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地下都市28

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

「……その人は、その後どうなったんだ?」


 フレイは再び視線を落とし、低く、しみじみとした声で答えた。


「……死んだよ。

 いや、正確に申すなら、まだ死んではおらん。

 あの男の意思と魂は、今もなお生き続け、終わることのない戦いを終わらせんと、今日も戦い続けておるのじゃ」


 その一言が、少年の胸に重く突き刺さる。

 彼は思わず息をのみ、体中に走る冷たい感覚と、どこか遠い記憶のような感情に心を奪われた。

 沈黙の中、室内に漂う淡い光が、フレイの表情を一層哀愁深く映し出していた。


「それって……英雄みたいなものなのか?」


 少年は、まだ幼いながらも真摯な瞳で問いを投げかけた。その声には、無邪気な疑問と、未来への漠然とした期待が混じっていた。


 フレイは、ほほ笑むような苦笑いを浮かべ、唇の端を軽く持ち上げた。


「どうとらえるかは、人それぞれじゃ。

 ある者からは英雄と称えられ、ある者からは悪魔の如く憎まれる。

 人というのは、時と場所、そして状況によって、英雄にも悪魔にもなりうる。

 あの男はまさに、その象徴のような存在であったのじゃ」


 少年はその言葉にじっと耳を傾けながら、さらに問いを重ねた。


「……ジジィは、その人のことをどう思ってる?」


 フレイはしばらくの間、深い沈黙に包まれ、遠い目をして空虚な様相を漂わせた。そして、どこか懐かしみと共に、しかしわずかに寂しさを滲ませた声で語り始めた。


「……わしか?

 あの男は、わしにとってすべてじゃよ。

 私が唯一認めた弟子であり、わしにとっては弟や息子のような存在にほかならぬのじゃ」


 その言葉が放たれた瞬間、室内の空気が一層重く、そして温かい感情で満たされるような錯覚に陥った。

 少年は、フレイの言葉を噛み締めるようにしばらく黙り込んだ後、ぽつりと呟いた。


「……じゃあ、その人は、きっと幸せだったんだな。少なくとも、一番近くにいた人からは、こうして求められているんだから」


 その瞬間、フレイの瞳が一瞬驚いたかのように大きく見開かれると、すぐに柔らかい微笑みを浮かべ、遠くを見つめるような眼差しに変わった。


「……そうじゃな。わしも、そうであって欲しいと心から願っているよ」





  — μετά—

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