地下都市16
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
→ 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/
10階に足を踏み入れると、少年たちが暮らす静かな住処とはまるで別世界のような光景が広がっていた。
階層全体に煌めく灯りは、まるで夜空に瞬く無数の星々のように輝き、人々のざわめきは祭りのような熱狂に包まれていた。
酔いしれた住民たちが笑い声と酔いの香りを漂わせ、幸福感が空気中に溶け込んでいるのは一目でわかる。
無数の店が通りに軒を連ね、そのどれもが独自の魅力と、食欲を刺激するおいしそうな匂いをふわりと漂わせていた。
まるで視覚、嗅覚、聴覚が一体となって奏でる幻想的な交響曲のように。
どの店に入ろうかと迷うのも当然のことだった。
だが、現実は甘くはなかった。
ポケットの中のお金はあと少ししか残ってなく、まるで冬の枯葉のように軽く、さっき出会った老人に「どの店に行くべきか」と訊ねるべきだったと、今さら胸に刺さる後悔が募る。
結局、あれこれと迷い悩んだ末、近くにひっそり佇む、古びた安物の店へと足を向けるしかなかった。
腹ごしらえを済ませ、満たされた空腹感とともに再び帰路に着くと、門の前に辿り着いた。
だが、その瞬間、どうしようもなく先の計画ではなく、目の前の問題にだけ囚われていた自分を恥じ、胸中に悔恨が渦巻いた。
重厚な門は固く閉ざされ、まるで頑なに秘密を抱えた錠前のように、どうすれば開くのか全く見当がつかなかった。
魔法の便利さについては耳にしていたが、その真価は使いこなせて初めて感じられるものであって、扱えなければただの厄介な扉にすぎない。
果たしてどうすればこの扉を突破できるのか。
その神とやらに祈ればいいのか。
そもそも会った事も見た事もないものに対してどのように祈ればいいのかそのやり方すら知らない。
どうしても見当がつかない中、ふとツィアが少年の手をそっと離し、何のためらいもなく扉に手を当てた。
「私。やってみる」
と、ツィアはまるで運命を受け入れるかのような静かな決意を口にし手をかざすと、驚くべきことに扉はゆっくりと軋みながら開かれた。
「どうやってやったのそれ?」
少年は言葉を失い、ただその光景に目を見張るばかりだった。
「わからない。でも、わかった」
と、彼女は微笑む。
まるで魔法という不可思議な力が、彼女の内面から自然と溢れ出したかのように感じられた。
ツィアは実に優秀な妹である。
だが、兄として妹より劣っているということはとても不甲斐ないことである。
果たして、少年にも魔法の才能は宿っているのだろうか———。
— μετά—
アドバイスや感想を是非気軽に書いてください!




