地下都市11
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男は少年に手を差し出し、握手を交わした。
「それで、ここはだな。
表向きはこの国ニュー・ハリス唯一の地下都市と謳われているが、実際には彼らの手によって厳重に管理され、監視されているいわば強制収容所のような場所だな。
もともと、この地下に暮らす者たちは特殊な力を操り、その力で国に近しいほどの地下文明都市を築いていたんだ。
しかし、歴史の紆余曲折の中で、今の国の前身に当たるグランド・ハリスという国に占領されることとなってしまったんだ。
それからはひどいもんで今では差別の対象とされる身となってしまった。
国を治める連中は、我々の持つ力を恐れているんだ。
そして、彼らは我々に、ここで一生を閉じ込めるか、あるいは兵士として国のために戦うかという、極めて残酷な選択肢を突き付けた。君も先ほど言われただろう?
君たちのような幼い者にとって、その選択はまさに鬼畜な運命と言わざるを得ない。
私はここの出身だ。君たちが歩もうとしてる道と同じ道を歩んだ内の1人でもある。
だからこそ、今この話をし、もし気持ちが変わるのならば、私としてはここでの安定した生活を促したい。
君には才能がある。ここで魔法の研究にでも励むのも悪くはないと私は思う。
選択を誤まり、今まで多くの者たちが命を落としてきた現実がある。
無事に生き抜き、日々を重ねることが、いかに困難なことか君なら容易に理解できるはずだ。
どうだい?それでもなお、君たちは自らの意志でこの茨の道を選び抜く覚悟があるのかね?」
少年は、静かに、しかし毅然とした眼差しで男の目を見つめ、すでに決心していた自分の覚悟を言葉に乗せた。
「はい。僕らは、自分たちの選択に一切の悔いはありません。もう決めたことです」
「そうか…君の——いや、君たちの覚悟はよく理解できた。
では、君たちができる限り充実した人生を歩むことを、私も心から願っておくよ。
それと、訓練のことだが特別な講師が来てくれるはずだから。
私も講師の一人として、君たちの成長を見守らせてもらうよ。
どうかよろしく頼む」
そう言い残すと、男は玄関の扉を静かに閉め、夜の闇へと消えていった。
少年は、食後に押し寄せた眠気に抗えず、結局疲れた体をベッドに委ねた。
— μετά—
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