地下都市15
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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「フレイ」と名乗るその老人は、高階層の障壁をひとりで歩んでいた。
外部からの光が飛び込み、壁にうっすらと射されている。
清潔でありながらもどこか暗い陰が広がる模様は、他の心境を映しているかのようだ。
いつものように歩みを止めない老人であったが、一度、誰もいない道の中で小声でボソボソと独り言を唱えながら一瞬立ち止まった。
まるで、何か深刻なことを考えているかのように。
「あの少年の目」
その細い声には、何か深い関心と疑問が混じっていた。
「他は、いや、あいつは確かに。これは本物だ。相変わらず性根は腐っていそうだが。」
身体を止め、ポケットに入っているペンダント取り出し見つめる。
「それに、あのペンダント。そしてこれに呼応するかのようにして鳴り出したヘイムダルの鐘。偶然とは言えまい。ってことは計画が成功したのか…?」
自己の手に渡った浮誇を覚えるペンダント。
「それは本来ならば、器が発芽した後に成されるべきシナリオだったはず。
それにもかかわらず、まだ何も起きてない。
私の知らないシナリオか…予言の書には無いイレギュラーか…何かがおかしい…」
深刻そうな顔をし、虚空を見つめる。
「はぁ。しかたない。実際鐘は鳴ってしまったのだ」
その老人は深いため息をつき、一歩先へ進む。
「保険は可能なだけかけておいても悪くはないだろう…。もし器でなければその時は処理するまでじゃ」
そんな一人語を強い音を立てて告げながら、他は指定の場所へ向かって、材をコツコツと響させて歩んでいった。
— μετά—
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