地下都市19
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しかし、その渦はただの風ではなかった。
目に見えぬはずの魔力が形を成し、紫色の稲妻がそれに沿って駆け巡る。
稲妻の一閃ごとに、空気がビリビリと震え、電撃が弾ける音が響く。
フレイの腕には異様なほど血管が浮き上がり、血潮が荒ぶる河のように激しく流れている。
同時に手首の周りに真っ赤な魔法陣のような輪が出現した。
それはさまざまな幾何学立体や小さな多面体らに変化をしながら手首の周りを高速で回り始めた。
その手は微かに震え、彼の身体全体が、膨大な力を受け止める負荷に耐えていることが明らかだった。
紫の輝きは、やがて青へと変わる。
それはまるで氷の刃のように鋭く、見る者の肌を切り裂くような冷たさを帯びていた。
そして、青の光は深緑へと変化する。
まるで古き森が持つ生命のエネルギーが凝縮されたかのような、神秘的な輝きが空間に満ちる。
しかし、それも束の間、緑の光は燃え盛る炎のように真紅へと変わった。
灼熱の熱気が空間を包み込む。
皮膚が焼けるかのような錯覚に襲われるほどの熱量が渦を巻き、さらに色が移り変わる。やがて最後に、黒——光すら飲み込む漆黒がすべてを覆い尽くした。
その黒は、ただの闇ではない。
底なしの奈落。踏み込んだら二度と戻れない、無の深淵そのものだった。
フレイの額から汗が滴り落ちる。魔力の負荷に耐えようとしているのか、彼の肩が微かに震える。そして、彼はゆっくりと目を開いた。
その瞳には、まるで夜空を切り裂く流星のような、神秘的な紫色の輝きが宿っていた。
そして、その瞬間——世界が変わった。
頭上に、天井を貫かんばかりの巨大な魔法陣が出現する。その圧倒的なスケールは、この空間の重力すら歪めるほどだった。
魔法陣は単なる円ではなく、何層にも重なり合いながら、規則的な螺旋を描いて広がっていく。
それぞれの層が異なる輝きを放ち、紫、青、緑、赤、黒と無数の光のコントラストが混ざり合い、まるで宇宙の誕生を思わせるような荘厳な光景を創り出していた。
魔法陣の中央には、巨大な紋章が刻まれている。
それは古代の文字でありながら、見る者の意識に直接語りかけるような、不思議な力を持っていた。
まるで、この魔法陣そのものが意思を持っているかのように、波打つ光が周囲に広がり、壁を照らし出す。
その輝きは、美しいだけではない。
圧倒的な力が、そこに存在しているのが、肌で感じ取れた。
何か途方もなく強大なものが目覚めようとしている——その瞬間に立ち会っているという実感があった。
フレイが静かに口を開く。
「ウェイステン」
— μετά—
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