地下都市14
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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漠然とした疑問が脳裏をよぎる。やがて、空腹を満たすため、階段へと足を向ける。
その途上で、壁に貼られた一枚の地図が目に入った。
そこには、この地下都市の全貌が精緻に描かれていた。
「……60階か」
少年らがいるのは地下60階。
この都市は全65階層で構成されているらしい。
しかも、地図によれば、店舗や市場は10階以上のみに限定されているという。
「マジかよ。この階段を登らなきゃいけないのか……どうする?」
少年らは互いに視線を交わし、逡巡する。
しかし、その思考の渦中、突然、背後から低く落ち着いた声が響いた。
「見ない顔だね。何かお困りかな?」
振り返ると、杖をついた小柄な老人が立っていた。
身長は少年と同程度であったが、その長い耳と深みのある瞳が、人間の範疇から外れた存在であることを示唆していた。
「えっと、昨日来たばかりで、10階に行きたいんですけど……この階段を登るしか方法はないんですか?」
「そんなことせんでも、あそこの門を通れば行けるぞ。教えてもらわなかったのか?」
老人は、通路の先に聳え立つ門を指差した。
その構造は、昨日浮島へ向かう際に目にした門と類似していた。
「いえ、そんな話は聞いていませんでした」
「そうかぁ。それは気の毒だったな。では、わしが案内してあげよう」
「あ、では……よろしくお願いします」
杖が石畳を打つ音が、静寂の中に規則正しく響く。老人は少年らと歩調を合わせながら、ゆっくりと門へと向かう。
そして、門の前に立つと、突然、少年の顔を覗き込んだ。
「君はいい目をしているな。澄んだ瞳だ。わしの好きな目だ……君、お主は何を望む?何を欲す?その先に何を求める?」
その声には奇妙な圧があり、まるで魂の奥底を覗かれているような錯覚を覚えた。ツィアが僅かに震え、少年の手を強く握りしめる。
「あ、あの……何ですか?」
「いや、失礼。先に自己紹介をしておこう。後回しにすると面倒だからな。わしはフレイと言う。覚えておけ」
そう言った瞬間、気づけば門が開いていた。
魔法というものの実用性に、改めて驚愕する。
礼を述べようと振り返ったが、そこにはもう彼の姿はなかった。
その気配は、まるで霧のように掻き消えていた。人の気配を感じることはできても、彼の存在だけは、まるで最初からこの世に存在しなかったかのように──
不可解な恐怖が、脊髄を冷たく駆け抜けた。
──あの男は一体、何者なのか
しかし、今は空腹を満たす方が先だ。少年らは急ぎ足で市場へ向かった。
— μετά—
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