地下都市21
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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フレイが静かに指を鳴らした。
———世界が、止まる。
まるで、大地を覆い尽くす吹雪が、一瞬にして凍結したかのように。
無数の閃光が空中で静止し、まるで時間が巻き戻ったかのように、世界が沈黙に包まれる。
先ほどまで狂乱するかのように暴れ狂っていた魔法の奔流が、一瞬にして固定される。
まるで、一枚の絵画。
白く輝く粒子が、空間に漂い、そこに時が閉じ込められたかのように凍結していた。
音すらも消えた。
この世界にあるのは、ただの静寂。
空気の流れすら感じない、虚無の世界。
だが、その静寂の中で、ただ一人。
フレイだけが悠然とそこに立ち、少年を見つめていた。
その眼差しは、まるで神の視線のようだった。
すべてを見通し、すべてを掌握し、すべてを支配する者の瞳。
この世界が、彼の手のひらの上にあるのだと、少年は本能的に理解した。
それは、絶対的な魔力の支配者だけが持つ、冷徹な光のようだった。
心臓が凍りつくほどの緊張と、死を覚悟するかのような絶望感が全身を支配し、少年は身動きが取れずただその光景に固まっていた。
そのとき、男はゆっくりとこちらへと近づいてきた。
「わしも歳を重ねた者だな。こんなものでここまで疲労するとは…」
彼の声は、まるで風化した岩に刻まれた古文書の一節のように、静かでありながら重みがあり、なおかつ哀愁に満ちていた。
何が起こっているのか、理解が追いつかず、思考は霧散していくようだった。
「何か、今にも死を覚悟した顔をしておるな」
と、男は少年の顔を見ながら、冷静かつ嘲笑混じりに呟いた。
まるで、遠い昔の記憶が甦るかのように、少年の心は過去の傷と後悔に引き裂かれる思いでいっぱいになった。
だが、どうにか自らの意識を取り戻し、深呼吸しようと必死に呼吸に意識を集中させた。
ところが、まるで慣れぬ技に手探りするように、呼吸すらもどうすればよいのか分からず、空気すら喉を通らない感覚に襲われた。
「バカな顔じゃな。バカな顔じゃが、わしの好きな顔じゃ。
人の心など、わしにはそのすべてが透けて見えるのじゃ。
お主が何を思っておったか、隠しきれぬ心の叫びさえも」
と、男は優位に笑みを浮かべる。
「逃げずに妹を庇って守ろうとしたことだけは、立派なことじゃな」
呼吸や声の出すこともままならず焦りが募る中、心の中で、ツィアの無事を案じながらも、少年は必死に自分の言葉を絞り出す。
「じゃが、じゃがうるさいな…」
— μετά—
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