地下都市20
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「ウェイスティン」
ただ一言、そう呟かれた。
———地獄の門が開いた。
魔法陣の中心から、幾千もの光の矢が四方八方へと解き放たれる。
だが、それはただの光ではなかった。
それはまるで、天を突く嵐の雷撃が無数に分裂し、地上へと降り注ぐかのようだった。
空間を焼き尽くし、飛翔する軌跡には、周囲の大気すら熱せられ、歪むほどの熱を刻み込む。
その閃光の群れは、猛る獣のごとく荒れ狂い、男の方へと向かって突き進む。
最終的にその魔法陣の形態は一瞬ごとに変化していった。何十、何百にも連なるそれらが一つの分厚い層のような物を形成し、滑らかな変位で棘を伸ばし、直方体と三角錐が複雑に交差し、さまざまな幾何学立体に変化し出す。
回転の軸を自在に変え、まるで空間そのものを捻じ曲げ、抽象的な概念すら視覚化したかのような姿だ。
そしてその中心から、膨大なエネルギーが収束していく。
空間が唸り、光が集束し、幾何学的コアが透き通るほどに輝きを増す。
重なる多面体の層が音もなく開き、まるで瞳孔が開くように中心へと吸い寄せられていく。
その瞳のような中心から、瞬時にして世界を貫く無限の閃光の槍が男めがけて収束する。
その場にいるだけで、肌が灼けるような感覚が襲いかかる。
ただの魔法ではない。まるでこの空間そのものが焼かれ、熔解し、別の次元へと引きずり込まれていくかのような錯覚を覚える。
風圧が皮膚を引き裂くように吹き荒れ、全身の毛が逆立つ。呼吸すらままならないほどの魔力の奔流が、周囲を埋め尽くしていた。
床は悲鳴を上げるように震え、壁は軋み、天井ですらその圧倒的な力に耐えかねて崩れ落ちそうだった。
少年は、瞬時に悟った。
「これは……やばい」
何もかもが圧倒的だった。
この場にいることすら許されないほどの、絶望的な力。
———避けられない。
何をしても間に合わない。
逃げ場もない。ただ、この圧倒的な奔流に飲み込まれるのを待つばかり。
———自分の無力さが、冷徹に突きつけられる。
少年は、ほぼ反射的にツィアを抱え込んだ。
そして、できる限りの力を振り絞り、後方へと飛び退る。
しかし、無駄だった。
———間に合わない。
目の前には、すでに無数の閃光が迫り来ている。
圧倒的な力の奔流。
まるで、天の門が開き、そこから降り注ぐ神罰のように。
逃げる術はない。生き残る可能性は、限りなくゼロに近かった。
だが、それでも。
——ツィアだけでも守らなきゃ!
少年は自らの身体を盾にし、妹を背後へとかばった。
次の瞬間——
フレイが静かに指を鳴らした。
——世界が、止まる
— μετά—
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