地下都市12
なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。
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夜の浮島本殿は、静寂と不思議な重々しさに包まれていた。
月光がかすかに差し込み、薄暗い廊下は長い影を落としている。
遠くの方から一定のリズムを刻む足音が聞こえてくる。
コツコツ──
ウェインは、慌ただしい足取りでその長い廊下を歩いていた。
「ウェイン。彼はどうだったか。器としての資質は備わっていたか?」
突如、死角から低い男の声が響き渡り、その声は廊下全体に広がっていった。
「あぁ、お前か。彼ら…あぁ、あの少年のことか?彼の力はかなり素晴らしかったよ。
あれは将来有望だと私は思っている。
あとは彼自身の選択次第だが、もしかするとあの少年が器に匹敵するまでに成長するかもしれないな。
まぁ流石にそんなことにはならないかもだが。
少なくとも、私はそう確信しているよ」
「なるほど。それは素晴らしい。実に素晴らしいことだ」
「それはそうと、いったい何のためにここに来たんだ? もしお前がここにいるのがバレれば、すぐに捕まってしまうぞ」
「その時は、ただ逃げればいい。
今のこの国では、俺に敵う者などほとんどいないさ。
それよりも、伝えるべき言伝があるんだ。
ヘイムダルの音が、鳴り出した」
「なんと…⁉︎ ついにか」
「あぁ。だからこそ、器を捜し求めに来たのだ。
こんなにも早く見つかるとは思わなかったが。
混沌の時代が再び幕を開ける。
予言の書の再臨…シンフォニアの復唱…新世界の生成…
復活の時が近い」
「そうか、じゃああの少年が本格的に器なのかもしれないな」
「その線で間違いないは無いと思うぞ。
そして、朗報だ。器の存在に関して、奴らはまだ勘づいてない。
だからどうか、確実に導いてくれ。
全ての未来と希望は、お前に託したからな。頼むぞ」
「あぁ、了解した。
それにしてもまさか我々の世代が、その運命を背負うことになるとは…」
「アースの誘と共に…..」
再び、静寂が廊下を満たす。
男はその足音を刻みながら、遠い闇の中へと歩み去っていった———
— μετά—
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