 体が自然に距離を取り、冷や汗が額ににじむのを感じながら、彼の心は激しく鼓動していた。

 何か取り返しのつかない事態が待っているのではないかという、直感的な恐怖が彼を支配していた。


「…..今度は、一体何だ?」


 震える声と共に、少年はフレイに問いかけた。

 目は疑念と恐れで大きく見開かれ、どうしても信じられない現実を受け入れられずにいた。

 しかし、フレイはまるで当然のような態度で、少しも動揺する様子もなく答える。


「これは、いわば特製の栄養ドリンクのようなものじゃ。

 これを摂取することで、訓練の負担をある程度軽減し、短期間で結果を出せるようになる優れものじゃよ」


 フレイの語り口には、どこか機械的な冷静さと、長年の経験に裏打ちされた確信が感じられた。

 しかし、少年の胸中に渦巻くのは、それとは裏腹な激しい不信感と不安だった。

 普段ならば、温かい日差しの中で心地よい風を感じるかのような安心感が彼を包むはずなのに、今はただ、これから始まる訓練が重くのしかかるような圧迫感に変わっていた。


「……訓練を短縮…ねぇ。

 それってつまり、本来もっと長い年月をかけるべきものを、無理やり圧縮しているってことじゃないのか?」


 少年の瞳は鋭く、フレイに対する疑念と失望を映し出していた。

 その問いには、ただの好奇心だけではなく、無理な近道がもたらす副作用への危惧が込められていた。

 人は、時間をかけてじっくりと経験を積むことで本当の成長を遂げるものだという、古くからの教えが彼の心に深く刻まれているようだった。





  — μετά—

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