地下都市28
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「……その人は、その後どうなったんだ?」
フレイは再び視線を落とし、低く、しみじみとした声で答えた。
「……死んだよ。
いや、正確に申すなら、まだ死んではおらん。
あの男の意思と魂は、今もなお生き続け、終わることのない戦いを終わらせんと、今日も戦い続けておるのじゃ」
その一言が、少年の胸に重く突き刺さる。
彼は思わず息をのみ、体中に走る冷たい感覚と、どこか遠い記憶のような感情に心を奪われた。
沈黙の中、室内に漂う淡い光が、フレイの表情を一層哀愁深く映し出していた。
「それって……英雄みたいなものなのか?」
少年は、まだ幼いながらも真摯な瞳で問いを投げかけた。その声には、無邪気な疑問と、未来への漠然とした期待が混じっていた。
フレイは、ほほ笑むような苦笑いを浮かべ、唇の端を軽く持ち上げた。
「どうとらえるかは、人それぞれじゃ。
ある者からは英雄と称えられ、ある者からは悪魔の如く憎まれる。
人というのは、時と場所、そして状況によって、英雄にも悪魔にもなりうる。
あの男はまさに、その象徴のような存在であったのじゃ」
少年はその言葉にじっと耳を傾けながら、さらに問いを重ねた。
「……ジジィは、その人のことをどう思ってる?」
フレイはしばらくの間、深い沈黙に包まれ、遠い目をして空虚な様相を漂わせた。そして、どこか懐かしみと共に、しかしわずかに寂しさを滲ませた声で語り始めた。
「……わしか?
あの男は、わしにとってすべてじゃよ。
私が唯一認めた弟子であり、わしにとっては弟や息子のような存在にほかならぬのじゃ」
その言葉が放たれた瞬間、室内の空気が一層重く、そして温かい感情で満たされるような錯覚に陥った。
少年は、フレイの言葉を噛み締めるようにしばらく黙り込んだ後、ぽつりと呟いた。
「……じゃあ、その人は、きっと幸せだったんだな。少なくとも、一番近くにいた人からは、こうして求められているんだから」
その瞬間、フレイの瞳が一瞬驚いたかのように大きく見開かれると、すぐに柔らかい微笑みを浮かべ、遠くを見つめるような眼差しに変わった。
「……そうじゃな。わしも、そうであって欲しいと心から願っているよ」
— μετά—
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