地下都市22
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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「じゃが、じゃがうるさいな…」
と、思わず心の声を呟いてしまった。
その瞬間、男が鋭い声で問い詰める。
「なんじゃと?」
焦燥と恐怖に支配されながらも、やっとのことで
「すみません。間違いました」
と、口に出すが、その一言すらも心の奥底の本音を隠し切れないことが露呈した。
「間違いましたでは済まされん。お主の心に秘めた本音は、すべてわしに全て見透かされるのじゃぞ?」
と、男は冷静に告げる。
そして、ふとツィアの方へ視線を向けると、彼女もまた怯えながらも必死に耐えている様子が伺えた。
「ツィアは大丈夫だな…よかった。だが、これは一体…時が止まっているのか?」
と、疑問を口にする少年に対し、男はこう答えた。
「厳密には、時は完全には止まっておらぬ。
進む速度が限りなくゼロに近い状態にあるだけじゃ。
だからこそ、わしらはに動くことも、呼吸すらできるのじゃ」
続けて、男は次なる問いを投げかけるかのように、声を落として語り始めた。
「さて、魔法戦闘において、対抗策は通常『魔法を操る者が魔法で対抗する』か、『魔力を宿す者が魔道具で応戦する』の二択とされている。
しかし、正確はそれだけではない。
今日、ここでお主たちに教えるのは、“アース”と呼ばれる秘術じゃ。簡単に言えば、魔法を操るための魔法。
魔法攻撃に対して最も有効な対抗手段であり、同時に、己の運命を変えるための最強の武器とも言えるのじゃ。
そしてこれこそ、我々が迫害され、苦しみ、そして闘い続ける原因ともなったのじゃが…」
男の顔が一瞬、遠い過去の悲哀に染まる。彼の瞳は、かつて失った多くの同胞や、血に染まった戦場の記憶を映し出す鏡のようであった。
「我々は昔…と言うっても今もそうだが、上の連中らと戦争してたんじゃ。
その中でたくさんの仲間を失い、民間人も巻き込む惨劇が日常となった。
昨日まで隣で笑い合った友が、戦場で一瞬にして消え、捕虜となり、あるいは敵国の兵器にされてしまったなんてことはざらで。
朝、一緒に起きたはずの部下が夜になったら上半身が爆散し下半身だけとなった状態の死体で還ってきたり、朝、朝食を共にしたはずの妹の生首が、滅びゆく町の噴水の上に置かれ、真っ赤な血の噴水と化していたなんてこともあった。
あの頃は、独立やら革命やらの熱気に皆燃えていたが、今や我々は奴隷のように扱われ、心も体も抉られてしまっているのじゃ」
男は言葉の隙間から涙をこぼし、その涙は、夕暮れの空に溶け込む赤い陽炎のように、かすかな光を放っていた。
— μετά—
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