地下都市26
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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「おい。一旦終わりにするぞ。
これ以上続けたところで、お主の集中力はすでに散漫になっておる。
投げやりな状態で訓練を続けても、何も得るものはない。まずは食事をとるぞ」
そう言うと、フレイは、穏やかな口調と同時に厳しさを湛えながら、少年に一つの物体を手渡した。
それは、手のひらにすっぽりと収まるほどの小さな直方体で、銀色の簡素な袋に五つほど詰め込まれていた。
袋の表面は無機質な光沢を放ち、まるで工場で大量生産されたような冷たさを感じさせた。
見た目は、温もりのある家庭料理や手作りの食事とは程遠く、ただただ必要最低限の栄養補給を目的とした、無味乾燥な物質そのものであった。
袋からは、金属的な質感と冷たさが伝わってきて、誰が見ても“食事”と呼ぶには到底不相応な印象を与えていた。
少年は、そんな異様な光景に目を見開き、眉をひそめながら声を震わせて問いかけた。
「これは……何?」
その問いに対し、フレイは軽く肩をすくめると、ため息交じりの口調で返答した。
彼の声は、過酷な現実を淡々と伝えるかのように、どこか諦めた響きを持っていた。
「食べ物じゃよ。何か不満か? 贅沢を言うな。一日に必要な栄養さえ摂取できれば、それで十分じゃろう」
フレイの言葉は、鋭い現実主義と冷徹な論理に基づいていた。
少年の顔には、若さ故の情熱や期待とは裏腹に、戸惑いと不満の影が隠せずに浮かんでいた。
少年は、まだ成長の途上にあり、将来有望な戦士の卵としての自負と熱意を胸に抱いているはずなのに、この粗末な配給品に対して、心の中で激しい反発を感じずにはいられなかった。
「若く成長期真っ只中の将来有望な戦士の卵に対して、この仕打ちかよ」
少年の声は、苦々しさと同時に、どこか哀愁すらも滲ませていた。
彼は、手にした袋の冷たさと無機質な外観に、未来への希望や戦いへの情熱が裏切られたような感情を覚え、まるで自分の努力が軽んじられているかのような痛みを感じた。
だが、フレイはそんな少年の反論に耳を貸すことなく、深い息を吐いて、静かに口を開いた。
「気持ちはわからんでもない。
しかし、その不満をわしにぶつけるのではなく、豪華な椅子に座り、のけぞりながら威張り散らしている上の連中に言うのじゃな。
なぜなら、これがこの場所での正式な配給品だからじゃ。
ここにいる多くの者たちが、毎日この冷たい栄養補給物質を口にしながら、かろうじて生き延びているのじゃぞ。
それにな、お主がこの程度で不満を漏らすようでは、いざ戦場に出たとき、真っ先に朽ち果てることになるぞ」
— μετά—
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