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地下都市20

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

「ウェイスティン」 


 ただ一言、そう呟かれた。


 ———地獄の門が開いた。


 魔法陣の中心から、幾千もの光の矢が四方八方へと解き放たれる。


 だが、それはただの光ではなかった。


 それはまるで、天を突く嵐の雷撃が無数に分裂し、地上へと降り注ぐかのようだった。

 空間を焼き尽くし、飛翔する軌跡には、周囲の大気すら熱せられ、歪むほどの熱を刻み込む。

 その閃光の群れは、猛る獣のごとく荒れ狂い、男の方へと向かって突き進む。


 最終的にその魔法陣の形態は一瞬ごとに変化していった。何十、何百にも連なるそれらが一つの分厚い層のような物を形成し、滑らかな変位で棘を伸ばし、直方体と三角錐が複雑に交差し、さまざまな幾何学立体に変化し出す。

 回転の軸を自在に変え、まるで空間そのものを捻じ曲げ、抽象的な概念すら視覚化したかのような姿だ。


 そしてその中心から、膨大なエネルギーが収束していく。


 空間が唸り、光が集束し、幾何学的コアが透き通るほどに輝きを増す。

 重なる多面体の層が音もなく開き、まるで瞳孔が開くように中心へと吸い寄せられていく。

 その瞳のような中心から、瞬時にして世界を貫く無限の閃光の槍が男めがけて収束する。


 その場にいるだけで、肌が灼けるような感覚が襲いかかる。


 ただの魔法ではない。まるでこの空間そのものが焼かれ、熔解し、別の次元へと引きずり込まれていくかのような錯覚を覚える。


 風圧が皮膚を引き裂くように吹き荒れ、全身の毛が逆立つ。呼吸すらままならないほどの魔力の奔流が、周囲を埋め尽くしていた。


 床は悲鳴を上げるように震え、壁は軋み、天井ですらその圧倒的な力に耐えかねて崩れ落ちそうだった。


 少年は、瞬時に悟った。


「これは……やばい」


 何もかもが圧倒的だった。


 この場にいることすら許されないほどの、絶望的な力。


 ———避けられない。


 何をしても間に合わない。

 逃げ場もない。ただ、この圧倒的な奔流に飲み込まれるのを待つばかり。


 ———自分の無力さが、冷徹に突きつけられる。


 少年は、ほぼ反射的にツィアを抱え込んだ。

 そして、できる限りの力を振り絞り、後方へと飛び退る。


 しかし、無駄だった。


 ———間に合わない。


 目の前には、すでに無数の閃光が迫り来ている。


 圧倒的な力の奔流。

 まるで、天の門が開き、そこから降り注ぐ神罰のように。

 逃げる術はない。生き残る可能性は、限りなくゼロに近かった。


 だが、それでも。


 ——ツィアだけでも守らなきゃ!


 少年は自らの身体を盾にし、妹を背後へとかばった。


 次の瞬間——


 フレイが静かに指を鳴らした。


 ——世界が、止まる





  — μετά—

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